歴史ある地に生まれ、自然と職人の道へ
五十嵐製紙の創業について、また現在の工房の特徴を教えてください。
五十嵐製紙は、1919年(大正8年)に私の曽祖父が立ち上げました。2023年10月で、創業104年目を迎えます。現在は家族やパートの方を含めて9人で製造しており、私と母は伝統工芸士として活動中です。
作っているものは、主に壁紙やふすま紙のほか、包み紙やお酒のラベルといった包装紙、小物類など多岐にわたります。製造するものの形や厚さ、大きさは問いません。平面も立体も、薄いものも厚いものも何でも対応します。
当工房の特徴は、チャレンジ精神旺盛なことです。「これ、できますか?」と依頼をいただければ、「1回やってみましょう」となります。問屋から「ほかの工房に頼んでみたけど断られてしまって。五十嵐製紙ではできますか?」と相談いただくこともありますね。
五十嵐さんが工房に携わった経緯をお聞かせください。
私が一人っ子だったこともあり、代々続いている工房を継ぐのが当たり前の流れでした。越前は日本最古の和紙の産地で、多くの人が紙漉き(かみすき)に携わっている街ですから。
紙漉きが伝わったのは、1500年ほど前です。中国から仏教(お経の本)とともに渡ってきたという説と、農作物の栽培に適してない
大瀧神社周辺地域のために、女神様が紙漉きを教えたという説があります。
いろいろな説がありますが、近くに越前港があることと、奈良の正倉院に越前で漉かれた書物があることから、中国から伝わったとされる説が有力ですね。
日本最古の和紙の産地とのことですが、産地全体の工房数はどのくらいあるのでしょうか?
50軒以上あると思います。
福井県和紙工業協同組合に加盟していないところもあるので、正確な数は分かりません。携わる人には、紙漉きの道具を作る方や和紙製造に関わる方など、さまざまな方がいらっしゃいますよ。
ただ、最近は後継者がいないので、工房自体が減ってきています。仕方のないことだとは思いますが、少し寂しいですね。