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2022.10.12

織物でも編物でない革新的なウェア 「Nike Forward(ナイキ フォワード)」の持つ可能性

ナイキが新たなイノベーション・プラットフォームとして発表したNike Forward(ナイキ フォワード)は、ニット(編物)や布帛(織物)とは全く異なる方法で生地を作ることで、エネルギー使用量を大幅に削減することに成功したという。開発に5年以上かけたというナイキ フォワードは、一体どのようなテクノロジーで、今後のアパレルシーンにどんな影響を与えるのだろうか。その全貌を解き明かすべく、ナイキインク イノベーション アパレル デザイン VP カーメン・ゾルマン氏に話を聞いた。
豪雨、洪水、酷暑、山火事など。昨今、世界各地で起こる自然災害のニュースを目にする頻度が増えている。いかに環境負荷を抑え、炭素排出量を抑えるかは、企業活動を行ううえで、ますます重要な課題となっていると言えるだろう。中でもアパレルは、製造にかかるエネルギー使用量の多さ、ライフサイクルの短さなどから環境負荷が大きい産業だとされているが、ナイキ フォワードの登場はこの課題を解決に向かわせる礎になるかもしれない。
ナイキ フォワードは、カーペットの製作などで使われるニードルパンチ[1]という技術を独自に改良した特許出願中の技法により、複数の繊維のレイヤーを重ねて絡み合わせ、生地を作り出している。織物も編物も、まずは繊維を糸にする紡績という工程が必要になるが、ナイキ フォワードの場合はそれが省かれる。
結果、従来のニットフリースと比べて、カーボンフットプリント(製品を作るために排出されたあらゆる温室効果ガスをCO2排出量に換算したもの)が、なんと約75%も削減できたという。いかにカーボンフットプリントを削減するかが、ナイキ フォワードの最大のテーマだったのだ。

ニードルパンチをハッキングした新技術

 「アスリート[2]の声に耳を傾けることは、私たちのイノベーションの文化を常に導いてきた理想であり、今回もまた同様でした。 世界中のアスリートが、気候変動が自分たちに影響を与え、最高のパフォーマンスを発揮する能力を低下させていると話しています。
だからこそ私たちは、地球とスポーツの未来を守るために、漸進的な改善と、ナイキ フォワードのような革新的な技術の両方を絶え間なく追求しているのです。新素材の開発におけるすべての決定は、ニットフリースと比較して二酸化炭素排出量を大幅に削減するためになされました。ニードルパンチというシンプルな工程は、その目標を達成するための私たちのソリューションでした」
ナイキ フォワード フーディ 18,150円
ナイキ フォワード フーディ 18,150円
ナイキ フォワード クルー 15,400円
ナイキ フォワード クルー 15,400円
ナイキ フォワードのファーストコレクションとして登場したのはフーディとクルー。使用されている素材の70%以上がリサイクルされたポリエステルで、生地は5つのレイヤーで構成されている。しかし、使う繊維もレイヤー数も用途によって変更が可能だという。
 
「ナイキ フォワードは、従来のニットやウーブンとは違います。既存のニードルパンチの機械をハッキングし、その使い方を革新して、プレミアムでサステナビリティに配慮した素材を作りました。70%以上のリサイクルポリエステルを使用した薄いレイヤーの複合素材から始めていますが、その構成を変える可能性は無限にあります。また、投入する材料も非常に柔軟で、産業廃棄物、消費者の手に渡る前の廃棄物、消費者の手に渡った後の廃棄物を含めることが可能です」
ポケットは余分なパーツを使わないシンプルなものになっている。繊維から直接テキスタイルにしているからか素材感が独特
ポケットは余分なパーツを使わないシンプルなものになっている。繊維から直接テキスタイルにしているからか素材感が独特

さまざまな可能性を秘めたプラットフォーム

 サステナビリティを追求したプロダクトだからといって、機能性を無視しているわけではない。
ナイキには1991年に誕生したFitテクノロジー(Functional Innovative Technology)と呼ばれるアパレルテクノロジーがある。吸汗速乾性に優れたドライフィット、保温性に優れたサーマフィット、風雨を防ぐためのストームフィット。そして、それぞれの上位テクノロジーであるADV。計6つのFitテクノロジーが存在する。今回登場したフーディとクルーはサーマフィットADVの基準を満たした保温性の高いアイテムだ。
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#Sustainability
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