国家安全保障としての文化
1961年、ジョン・F・ケネディは就任演説で「あなたの国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい」と述べた。この言葉は、日本の文化財や文化的な習慣の保護と活性化に関して、今日の日本国民に投げかけるべき問いであると考える。
日本の文化財や儀礼の保護と活性化は、国家の安全保障に関わる問題である。少々危機感を煽るように聞こえるかもしれないが、私は日本独自の歴史、芸術、食文化、礼儀作法の重要性を再評価する必要があると心から信じている。これらは観光がもたらす経済効果としてだけでなく、強くたくましい文化がもたらす日本国民としてのアイデンティティや誇り、喜びといった感覚にとっても重要なのだ。
日本の歴史、芸術、文化は、国のアイデンティティや日本人のアイデンティティと切り離せない。物理的な文化財、神社、寺院、城、芸術品、工芸品だけでなく、礼儀作法、話し方、ジェスチャー、そして日本人のコミュニケーションに浸透している謙虚さなど、すべてが日本文化のアイデンティティに不可欠な要素である。
日本文化への長年の愛と尊敬
アメリカで育った10代の頃、初めて日本文化に触れた瞬間から、私はその魅力に引き込まれ、日本文化についてもっと知りたいと思うようになった。その情熱は、日本での30年の生活を経て、さらに強くなっている。
私は、日本をはじめ世界中のアーティストやブランドとコラボレーションし、日本の素晴らしいアーティストや職人にスポットライトを当てることをライフワークとしてきた。
アーティストとして、また新米の歴史家として、30年にわたり日本全国を旅して、展覧会を開催してきた。九州から北海道まで、神社仏閣やアーティストのアトリエを訪れることができるのは、とても幸運なことだ。日本には実にさまざまな工芸品があり、職人たちの仕事に対するひたむきさや鍛錬に畏敬の念を抱かずにはいられない。この30年間、日本のアーティストたちからインスピレーションを受け、多くの素晴らしいクリエイターと時間をともにしたことで、私自身もより良いアーティストになりたいと強く願うようになった。
昨年、私は世界最大のジャパニーズ・ウイスキーのオンライン販売会社である「デカンタ」から、20年熟成の軽井沢ウイスキーの販売を記念したアート作品の制作を依頼された。そこで、石川・輪島の「田谷漆器店」と共同で、漆器職人と大阪にある「酒井硝子」とのチームを結集し、軽井沢ウイスキーが入ったボトル3本を展示する「アクレイム・ウイスキー・ステージ」を作り上げた。これらは50セット製作され、昨年の3月にニューヨークでオークションにかけられた。デビット・スタンリー・ヒューエット氏と「アクレイム・ウイスキー・ステージ」