かつての昭和の街角を彩ったスーツやコート。それらを“時代の美学”として再び体現しているのが、加藤有名さんだ。ショート動画やYouTubeでは、29歳という若さでありながら、昭和のサラリーマンを思わせるスーツスタイルとその高い再現度が話題を呼んでいる。
彼が再構築するのは単なるレトロではなく、「1978年」というその一点に宿る感性。70年代後半は、社会の熱気、人々の装い、街のムード──そのすべてがファッションと響き合っていた時代だ。
なぜ彼は今、この1978年という時代にこだわり続けるのか。加藤さんの哲学を通して、粋な“昭和スタイル”が現代に問いかける意味を尋ねてみた。
PROFILE|プロフィール

加藤 有名(かとう ゆうめい)
29歳。コメディアン。
昭和カルチャーを軸に、SNSでコント動画を発信している。また、ポップアップやトークイベントを通して昭和と現代の感覚を混ぜるような表現をしている。
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横山やすしと岩井ジョニ男に憧れて
取材当日、加藤さんはベージュのスーツにゴールドの時計とブローチ、鼈甲のメガネという装いで登場した。実際にお会いすると、映像で見る以上に彼の持つ柔らかな雰囲気が加わることで、全体のスタイルにはどこか華やかさと品の良さが漂っていた。いつ頃から、昭和のスーツスタイルに魅了されるようになったのだろうか。
「最初のきっかけは、2010年代後半頃にあった“80年代ブーム”のような流れですね。
その時期に、ビートたけしさんがFICCE(フィッチェ)のセーターを着ている姿や、上岡龍太郎さんがDCブランド風のスーツを着こなしている80年代当時の映像を見たのが印象的でした。