糸商から博多織の織元に
西村織物の歴史は、糸商からはじまった。西村家の祖先である長崎の豪族(松浦党)の西村増右衛門が、1587年に豊臣秀吉の博多町割に参画し、商人の神屋宗湛を助けた功により、“隅切り角に四つ剣菱”の紋を授与されたことがきっかけだった。
「戦国から江戸時代まで、しばらくは糸商を営んでいましたが、江戸幕府が海外への金銀流出を防ぐ政策をとったことから、絹糸の輸入が制限されるようになりました。そこで当時の当主・西村儀平は事業の方向性を変え、博多織をはじめました。今から164年ほど前のことです」
以来、博多織の織元・西村家として代々その歴史が紡がれてきたが、順風満帆なときばかりではなかった。
「今の織機は鉄製ですが、当時は木製だったため、1945年の福岡大空襲で建物も織機もすべて焼失しました。それを裸一貫で立て直したのが、私の祖父にあたる4代目・社長の西村政太郎です」