土佐打刃物の歴史は、鎌倉時代に大和国から移住した刀鍛冶(かたなかじ)の集団に源流を持つとされています。その後、戦国時代には領内に多くの鍛冶屋が存在する一大産業基盤が確立していました。
この長く豊かな歴史を育んだ背景には、高知県、旧土佐国 の特異な地理的条件があります。南は広大な太平洋に面し、北は険しい四国山地によって隔てられる地形は、海と山の双方から豊かな恵みを受けると同時に、独自の文化圏を形成しました。
温暖で雨量が多い気候は、豊かな植生を育み、人々の生活と産業に大きな影響を与えてきました。土佐打刃物という工芸は、こうした高知の風土と分かちがたく結びつきながら、その姿を形作ってきたのです。
