悠久の輝きを宿す「若狭めのう細工」唯一の継承者が守り継ぐ300年の伝統:宗助工房
2025.07.28
悠久の輝きを宿す「若狭めのう細工」唯一の継承者が守り継ぐ300年の伝統:宗助工房
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若狭めのう細工(わかさめのうざいく)は、福井県小浜市周辺で作られている、めのうの原石を加工した伝統工芸品だ。特徴は“深い赤褐色と半透明の輝き”。鶏や鯉などの縁起彫刻は贈答品として親しまれてきた。
しかし、約300年の技を継ぐ職人はただ一人。「宗助工房」の上西さんだけだ。どのようなきっかけで若狭めのう細工に携わり、今日まで支えてきたのか。上西さんのあゆみや若狭めのう細工の現状について、話を伺った。
PROFILE|プロフィール
上西 宗一郎(うえにし そういちろう)
上西 宗一郎(うえにし そういちろう)

1973年生まれ。
2003年、伝統工芸体験施設でインストラクターの仕事に就いて若狭めのう細工 伝統工芸士の田中染吉氏に師事。
2013年、宗助工房開業。

Uターンを機に“めのう細工”の世界へ

若狭めのう細工は、福井県小浜市の出身者が、大阪のめがね屋で奉公中に培った技術をもとに生まれた。当時のめがねは水晶のレンズを加工して作られており、水晶の加工や砂で研磨をする技術などが持ち帰られたそうだ。

その技術をもとに「めのう」と呼ばれる鉱物を使った玉造りからはじまり、徐々に彫刻品などへと発展を遂げる。1976年(昭和51年)には、国の伝統的工芸品として指定された。

かつては多くの職人が手がけていたが、今では上西さんだけだ。

「職人の高齢化が進み、私が弟子入りした頃にはすでに2名だけという状況でした。技術習得の難しさゆえに、一人前になるまでには長い年月を要します。そのため、後継者の育成は非常に困難でした。

私の師匠のもとにも『弟子になりたい』と訪ねてくる方はいましたが、残念ながら研修中の給与を支払うことができないなどの理由から、断らざるを得なかったようです」

そう話す上西さんだが、もともとは大阪で印刷会社に勤めていたという。若狭めのう細工に携わるようになったのは、Uターンがきっかけだった。

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