藍と日本の工芸品:私のインスピレーションの源について(サリー・ハンコックス)
2024.07.31
藍と日本の工芸品:私のインスピレーションの源について(サリー・ハンコックス)
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PROFILE|プロフィール
サリー・ハンコックス
サリー・ハンコックス

イギリス・ロンドン出身のアーティストで、2010年より日本在住。織物やイラストレーション、壁画アートの制作をはじめ、最近では自然の色を使って、織物を手掛けている。2020年、パートナーの岡田淳一氏とともに、兵庫県・淡路島に農園と天然藍染め工房「AiAii」をオープン。「AiAii」で作られるアート作品や洋服、アクセサリー、日用雑貨は、藍の葉を栽培、発酵させた日本伝統の天然染料である「すくも」を使用。その他、絞りや藍のワークショップも定期的に開催している。
AiAii公式サイト

日本の工芸や伝統を継承する職人に対しての深い敬意は、本当に素晴らしいと感じる。工芸品は美しく、洗練されており、表現力豊かで多様性に富んでいる。これは日本が誇るべき伝統だと感じている。「AiAii」では、藍の栽培から葉の収穫、乾燥、発酵を経て、その天然染料を用いてアートワークや製品作りを行っている。外国(イギリス)から来た私が、日本語で「藍染め」と呼ばれる伝統技術に深く関わりながら、日本の、特に「藍染め」の経験を通じて得た、日本の工芸文化についてのいくつかの考察や感想を述べたい。

日本の伝統工芸の根底にあるのは、自然や天然素材との結びつきだ。手漉きの和紙や竹籠作り、陶芸、木工に至るまで、自然の中にある良質な原材料が伝統工芸の重要な出発点となる。私にとって、藍を種から育てることはとても特別な経験である。農業や発酵のプロセスには大変な労力と時間を要するが、染色の際には化学染料では得られない価値を見出すことができるからだ。
藍の葉が生い茂る畑
藍の葉が生い茂る畑
藍染刺し子ダーニングセット
藍染刺し子ダーニングセット
ファストファッションは多くの人に、「洋服は短いサイクルで大量生産されるもので、安価であるべきだ」と思わせてしまう。それは地球にとっても労働者にとっても問題であり、美や職人技、文化を失うリスクを伴う。ファッションは人間の重要な表現の形で、独自性(アイデンティティ)に対する喜びと意義をもたらすものだ。気候変動や過剰消費といった世界的な問題に真剣に取り組む必要があるが、その解決策は伝統工芸や生活様式の中に見つけることが可能であり、さらに重要なのは、服を選ぶ楽しみを忘れないことである。

「AiAii」では、昔の世代と同じように、古い衣類を染め直したり、修繕したりすることを推奨し、長く使えるよう工夫している。また、人々がゆっくりと時間をかけ、擦り切れた服に愛着を持ち、縫い直して修復できるよう、「藍染刺し子ダーニングセット」を販売している。ダーニング(繕い)の文化は世界中に存在していたはずだが、1、2世代の間に失われてしまったため、今私たちは再び学び直す必要がある。日本では、衣類や陶器に美しさを加える方法として、刺し子や襤褸(ぼろ)、金継ぎといった修繕技術が知られている。これらの手工芸は、かつては日本特有の習わしだったが、今ではオンラインを通じて誰もが知ることができるようになり、世界中で人気を集めている。ちなみに、「しぼり」と「金継ぎ」は2024年にオックスフォード英語辞典に追加された。
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