野球少年に将来の夢は何かと聞けば、プロ野球選手やメジャーリーガーになりたいと目を輝か せながら答えるだろう。宮本さんも、日本の伝統工芸の道に足を踏み入れたからには、いつかは人間国宝になりたいと考えたのだろうか。
「そんなこと思ったこともないですよ。黒田辰秋さんっていう偉大な人が近くにいて、こういう人がなるもんだって思っていましたから。」
修業しはじめたときから、宮本さんは人間国宝の技術や人となりを肌で感じ取っていたからこそ、謙遜してそう語ったのかもしれない。とはいえ、宮本さんは人間国宝に選ばれた。実際に、その認定へのプロセスはどのようなものだったのか。
「電話がかかってくるんですよ。今、こういう会議があって、人間国宝として宮本さんの名前が挙がっていますと。急に人間国宝になりますかって言われても、具体的に何をしたらいいかわからないですよ。
話を聞いてみると、無形文化財の技術を次の世代に伝えていくということなので、そういうことならと思ってお受けしますと伝えました」