伝統に新しさを纏う、江戸木目込の革新──柿沼人形が描く世界への挑戦
2025.10.16
伝統に新しさを纏う、江戸木目込の革新──柿沼人形が描く世界への挑戦
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270年もの伝統を受け継ぐ、雛人形「江戸木目込人形」。柿沼人形店は、埼玉・越谷で、3代にわたり江戸木目込人形を作り続けてきた老舗の人形店だ。
伝統技術を受け継ぎながら、新しい感性を融合させた人形づくりを得意とする伝統工芸士・柿沼利光さん。招き猫やアートピースなど、木目込の新たな可能性を模索し続けている。3Dプリンターなど最新技術も駆使する若き人形師が目指す、これからのものづくりとは──
PROFILE|プロフィール
柿沼 利光(かきぬま としみつ)
柿沼 利光(かきぬま としみつ)

1979年東京都荒川区生まれ。株式会社柿沼人形常務取締役。経済産業大臣認定の伝統工芸士。25歳より人形師・芹沢英子、2代目・柿沼東光に師事。一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会賞受賞(2019)、東京手仕事プロジェクト東京都知事賞受賞(2020、2024)。

京で生まれ、江戸で発展した木目込人形

雛人形には、種類があることをはじめて知りました。

雛人形は、大きく2種類に分かれます。木や藁などの芯でできた胴体に衣裳を着せつける衣裳着人形と、木目込人形。木目込人形は、おがくずや正麩糊(しょうふのり)などを固めた桐塑(とうそ)を型抜きした土台に筋彫りを施し、そこに布を押し込む木目込という技法を使った人形です。土台があるので型崩れしにくく、桐塑を変化させてさまざまな造形ができることが特徴です。

そのルーツは、元文年間(1736~41年)の京都・上賀茂神社にあります。祭り道具の木っ端を彫刻して、祭りの衣裳着の端切れを着せつけた人形が加茂人形として愛されていました。それが江戸に流れ、桐塑を型抜きして量産できる製造方法に変化したのが、江戸木目込人形です。

柿沼人形店は、埼玉・越谷で人形を作り続けてきたのでしょうか?

柿沼人形店は、1950年創業です。木工を営む家に生まれた祖父が、戦後に工房を訪ねて人形師になり、東京・荒川区で独立しました。本社は現在も荒川区ですが、40年ほど前に大きな工場を求めて生産拠点を越谷に移しました。人形作りで有名な埼玉県・岩槻に近いこの場所で、職人と関係を築くために、越谷を選んだようです。