南部鉄器の製造現場には、大きく分けて2つの生産方法が存在します。
一 つは、多くの工程を熟練の職人が手作業で行う、国の伝統的工芸品としての鉄瓶づくりです。もう一つは、一部の工程をライン化し、効率的に製品を生み出す「生型(なまがた)技法」と呼ばれる製造方法になります。
この2つの流れが併存している背景には、時代の変化への対応がありました。戦後、調理器具の素材がアルミやステンレスへと移行し、鉄製品の需要が落ち込むなかで、伝統的な鉄瓶だけに固執するのではなく、キッチンウエアや装飾品といった新しい製品開発に取り組む必要があったのです。
伝統を守りつつ、革新を続ける。この姿勢が、現代における南部鉄器の多様な製品ラインナップを支えています。