一針に込めた伝統──江戸刺繍を継いだ姉妹の挑戦:高橋刺繍店
2025.07.07
一針に込めた伝統──江戸刺繍を継いだ姉妹の挑戦:高橋刺繍店
リンクをコピーしました
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
長い時間をかけて、一針ひとはり丁寧に描かれていく模様。飛鳥時代から受け継がれてきた伝統工芸である江戸刺繍に、注目が集まっている。
東京・杉並で、和装を専門に江戸刺繍を手がける高橋刺繍店。姉妹で事業を受け継いだ、3代目の齋藤 優子さんと遠藤 麻美さんは、手仕事の素晴らしさを伝えるため、伝統的な技術を生かした新しい江戸刺繍を生み出し続けている。
PROFILE|プロフィール
左・遠藤 麻美(えんどう まみ) 右・齋藤 優子(さいとう ゆうこ)
左・遠藤 麻美(えんどう まみ) 右・齋藤 優子(さいとう ゆうこ)

遠藤 麻美

1973年生まれ。高橋刺繍店3代目。会社で働きながら、父・高橋善信に師事。2003年より高橋刺繍店に勤務し、母・高橋美千代に師事。第47回全国伝統的工芸品公募展「みんなでおそろい」特選(2022)。

齋藤 優子

1969年生まれ。高橋刺繍店3代目。父・高橋善信に師事。2004年より高橋刺繍店に勤務し、母・高橋美千代に師事。第45回全国伝統的工芸品公募展「My Favorite Fragrances」入選(2020)、第46回日本染織作家展 名古屋帯「面影」入選(2023)。

武士が愛し、庶民が育てた江戸刺繍を受け継ぐ

江戸刺繍の歴史を教えてください。
齋藤 飛鳥時代に仏教伝来とともに仏像の刺繍が入ってきて、着物や帯を刺繍で飾り立てるようになりました。京都刺繍、加賀刺繍、江戸刺繍の三大刺繍があり、武士好みのピリッとした辛口の色合いが江戸刺繍の特徴。絹糸を使い、絹地や麻に刺繍します。

豪華な刺繍は武士や豪族のお姫様に好まれましたが、江戸時代に贅沢禁止令が出て、庶民には友禅の着物に部分的に刺繍を入れるあしらいの技法が流行りました。

遠藤 絵柄は時代によって変化してきましたが、基本の縫い方や使われる糸はほとんど変わらない。何百年もの間、受け継がれてきた伝統の手仕事です。

姉妹2人で、家業を継ぐことになったきっかけは何でしょうか?
齋藤 高橋刺繍店は、1968年創業、父が事業を立ち上げました。母が2代目、私たちが3代目です。父が病気で具合が悪くなったことで、家業を継ごうと、2人で本格的に職人の道に進むこととなりました。

遠藤 普段は、図案やデザインに強い方が構想を練り、もう一方が技術的な細部を仕上げるなど、得意分野を分担しています。外部とのやり取りや、SNSの発信も担当を分けています。明確な線引きではなく、お互いの動きを見ながら柔軟に補い合っている形ですね。
この記事をシェアする
リンクをコピーしました