私が初めて日本の工芸品と出会ったのは、2019年に交換留学生として広島市立大学を訪れたときでした。授業を通じて知った職人たちの献身的な姿勢と正確さに深く感銘を受け、この分野についてもっと学びたいと思うようになりました。
それ以来、高い技術と知識を必要とする伝統工芸に従事する職人たちに深い敬意を抱くようになりました。テキスタイルデザイナーとして、特に織物に強い関心を持つ私は、2023年の秋、日本の着物文化に根ざしたテキスタイル技法を学ぶために再び日本を訪れました。
2024年の春、福岡県八女市にある久留米絣の織元、
下川織物に約1ヶ月間滞在し、久留米絣の製作工程を学ぶ機会を得ました。久留米絣の製作工程は非常に複雑で時間がかかります。機械織りの場合、合計で約30の工程があり、完成までに少なくとも2~3ヶ月を要します。 この地域の織物は200年以上の歴史を持ち、何世代にもわたって受け継がれてきました。
絣模様は経糸と緯糸の糸を括り止めることで表現されます。その後、括られた糸は何度も藍で染められ、手織りされていきます。この伝統的な生産方法は1957年に「重要無形文化財」として認定され、現在も久留米周辺の複数の工房で続けられています。久留米絣の特徴的のひとつは、機械織りと手織りが共存し、互いに協力しながら支え合っている点です。
1948年に創業した下川織物は、力織機や機械による経糸・緯糸の結い取り機を使用して久留米絣を生産する織元のひとつです。 これらの技術を生産工程に導入することで、現代的な商品を低コストで生産しながら市場で競争力を維持することが可能になりました。しかし、作業工程全体に膨大な時間と労力が必要であることに変わりはありません。
たとえば、力織機を使用する場合でも、職人は細心の注意を払いながら監視しなければなりません。経糸と緯糸の張力を均一に保つことが重要であり、熟練した職人は竹の棒をどこに差し込めば張力を調整できるかを熟知しています。特に久留米絣では二重の絣模様を織っているため、この作業はとても複雑です。私は工房で職人たちの仕事ぶりを見学し、その高い技術力に深く感銘を受けました。