有限会社竹内宏商店三代目、木綿生地ソムリエ
名古屋の南に突き出るように延びる知多半島。丘陵地に穏やかな陽射しが降り注ぎ、みかんなどの栽培が盛んな地域だ。その半島の北西部、伊勢湾に面した海沿いから半島の中心部へ向かって車で走った先にある岡田地区は、かつて知多木綿と呼ばれた綿織物の中心地だった。
「昭和30年から50年にかけて、知多の織物組合には700軒近くが加盟していました。1万人くらいの人が木綿産業に従事していたそうです。当時は今より人口が少ないですし、かなりの確率でお隣さんが繊維の仕事に就いていたんでしょうね」
当時の様子を語るのは、同地で生地問屋を営んできた竹内宏商店の社長・竹内亮さん。同社を創業した祖父の故・宏さんから3代にわたり岡田を見てきた。
「昭和の後期になると組合の加盟数も一気に減り、平成の初めには3分の1以下になってしまいました。今はもう10軒前後です」
岡田の道は細い。その小径の両脇に江戸から明治にかけての土蔵や黒板塀が、かつて集まったにぎわいと富の面影を残すように立ち並んでいる。その小径が県道へ顔を出そうかというところに、今回お話をうかがうために訪れた、竹内宏商店が営む知多木綿のアンテナショップ「Chita Cotton 478(よんななはち)」がある。