MLB(メジャーリーグ・ベースボール)唯一の公式選手用キャップであり「1つは持っているよ」という人が世界中にいるブランドだと思う。今回は100年を超えるその歴史を紐解き、NEW ERA®の中でも定番と呼ばれる「59FIFTY®(フィフティーナインフィフティー)」誕生の話など、時系列に沿って解説していこう。
紳士服用のカジュアルハットから始まったNEW ERA®
歴史の始まりは1920年、「Eクック・キャップ」という帽子会社がアメリカ、ニューヨーク州のバッファローで誕生する。創業者のエルハルド・クック氏は創業から2年後の1922年、正式社名を「ニューエラ・キャップ」に改名する。当時はギャツビースタイルといわれる紳士向けの帽子づくりをしており、既製服の概念が初めて登場し、紳士用のカジュアルハットがかつてない勢いで売れていたのだという。ベースボールキャップづくりへ
1932年、創業者の息子であるハロルド・クック氏は、アメリカで一般大衆の娯楽として大きな人気を集めていたベースボールに着目し、スポーツ用キャップのビジネスに参入することを決める。その2年後、NEW ERA®初の公式選手用ベースボールキャップ、クリーブランド・インディアンスのホーム用とアウェイ用が誕生することとなる。NEW ERA®はその後、「品質第一、量は後からついてくる」をモットーに、公式選手用ベースボールキャップ市場を独占することを目指 す。59FIFTY®が誕生
1950年には、ブルックリン・ドジャース、シンシナティ・レッズ、クリーブランド・インディアンス、デトロイト・タイガースといった名門チームにキャップを供給。この時点でNEW ERA®は、メジャーなベースボールチームへ製品供給する唯一の独立帽子製造企業となる。1954年、ハロルド・クック氏は従来のフィッテドキャップを改良し、当時「ブル ックリンスタイル」とも呼ばれたそのキャップは「59FIFTY®」と名づけられた。この59FIFTY®の名前の由来には諸説あるが、このキャップに使われたウール生地の品番が5950番だったという言い伝えがあるそうだ。
その後、70年近い時が流れた今も、NEW ERA®を代表するベースボールキャップ、59FIFTY®は、誕生当初からそのシルエットをほぼ変えていない。
アポロ11号プロジェクトにもNEW ERA®のキャップ
1960年代初頭、ハロルド・クック氏と息子のデビッド・クック氏は、さらなるチーム契約を取るためにキャップの洗濯と型直しのサービスを始めた。それが功を奏し、1965年までにNEW ERA®はMLBの約10チームと契約する。さらに1969年には、アポロ11号プロジェクトの帰還クルー回収チームだったUSSホーネットに乗組員用キャップを提供。以降のアポロプロジェクトにも提供を継続し、絶大な信頼を獲得していくことになる。 MLB全球団のオンフィールドキャップを製造する独占的な権利を獲得
1974年、MLBの24チーム中20チームがNEW ERA®と契約をする。その後、時は流れて1991年、MLBの公式選手用オンフィールドキャップはオーセンティックコレクションと名づけられ、バッターのシルエットロゴがキャップの後ろ側に入る仕様に変わる。そして1993年、ついにMLBより全球団のオンフィールドキャップを製造する独占的な権利を獲得することになった。1932年にハロルド・クック氏が、スポーツ用キャップのビジネスに参入を決めてから、実に61年という年月が流れていた。