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2023.05.30

ヘンリーネックTシャツのパイオニア的存在「Healthknit(ヘルスニット)」の奥深さ

ヘンリーネックのTシャツといえば「Healthknit(ヘルスニット)」を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。定番アイテムとして、広く愛されているこのTシャツのルーツをたどると、実は120年以上前まで遡る必要がある。そんな歴史あるHealthknitのヘンリーネックTシャツの話を、ヘルスニット・ブランズ株式会社の原田芳輝さんに伺った。

「No fit like」Healthknitほどフィットするものは他に無い

「1900年、アメリカの西部開拓時代が終焉を迎えたころ、テネシー州のノックスヴィルに創業者エドワード・J・マクミランが『スタンダードニッティングミルズ』という会社を設立しました。Healthknitはその自社ブランドとなります。
それから時代が進み1920年ごろ、ノックスヴィルは世界最大の繊維産業地区へと発展。13社の紡績工場が集まり、『Underwear capital of the world(世界の下着の中心地)』と呼ばれるほどだったそうです。その中でもスタンダードニッティングミルズ社は、100万平方フィート(東京ドーム約2個分)という地域最大の敷地を持ち、工場内に紡績から縫製までの一貫した生産設備を有することで3,500人以上を雇用し、年間4,300万着という驚くべき数のTシャツや下着を製造していました。
当時アメリカ最大の繊維製造工場であったともいわれており、『No fit like(Healthknitほどフィットするものは他に無い)』というコンセプトを掲げ、その言葉通りの着心地の良さが評判を呼び、すぐにアメリカを代表するカットソーブランドへと成長したという話が残っています。
『QUALITY(高い品質)』、『STYLES(洗練されたスタイル)』、『COMFORT(快適な着心地)』、誕生から120年以上変わることのないHealthknitの3つのポリシーです。選び抜かれた素材で、快適な、長持ちする製品をつくること。これは使命として現在も私たちに受け継がれています」
1900年ごろのスタンダードニッティングミル�ズ社
1900年ごろのスタンダードニッティングミルズ社
1940年ごろのスタンダードニッティングミルズ社
1940年ごろのスタンダードニッティングミルズ社

ヘンリーネックTシャツ誕生

Tシャツがまだ肌着としての認識が強かった時代にヘンリーネックTシャツは誕生した。東京のオフィスに保管されている貴重なアイテムを見せてもらいながら当時のアイテムを説明してもらおう。
「ヘンリーネックTシャツの誕生は1920年ごろといわれています。スタンダードニッティングミルズ社の数あるラインナップの中でも、ヘンリーネックTシャツは最も人気のあった商品だったそうです。情報が古すぎて確かではないのですがHealthknitは世界で最初にヘンリーネックTシャツを作ったといわれています。
今こちらにあるのは1940年代ぐらいのものなのですが、ナチュラルと水色のミックス生地でコットンに加えて少しウールが入っているような風合いです。ネコ目といわれるヴィンテージなどでよく見られる2つ穴のボタンが使われており、現在のヘンリーネックTシャツとリンクする点がいくつも見られるようなディテールになっております」
1940年代頃のヘンリーネックTシャツ
1940年代頃のヘンリーネックTシャツ

第2次世界大戦をきっかけにノックスヴィルも転換期を迎える

Healthknitの長い歴史においても、第2次世界大戦の影響は大きかったようだ。ブランドの背景を知るために、それについて話を伺った。
「第2次世界大戦後の1950年代に入ると、外国からの輸入品との競争に晒されたことでノックスヴィルでは多くの工場が閉鎖され、失業率が増加しました。かつて世界の下着の中心地といわれたノックスヴィルの繊維産業地区も転換期を迎えることになります。
そんななか、Healthknitをつくるスタンダードニッティングミルズ社は1940年代の第2次世界大戦下のアメリカ軍と巨大な契約を結び、何十万着というサーマルアンダーウエアや、ドロワー(冬用のレギンス)を受注し、製造することになりました。そんな混乱の時代の状況下でもHealthknitは成長し続け、この時代を生き抜いたのち、アメリカで最も人気のあるブランドのひとつとなっていったといわれております」
スタンダードニッティングミルズの社名がプリントされたドロワー
スタンダードニッティングミルズの社名がプリントされたドロワー
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