有限会社 馬場染工場 代表取締役社長
創業は1913年、大正2年です。もともと滋賀の農家から、丁稚奉公として京都に出てきた曾祖父が始めました。当時の京都は着物の染色が中心で、分業の町でした。生地を作る人、型を彫る人、蒸す人、洗う人、整理する人——すべてが専門職として分かれていたんです。
うちはその中でも「型友禅」と呼ばれる分野で、シルクやちりめんの染色を担ってきました。
今も染め・蒸し・水洗い・仕上げをそれぞれ別工房で行う分業制ですが、少量多品種の時代にはむしろ柔軟に対応できる利点があります。
そうですね。一貫生産の大工場ではロットが大きくないと回りませんが、分業なら小回りが利く。今の時代、同じ柄を何千枚も染める仕事は減り、百貨店やブランドの限定品など、数百単位の受注が主流です。むしろ、職人同士が信頼でつながるネットワークこそ、京都の染め文化の基盤だと思っています。