土佐和紙の伝統技術と世界を魅了する極薄和紙の魅力
2025.04.07
土佐和紙の伝統技術と世界を魅了する極薄和紙の魅力
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福井県の越前和紙、岐阜県の美濃和紙と並び、「三大和紙」と呼ばれる高知県の土佐和紙。種類が豊富で、他の和紙と比べて薄くて丈夫なのが特徴だ。特に文化財の修復などに使用される「土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)」は、世界中を探しても類を見ない薄さを誇る。
ひだか和紙有限会社は、50年以上も土佐典具帖紙の歴史をつないできた。時代の流れとともに生産量が減っていくなか、新しい活用方法を見出し、今日まで伝統技術を継承している。
今回は、同社・代表の鎭西さんに、これまでのあゆみや土佐典具帖紙の特徴、製造の裏側を伺う。
PROFILE|プロフィール
鎭西 寛旨(ちんぜい ひろよし)
鎭西 寛旨(ちんぜい ひろよし)

役職:代表取締役
生年月日:1968年10月生まれ
出身地:高知県
最終学歴:Seattle University Albers School of Business & Economics卒
職務経歴:8年間の現場担当、営業担当を経て2016年より現職。
2011年 四国地域イノベーション創出協議会主催 2011四国産業技術大賞 革新技術賞 最優秀賞 受賞
2017年 一般財団法人 日本ファッション協会主催 日本クリエイション大賞2017 日本の巧みな技(わざ)賞 受賞
2020年 経済産業省四国経済産業局 主催 第8回ものづくり日本大賞 四国経済産業局長賞 受賞
趣味:落語鑑賞
座右の銘:得意平然 失意泰然

文化財復用紙として国内外に名を広める

ひだか和紙の歴史は、1949年に輸出典具帖紙協同組合を設立したことからスタートする。もともとは、冬の閑散期に紙を作っていた農家が集まった組織だったという。

「かつては手漉きで1枚ずつ作っていたのですが、時代の流れとともに加工や取り扱いのしやすいロール紙の需要が高まりました。『手漉きだと限界があるため機械漉きをしよう』という話になり、1969年に弊社が誕生しました。しばらくは手漉きと機械漉きを並行して行っていたのですが、徐々に機械漉きの比重が大きくなっていきました」

当時の同社は、包装紙や障子などOEM製品を主軸としていたが、包装の簡略化の影響を受けて徐々に仕事が減ったという。また、住宅の洋風化により和室や障子の数も減り、和紙の需要が少なくなっていった。

「どうやって生き残るかを考えるなかで、文化財に目をつけたのです。文化財の業界について学びつつ、企業などに対して試行錯誤しながら地道に営業を続けました。そうしていくうちにひとつ、またひとつと縁がつながり、やがて海外から文化財の修復の勉強に来ている修復士の方にも興味を持ってもらえるようになったのです。

私たちも、海外でワークショップを行いながら土佐典具帖紙の認知を高めていきましたが、ありがたいことに口コミでも広がっていきました」

近年、日本の歴史的書物や絵画などの保存状態が、他国のものと比べると圧倒的に良好であることが注目され始め、その原紙である楮紙が評判になった。

「ただの“紙”ではなく、文化を守る“素材”をつくる」。その理念のもと作られる同社の和紙は、国内外の図書館や美術館から修復用和紙として高い評価を受けている。現在ではヨーロッパ、北米、南米の文化財機関にも和紙を提供しており、ユネスコの記録遺産に使われた実績もある。
海外の書物の修復として利用されている
海外の書物の修復として利用されている
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