日本の織物における宝物の再発見:あるフランス人デザイナーの旅
2024.08.20
日本の織物における宝物の再発見:あるフランス人デザイナーの旅
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PROFILE|プロフィール
クレモンティーヌ・サンドネール
クレモンティーヌ・サンドネール

京都を拠点にするフランス人デザイナー。ファッション専門学校でアップサイクリングと持続可能なデザインを専攻し、卒業後、日本のテキスタイルを詳しく学ぶため、2014年に来日した。たちまち日本の織物の美しさの虜になり、全国の布を再利用したクリエイションに専念することを決意。伝統的な素材を、フランスらしいモダンなデザインセンスで扱う独自のクリエイションは、新旧が見事に調和している。
2016年、自身の名前であるクレモンティーヌの日本名(ミカン)を冠したMikanを立ち上げる。以来、オーダーメイド製作や縫製ワークショップなど、人々と情熱を共有する新たな手法を展開し続けている。

公式サイトInstagram(@mikan_bags)

一目で魅了された

東京の蚤の市で、初めて本物の着物を見たときのことは忘れられない。それは着物の上にまとう「羽織り」という短い上着で、光沢のあるオリーブグリーンのシルク地に、花のモチーフが刺繍によって施されていた。

鮮やかな色彩と複雑な模様は遠くから見ても目を引くものだったが、近くで見るとさらに見事だった。デザインの精巧さと、シルクに織り込まれた金糸の輝きに魅了された。蚤の市の露店ではなく、博物館の展示を見ているような感覚になったことを覚えている。

それは2014年4月の出来事で、私はファッションデザインを学ぶために東京に引っ越したばかりだった。すぐにわかったことだが、蚤の市で着物を見つけたのは珍しいことではなく、日本にはヴィンテージの着物やアクセサリーを専門に扱うマーケットや専門店まであることを知った。

あれから10年経った今、こうした職人技が光る宝物を発見し手に入れられたことが、日本を離れなかった理由のひとつだと確信している。
織物の美しさと歴史に刺激を受けたことで、私は日本に留まり、新たな創作の旅に出ることを決意した。

そうして、廃棄された布地をリサイクルした世界にひとつだけのバッグを作り始めた。古いものを新しいものに変えることは、忘れ去られた宝物に新しい命を吹き込む愛情のこもった作業となった。

異文化から受け継がれるインスピレーション

フランス人デザイナーとして、私が日本のデザインに魅了されたのは今に始まったことではない。フランスのデザイナーやアーティストは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのジャポニズム以来、日本の美学に深いインスピレーションを受けてきた。

私がこの時代を研究していた頃、歴史学者たちが日本の製品に対する「熱狂」に言及していることに面白さを感じていた。いちコレクターとして、私の祖先も当時このビジネスにかかわっていたのではないかと考えずにはいられない。

この歴史的なつながりは、私の個人的な旅と長年にわたる文化への称賛とが結びつくことで、私の発見をより意義深いものにした。実際、フランスと日本の織物の間には、古くから相互にインスピレーションを与え、影響し合ってきた関係がある。

たとえば、着物の有機的なフォルムや自然からインスピレーションを得たモチーフを見るたびに、それらがフランスの織物生産、特に東洋と西洋の美学が調和するアール・ヌーヴォーに明らかに影響を与えていることがわかる。

一方、フランスのジャカード織機は、日本に輸入されたあと有名な西陣織の発展と洗練に貢献した。明治時代(1868年-1912年)の間、日本政府は国を近代化するために西洋技術の輸入を積極的に奨励しており、それには地元の織物の生産と品質を向上させるために織物技術も含まれていた。

時代を超越した職人技とサステナビリティ

フランス人の視点から日本の織物を見ると、そのモチーフのモダンさと時代を超えた魅力に驚かされる。より持続可能なファッションの創造を目指す時代において、流行に左右されないタイムレスなファッションに勝るものはないだろう。自然のモチーフは間違いなく重要であり、自然の美しさと絶え間なく移り変わる四季への賛辞でもある。

加えて、織物に使われている貴重な素材にも目を見張るものがある。帯の中には金糸や金粉、本真珠などが取り入れられており、その卓越した技術と芸術性を際立たせている。

これらは単なる装飾品としてではなく、織物技術の重要な成果を表している。豪華な素材と伝統的な技術を融合させる能力は、これらの織物の背後にある芸術性と献身を強調している(これらの説明の視覚的な例については、私のウェブサイトの「カスタムオーダー」セクションに展示されている帯のコレクションをご覧ください)。

未来への考察

職人たちが自らの能力を継承し続けることができるのかは真の問いではあるが、織物について研究していると、今日の私たちの生産と消費のあり方にも疑問を抱くようになる。

私たちの孫や未来の世代も、クローゼットや屋根裏部屋からこのような宝物を見つける機会があるのだろうか。私たちの服作りにはどのような配慮や技術が期待されているのだろうか? 私たちの人生を超えて残り続け、私たちの時代についてどのような出来事を物語るのだろうか?

これらの問いを考えるなかで、職人技を尊重し、私たちと過去をつなぐ伝統を守ることの重要性を再認識する。未来を見据えながら、素晴らしい織物に込められた美しさや持続可能性、そして文化交流の教訓を受け継いでいこう。
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