「Made in Japan」の魂を発見(ジョナタン・バーナベ)
2025.05.27
「Made in Japan」の魂を発見(ジョナタン・バーナベ)
リンクをコピーしました
※音声読み上げ機能はAI生成のため、
読み間違いが発生する場合があります。
PROFILE|プロフィール
ジョナタン・バーナベ
ジョナタン・バーナベ

カナダ、ケベック州生まれ。
アメリカでインダストリアルエンジニアとして42歳まで勤務。2015年、静岡で3代続く下駄メーカーの後継者である妻との結婚を機に来日。2018年、義実家である株式会社水鳥工業に入社し、自社ブランド【mizutori】の下駄を全国の催事で販売。2021年、徳川家康ゆかりの神社へと続く歴史ある商店街に店を開き、静岡の魅力的な逸品を紹介している。2024年からは訪日外国人向けのツアーディレクターとしても活動し、観光を通じて日本の伝統と文化の魅力を世界の人々へ伝えている。

創業初期の工場
創業初期の工場
2015年、結婚を機に、私の新しい人生が始まりました。静岡に移り住み、義実家が営む「株式会社水鳥工業」という下駄づくりの世界へ足を踏み入れました。静岡の伝統的な地場産業であるこの工場は、88年の歴史を誇ります。

正直なところ、来日以前の私は下駄についてほとんど知りませんでした。しかしmizutoriの下駄は私の想像をはるかに超えるものでした。世代を超えて受け継がれてきた木の温もりと、現代の感性に響く革新的なデザイン、そして何より、驚くほどの履き心地のよさ。
初めて足を通した瞬間、足全体が優しく包み込まれるような感覚に衝撃を受けました。この体験が、私の日本の職人技への強い興味と好奇心を呼び覚ましたのです。

日本語を猛勉強し、日常会話に困らない程度になった頃、営業担当として水鳥工業に入社しました。全国各地の職人展を巡るうち、地域ごとに息づく日本のものづくりの奥深さに魅了されました。

繊細な絵付けの陶器、緻密に織り上げられた織物、精巧に作られた木工品──どれも匠の手から生み出される多彩な作品であり、日本の文化と豊かな歴史を雄弁に物語っています。
特に感銘を受けたのは、家族経営の小さな工房で働く職人たちの真摯な姿勢です。彼らは決して妥協せず、製品の細部にまでこだわり、完璧を追い求めます。

この揺るぎない情熱こそが、世界に誇る「Made in Japan」の品質を支える礎だと確信しました。地方の小さな町工場にまで根付いているこの職人気質が、日本という国全体の価値を高めているのです。

職人の手によって生まれた製品は、日常生活に利便性をもたらすだけでなく、それを手にする喜びや、使うたびに心を潤す美しさを与え、人々の暮らしに鮮やかな彩りを添えてくれます。

アメリカで技術畑を歩んできた私にとって、素材選びから完成に至るまで魂を込めて手仕事を重ねる日本のものづくりは未知の世界でした。

その洗練された技と精神に触れ、仕事と技術、そして一つの道を極めることの真の意味について深く考えさせられました。
この記事をシェアする
リンクをコピーしました