津軽塗の素材:堅牢さを生む「青森ヒバ」と美を彩る「漆」の秘密
会員限定記事2025.12.11
津軽塗の素材:堅牢さを生む「青森ヒバ」と美を彩る「漆」の秘密
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
リンクをコピーしました
一つの工芸品が生まれる背景には、作り手の技術はもちろんのこと、その土地の風土や歴史が深く関わっています。そして、その根幹を支えているのが、製品の骨格となり、表情を作る「素材」の存在です。今回は、青森県が世界に誇る漆器、津軽塗について、その「素材」という視点から深く掘り下げてみたいと思います。
何十年にもわたって使い続けられると言われる津軽塗の堅牢さは、一体何に由来するのでしょうか。また、複雑で美しい模様は、どのようなものから生み出されるのでしょうか。調べていくと、そこには津軽の自然が育んだ素材との密接な関係と、現代社会が直面する課題、そして未来への新たな可能性が見えてきました。私にとっても、これは多くの新しい発見がある調査でした。この記事を通じて、津軽塗の奥深い世界を共に探求していければと思います。

津軽塗の木地(きじ):堅牢さの源泉「青森ヒバ」

津軽塗の品質を語る上で、まず触れなければならないのが、その土台となる木地(器の原型となる木工品)です。津軽塗の木地には、主に「青森ヒバ」という木材が用いられます。この選択は、単に地元で手に入りやすいからという理由だけではありません。青森ヒバが持つ卓越した性質こそが、津軽塗の代名詞である「堅牢さ」の基盤を形成しているのです。

青森ヒバは、ヒノキチオールという成分を豊富に含み、極めて高い抗菌、防腐、防虫効果を持つことで知られています。その優れた耐久性は、世界遺産である中尊寺金色堂の部材としても使用されていることからもうかがい知ることができます。また、水や湿気に強く、木目が緻密で美しいという特徴も併せ持ちます。

津軽塗の制作工程では、漆を何十回と塗り重ね、その都度乾燥と研磨を繰り返します。これは素材にとって非常に過酷な環境ですが、青森ヒバの生まれながらの強さがこの工程に耐え、歪みや割れを防ぎます。まさしく、津軽塗の品質は、この青森ヒバという素材の力に支えられているのです。

国の伝統的工芸品の規定では、ヒバの他にホオノキ、カツラ、ケヤキといった木材の使用も認められています。それぞれの木材が持つ特性を理解し、作るものによって使い分けることも、作り手の知恵と言えるでしょう。この土台となる木地へのこだわりが、見えない部分から製品全体の価値を支えています。

津軽塗の木地<br>画像協力:津軽塗たなか
津軽塗の木地
画像協力:津軽塗たなか

この記事は会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
会員登録でできること
  • 会員限定記事の閲覧、
    音声読み上げ機能が利用可能
  • お気に入り保存、
    閲覧履歴表示が無制限
  • 会員限定のイベント参加
  • メールマガジン配信で
    最新情報をGET