文化財復用紙として国内外に名を広める
ひだか和紙の歴史は、1949年に輸出典具帖紙協同組合を設立したことからスタートする。もともとは、冬の閑散期に紙を作っていた農家が集まった組織だったという。
「かつては手漉きで1枚ずつ作っていたのですが、時代の流れとともに加工や取り扱いのしやすいロール紙の需要が高まりました。『手漉きだと限界があるため機械漉きをしよう』という話になり、1969年に弊社が誕生しました。しばらくは手漉きと機械漉きを並行して行っていたのですが、徐々に機械漉きの比重が大きくなっていきました」
当時の同社は、包装紙や障子などOEM製品を主軸としていたが、包装の簡略化の影響を受けて徐々に仕事が減ったという。また、住宅の洋風化により和室や障子の数も減り、和紙の需要が少なくなっていった。
「どうやって生き残るかを考えるなかで、文化財に目をつけたのです。文化財の業界について学びつつ、企業などに対して試行錯誤しながら地道に営業を続けました。そうしていくうちにひとつ、またひとつと縁がつながり、やがて海外から文化財の修復の勉強に来ている修復士の方にも興味を持ってもらえるようになったのです。
私たちも、海外でワークショップを行いながら土佐典具帖紙の認知を高めていきましたが、ありがたいことに口コミでも広がっていきました」
近年、日本の歴史的書物や絵画などの保存状態が、他国のものと比べると圧倒的に良好であることが注目され始め、その原紙である楮紙が評判になった。
「ただの“紙”ではなく、文化を守る“素材”をつくる」。その理念のもと作られる同社の和紙は、国内外の図書館や美術館から修復用和紙として高い評価を受けている。現在ではヨーロッパ、北米、南米の文化財機関にも和紙を提供しており、ユネスコの記録遺産に使われた実績もある。
海外の書物の修復として利用されている