【漆芸×未来】1,000年前の技術で「Enigma」を創る若き漆芸家 佐野圭亮とは?
2025.07.23
【漆芸×未来】1,000年前の技術で「Enigma」を創る若き漆芸家 佐野圭亮とは?
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これは道具なのか、アートなのか、そのどちらでもない、未来の祈りの形式なのか。
佐野圭亮さんの「Enigma(エニグマ)」という小筐(こばこ)のシリーズを見れば、誰でも「伝統工芸」の概念が揺さぶられるのを感じるはずだ。各辺5.3cmの小さなキューブの表面を、螺鈿(らでん)・平文(ひょうもん)・蒔絵(まきえ)といった技巧がびっしりと彩っている。数百年前から存在する「漆芸(しつげい)」のテクニックを用いながら、その表現はまったく新しい。謎めいた作品を生み出す31歳の若きArtisanのアトリエを取材した。
PROFILE|プロフィール
佐野 圭亮(さの けいすけ)
佐野 圭亮(さの けいすけ)

漆芸家。1994年 群馬県高崎市生まれ・在住。東京藝術大学美術学部工芸科 大学院修了。螺鈿・蒔絵・平文・乾漆などの漆技法で作品を制作。

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工芸との出会い:漆とロケットエンジンの分岐点

佐野さんは群馬県高崎市に生まれ育ち、現在も作品制作の拠点を置いている。伝統工芸の道に進むきっかけは、とても素朴な出会いだった。

「幼いころから、手を動かして何でも作ることが好きでした。はじめて伝統工芸の作品を目にしたときは驚きましたね。見る角度によって赤や緑や青の光が、色を変えながら動いている。この美しいものは何だろうと」

それが「螺鈿」だった。貝殻を極薄に切り取り、漆を塗った木に貼りつけ、さらに漆でコーティングしたあと表面の漆を研ぐことで、貝の輝きが浮かび上がる。奈良時代に中国から日本に渡って独自進化した漆技法。その技も知らないまま強烈に惹かれた。しかし、佐野さんがまず目指したのは工芸作家ではなく、機械エンジニアだったという。

螺鈿平文小筐「Enigma Ⅰ」
螺鈿平文小筐「Enigma Ⅰ」
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