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2023.12.26

感情と物語を宿すスウェーデン発ジュエリーブランド「Louis Abel」:エンジニアからデザイナーへと転身した創設者がその本質を語る

「ACNE STUDIOS(アクネ ストゥディオス)」や「H&M」、「Our Legacy(アワーレガシー)」などのファッションブランドや、「IKEA(イケア)」といった世界最大の家具メーカーを生み出してきたスウェーデン。
感度の高いモードラバーに愛されるジュエリーブランド「All Blues(オールブルース)」も世界的規模へと成長を遂げるなか、今注目すべきはジュエリーブランド「Louis Abel(ルイス アベル)」だ。
2019年に立ち上げられた同ブランドは、織物産業の町として知られるスウェーデン・ボロースにある地下ガレージの小さなスペースで、創設者兼デザイナーのジミー・カムヒ・ルウトフィ(Jimmy Kamhieh Loutfi)がジュエリーを製作したところから始まる。
機械工学を学び自動車産業でエンジニアとして経験を積んだ彼は、ある日ジュエリー製作に目覚めキャリアを大きく転換した。エンジニアであった彼にとって貴金属は馴染みある素材だったが、「ジュエリーの貴金属は単なる機能や形状以上の価値があり、“感情の器”だという感覚が湧き上がった」と振り返り、その衝動がブランド創設へと彼を駆り立てたようだ。
貴金属という、扱う素材は同じとはいえ、ジュエリーに込める想いにはそれまでとは違った特別なものがある。内側に溢れる制約のない自由な感情を、有機的で不規則な曲線や質感で作る一点一点異なるユニークなジュエリーへと変換する。彫刻的な美しいデザインは、北欧のファッションアワードを2つ受賞するなど、すでに高い評価を得ている。
一念発起でスタートさせた「Louis Abel」に、全精力を注ぐ創設者兼デザイナーのジミー・カムヒ・ルウトフィ(以下、ジミー)。独学のジュエリーデザイン、エンジニアとしての礎と創造性への情熱の融合など、創設から4年間の軌跡を辿りながらブランドの魅力に迫る。
PROFILE|プロフィール
ジミー・カムヒ・ルウトフィ(Jimmy Kamhieh Loutfi)
ジミー・カムヒ・ルウトフィ(Jimmy Kamhieh Loutfi)

Louis Abel
創設者兼デザイナー

機械系エンジニアとしての経歴が、デザイナーとしての仕事の礎を築いた

まず、 「Louis Abel」を創設した経緯について教えてください。
私は大人になるまで、ファッションやジュエリーなどのクリエイティブな分野をあまり探究したことがありませんでした。レバノン難民の息子である私にとって、生活の安定と安全を得るために工学や法律、医学といった学問的な分野に携わることが常に期待されていたと思います。そしてその期待に応えたいと思って育ちました。
クリエイティブな分野への関心は、初めてシルバージュエリーを受け取ったときに現れました。ジュエリーが持つ感情的なアプローチとストーリーテリングの潜在的な影響に魅了され、エンジニアの背景とクリエイティブへの情熱を組み合わせた、新しいキャリアの道を模索するようになったのです。
私にとってジュエリーは、体に身につけることができるもっとも親密な芸術です。最初にジュエリーに魅了されたのは、感情を呼び起こすユニークでパワフルな能力があり、貴金属に埋め込まれた記憶や物語を、身につけたり受け継いだりすることで伝えていくことができるということでした。つまり、単なるアクセサリーではないのです。
エンジニアとしての経験は現在にどのように生かされているのでしょうか?
機械系エンジニアとしての経歴が、「Louis Abel」でのデザイナーとしての仕事の礎を築いたと言えます。エンジニアリング分野で、設計と製造における高度なスキルを習得し、生産の手法を形作りました。
さらに、クラフトマンシップへの情熱を抱いていたことが、外部委託ではなく独自の製造施設を建設することを選んだ主な理由のひとつだと思います。エンジニアリング分野で得た技術的知識は、ジュエリーデザインに移行する際に非常に重要でした。
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