京都・哲学の道前にある自身のギャラリーのオーナー兼ディレクター。1984年より日本に在住し、日本陶磁器について『ジャパンタイムズ』の「セラミック・シーン」コラムや『ダルマ・マガジン』、『Asian Art Newspaper』などに寄稿してきた。著書『焼物参考』(工芸出版、日本語版)は日本図書館協会推薦図書に選ばれ、英語版『Ode to Japanese Pottery』も刊行されている。随筆は『WINDS』や『Ceramics Art and Perception』にも掲載。日本陶磁協会会員として『陶説』にも寄稿し、これまでにイェール大学美術館、ニューヨーク・ボストンのジャパン・ソサエティ、サンディエゴ民芸博物館、ニューヨーク大学、ロサンゼルス郡立美術館などで講演を行っている。
日本ほど多種多様な工芸がある国は、世界を見ても他にないでしょう。これは大げさな話ではなく、どの地域を訪れても、その土地ならではの素材に根差し、何世紀もの歴史をもつ、独自の文化的な工芸に出会うことができます。さらにそれは、日本の数ある工芸の中でも焼き物において顕著に表れています。信楽の粘土は、益子、備前、萩、唐津などの粘土とはまったく異なります。この産地ごとの土の違いこそが、日本の焼き物が世界中で愛され、蒐集されている理由のひとつです。
私は蒐集家としてキャリアをスタートし、その後はライターとなって、1990年代後半には「やきもの」のギャラリーを開きました。ギャラリー開設を後押ししてくれた父には感謝しています。日本の焼き物と共に暮らすことは、私の身体を養ってくれるだけでなく、五感と精神に喜びをもたらしてくれます。こうした日々は、神聖で美に満ちた世界へ引き込まれるような、そんな感覚を覚えるのです。
1990年代当時は、英語で記された日本陶芸界の最新動向、注目すべき作家、展覧会情報などに関する情報がほとんどなかったため、私はジャパンタイムズ紙にコラムを執筆し始めました。もちろん、当時も英語の情報がまったくなかった訳ではありませんが、その大半は民藝運動や、その中心にいた人間国宝である、濱田庄司や島岡達三といった著名な作家にのみに焦点を当てたものでした。日本の焼き物の素晴らしさを世界に広めた、アンバサダーのような存在である人物の話に限定されていたのです。
私は日本各地の陶芸家と出会い、彼らの作品や今後の展覧会について知り、もし誰も彼らの物語を語らないのなら、私が語ろう。そう思ったのです。
そして、コラム『Ceramic Scene』は、蒐集家だけでなく、海外の美術館のキュレーターやギャラリーオーナーにも影響を与えるようになりました。当時、海外の美術館で現代の日本の陶芸作品を所蔵しているところは稀で、日本美術を所蔵していても、江戸時代や明治時代の作品ばかりでした。
しかし、今では状況が変わり、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどの美術館で現代の作品がコレクションに加わり、展覧会も頻繁に開催されるようになりました。ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)では常設展示されており、私のギャラリーから収蔵された作品も含まれています。
私のコラムの読者でもあり、先駆的な蒐集家、アリスとハルシー・ノース夫妻による『Listening to Clay』という本は、16人の日本陶芸家との対談がまとめられており、その後彼らのコレクションの大部分がニューヨークのMETに寄付されました。本書は、アーティストたちとの深い対話を英語で読める貴重な機会であり、日本の陶芸を理解する一冊として、とてもおすすめです。