1989年に登場し、フラッグシップラインとして位置づけられる1000番台の一足として、これまでになかった一体型ソールで話題を呼んだ「1500」。今年はリリースされてから節目の35周年を迎え、
記念モデルも展開されている。
そんな「1500」がどのようにして生まれ、ニューバランスにおいてどんな位置づけをされているのかを、スニーカーシーンのキーマンであるミタスニーカーズのクリエイティブディレクター国井栄之さんに伺った。
「1500」は「1400」と同時進行で開発が進んでいた
名作揃いの1000番台の中でも根強い人気を誇る「1500」。どのように生まれたかに関して国井さんは記憶をたどりながらこう語ってくれた。「ニューバランスにおいて1000番台は『1300』からはじまるプレステージモデルです。『1300』、『1400』、『1500』とリリースされた順番に数字が増えていくのが普通ですが、実は『1500』は1989年に『1400』よりも先に発売されているのです。
なぜ『1400』の発売が遅れたかというと『ニューバランス』の独自の衝撃吸収と安定性を両立させたミッドソール構造『ENCAP(エンキャップ)』の完成度を、納得がいくまで高めたためといわれています」
「ENCAP」の完成とともに発売された「1400」よりも先のお披露目となった「1500」は、そのデザインや機能性、ラストのフォルムまで、これまでの1000番台とは一線を画す進化した姿を見せたのだった。国井さんは続ける。
「『1500』からラストも細身の木型である『SL-1』が採用され、1000番台の中でも特に細身のシルエットになっています。つま先にかけて細くなるのが特徴でスタイリッシュに見せながらも『ニューバランス』の代名詞である“履き心地”も両立しているのは流石ですよね」
「1500」がUKメイドでありヨーロッパで人気の理由
国井さんの分析では「1300」はアメリカ、「1400」は日本、「1500」はヨーロッパでの人気が高いとのこと。その理由について、こう考察している。「やはり細身のラストを採用したことが一番の理由だと思います。ロングノーズっぽくシュッとして見えるスニーカーはスラックスなど細身のパンツとも相性がいいので、ドレスやテーラードの着こなしが基本にあるヨーロッパで人気が出るのは必然ですよね。自分は『1500』のこのシュッとしたフォルムが、実は苦手でした。ストリートっぽい太めのパンツとは相性が悪かったので……」
また「1500」は現在、「576」とともにイギリス製のみに絞られている。イギリスにおいて本場の革靴も手掛けてきた職人が高品質素材を使い、しかも手作業によって作られるというプレミア感も、ヨーロッパでの人気を裏付ける要因だろう。
「実は『1500』は開発デザイナーが、かのスティーヴン・スミスというのも面白いところだと思います。スティーヴン・スミスといえば、『ポンプフューリー』の生みの親でもありますし、ナイキをはじめアディダス、リーボックなど数々のブランドに在籍した経歴が あります」
後にはアディダスがカニエ・ウェストとコラボした「イージーブースト」のプロジェクトにも参画しているスニーカー界の巨匠が、デザイナーを務めたことも1000番台の中で異彩を放つ理由でもある。