モカシンステッチとラグソールが存在感を放つ定番シューズは、「イエローブーツ」に次ぐ“隠れた名作”として知られる。
そんな往年のシューズがここ数年、人気を再燃させている。しかも、渋カジを知らない20〜30代の若い世代にも売れているという。
なぜ今、「スリーアイ クラシック ラグ」が再びファッションフリークの心を惹きつけているのか? ティンバーランドの大木文太さんにその理由を聞いた。
PROFILE|プロフィール
大木 文太(おおき ぶんた)
VF ジャパン ティンバーランド マーケティング エグゼクティブ/エナジーマーケティング
高校1年のときから、イエローブーツを愛用しているという筋金入りのティンバー好き。「スリーアイ クラシック ラグ」の人気再燃の立役者ともいうべき人物
ブランドの知名度を上げた「イエローブーツ」
まずはブランドの歴史をおさらいしておこう。「ティンバーランドはアメリカのニューハンプシャー州ストラザムで1952年に創業しました。ブランドを設立したのは、靴職人の家に生まれたユダヤ系ロシア人のネイサン・シュワルツ氏。ボストンでブーツ職人としてのキャリアを積んだ彼は、1950年代初頭に、2人の息子とともに製靴会社の経営を始めます」
1973年には、針と糸を使わずにソールとアッパーを一体化させる射出成型技術を駆使し、ソールとアッパーのつなぎ目から水が浸み込まない世界初の完全防水ブーツを発売した。
「それは防水性に優れたヌバックレザーのアッパーに、悪路でも高いグリップ力を発揮するラグソールを装着したワークブーツでした。そのブーツには、森の男を意味する“ティンバーランド”という商品名がつけられましたが、小麦(ウィート)を思わせる明るいカラーリングから、いつしか“イエローブーツ”と呼ばれるようになりました」
当初、イエローブーツは森林で働くワーカーのためのブーツだったが、’80年代の初頭にミラノのファッショニスタたちに愛用され、ファッションアイテムとして注目を集めるように。’80年代の後半に入ると、アメリカ西海岸の著名なラッパーたちがこぞって履き始め、B-BOYファッションのシンボルとなっていった。
イエローブーツによって、一躍グローバルブランドとなったティンバーランド。では、「スリーアイ クラシック ラグ」はいかにして誕生したのか?
「デビューは1978年です。当時、イエローブーツの売れ行きは好調だったものの、編み上げブーツということもあって、春や夏は売れ行きが鈍くなる傾向にありました。ブランドとしては、春夏シーズンに合わせた“第2のブランドアイコン”を生み出す必要があったんです」
そこで目をつけたのが、当時、アメリカのヨットマンたちが履いていたレザー製のボートシューズだった。モカシンタイプのアッパーに、ラグソールを合わせたデザイン。今日の「スリーアイ クラシック ラグ」の原型となったこのモデルはヒット作となり、’80年代には日本に上陸を果たした。
「’80年代終わり頃から’90年代にかけての渋カジブームで、このモデルの知名度は飛躍的に高まりました。ネイビーブレザーにボタンダウンシャツ、ジーンズ、そして足元は『スリーアイ クラシック ラグ』。当時流行していたプレッピースタイルのマストアイテムになりました」