津軽塗の品質を語る上で、まず触れなければならないのが、その土台となる 木地(器の原型となる木工品)です。津軽塗の木地には、主に「青森ヒバ」という木材が用いられます。この選択は、単に地元で手に入りやすいからという理由だけではありません。青森ヒバが持つ卓越した性質こそが、津軽塗の代名詞である「堅牢さ」の基盤を形成しているのです。
青森ヒバは、ヒノキチオールという成分を豊富に含み、極めて高い抗菌、防腐、防虫効果を持つことで知られています。その優れた耐久性は、世界遺産である中尊寺金色堂の部材としても使用されていることからもうかがい知ることができます。また、水や湿気に強く、木目が緻密で美しいという特徴も併せ持ちます。
津軽塗の制作工程では、漆を何十回と塗り重ね、その都度乾燥と研磨を繰り返します。これは素材にとって非常に過酷な環境ですが、青森ヒバの生まれながらの強さがこの工程に耐え、歪みや割れを防ぎます。まさしく、津軽塗の品質は、この青森ヒバという素材の力に支えられているのです。
国の伝統的工芸品の規定では、ヒバの他にホオノキ、カツラ、ケヤキといった木材の使用も認められています。それぞれの木材が持つ特性を理解し、作るものによって使い分けることも、作り手の知恵と言えるでしょう。この土台となる木地へのこだわりが、見えない部分から製品全体の価値を支えています。
