日本の工業や伝統工芸を支える、影の立役者
寺澤さんが製造を手がけている手植えブラシと機械植えブラシでは、どのような違いがあるのでしょうか。
手植えブラシは毛材を二つ折りにしてひと穴ひと穴植えていくので、機械植えブラシに比べて毛材が抜けにくく耐久性があるんです。靴磨きのプロの方はほとんどが手植えの靴ブラシを使っているのではないでしょうか。うちではほとんどの工程を手作業で行っているので、量産が難しく、すべての商品を受注生産しています。
ブラシの毛材には天然の馬毛、豚毛、山羊毛といった動物の毛から植物繊維のほか、金属線では真鍮、ワイヤー、ステンレス、りん青銅なども使っています。
先ほど寺澤さんが作られた靴ブラシを見せていただき、毛がびっしり詰まっていて、ふさふさとやわらかな触り心地で驚きました。家庭用と工業用のブラシでは、どのような割合で製造していますか。
7割が工業用ブラシですね。残りの3割は靴ブラシや洋服ブラシなどの家庭向けの製品を作っています。工業ブラシはほとんどの場合、製品の納め先は問屋さんなので、実はその先のエンドユーザーの方がどのような用途でブラシを使っているのか分からないんです。
製品数も今どのくらいあるのか、正直なところ見当もつかないですね。たとえば、毎月、定期的に植えているブラシは20〜30種類だけれど、1年に1回植えるものもあれば、3年に1回植えるものもあります。同じ靴磨き用のブラシでもA社とB社では仕様に多少の違いがあるので、そうなると製品の数はどんどん増えていきますよね。