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「オールデンに一番似合うジーンズ」と評されたアナトミカ「618オリジナル」が洒落者たちを魅了する理由
ゴールドラッシュに沸く19世紀のカリフォルニアで、鉱山で働くワーカーたちのために作られたジーンズ。それから約1世紀をかけて、作業用パンツだったジーンズはファッションアイテムへと昇華していく。
その過程において、「ANATOMICA(アナトミカ)」の「618オリジナル」が果たした功績は大きい。
2007年の発売以来、黄金比を持つシルエットと作り込まれたディテールの数々は洒落者たちの心を魅了し続けている。武骨さとエレガントさをあわせ持つこのジーンズは、一度はけば離れられなくなるという。
618オリジナルの誕生秘話を、サーティーファイブサマーズのプレス、信岡淳さんが語り尽くす。
PROFILE

信岡 淳(のぶおか じゅん)
サーティーファイブサマーズ プレス
サーティーファイブサマーズで、「アナトミカ」や「ロッキーマウンテン フェザーベッド」「ワクワ」「ビッグ ヤンク」などのPRを担当。同社はアナトミカとパートナーシップを結んでおり、ものづくりに加え、世界へ向けて卸売りと小売販売も行っている。
ブランドの起源はパリのカリスマ的ショップ

このモデルが誕生したきっかけは?
618オリジナルは2人の男の出会いによって誕生しました。ひとりはピエール・フルニエさんです。

彼はパリ・レアール地区にあった現代のセレクトショップの先駆けとされる「GLOBE(グローブ)」、そしてパリの16区にあった「HEMISPHERE(エミスフェール)」のバイヤーとして活躍した後、1994年に4区に「ANATOMICA(アナトミカ)」をオープンしました。
独自の感性で、その地域や民族でしか生み出せないオリジナルに注目し、数々の本物を世に送り出してきたアパレル業界の伝説的人物です。
もうひとりは弊社の代表を務める寺本欣児です。

寺本は1989年にサーティーファイブサマーズを設立し、ロッキーマウンテン フェザーベッドやビッグ ヤンクのプロデュースを手がけるほか、アナトミカのデザイナーとしても活動してます。
ヴィンテージコレクターとして有名で、コレクターとしての知識がピエールさんの知識と近い位置で成り立つ存在です。
1本のデニムパンツが、2人の洒落者を結び付けた
お2人の出会いは?
2006年にロッキーマウンテン フェザーベッドをパリの合同展に出展したとき、寺本がピエールさんに会いに行ったんです。そのときピエールさんが、「それ、おもしろいな」と、寺本のはいていたパンツに目を留めたんです。それは寺本が手がける「Der SAMMLER (ディアザムラー)」というブランドのもので、U.S.NAVYのワークパンツから着想を得たサイドシームのないデニムパンツでした。
その頃、ピエールさんはANATOMICAを作成するために、ヨーロッパの忘れ去られてくヴィンテージの状況に注目していました。そのため、当時はアメリカンヴィンテージにそれほどしっかりと目を向けていなかったのかもしれません。
そのジーンズには強い衝撃を受けたようで、「ANATOMICAのジーンズを作ってみないか?」という提案をもらったんです。
ピエールさんと寺本さんの合作だったんですね。どのように開発したんですか?
寺本が作ったサンプルをピエールさんにチェックしてもらい、修正していくというかたちでした。自身を“デビル・オブ・ディテール”というだけあって、ピエールさんはミリ単位でステッチの位置やパターンの修正を求めてきました。
数え切れないくらいサンプルを修正しましたが、終わりが見えなくて、「製品化は難しいんじゃないか……」と思ったことも。
ただ、寺本にとって、ピエールさんは若い頃からずっと憧れの存在だったんです。
なので、スタッフも工場サイドも妥協することなく、そのリクエストに応え続けました。完成までに15ヶ月ほどかかりましたが、そのかいあって、今まで見たことのないジーンズが出来上がりました。
ピエールさんとしても会心の出来栄えだったようで、パリのアナトミカだけで、600本ものオーダーをもらったのを覚えています。
モデル名の由来は古代ギリシャで生まれた黄金比から
モデル名はピエールさんがつけたのですか?
完成まであとわずかという時期に、2人が話し合って決めました。ピエールさんはこのモデルのシルエットを作り上げるのに、黄金比のように美しいジーンズを目指しました。
黄金比とはパルテノン神殿やピラミッドなどにも見られるもので、その近似値である1:1.618からつけられています。

両サイドにシームがないんですね。
このモデルの最大の特徴です。ピエールさんの目に留まった寺本のデニムパンツに由来するディテールで、サイドにつなぎ目がないことで、脚のラインがよりシャープに見え、かつ真っすぐなラインが強調されるというメリットがあります。もちろん、縫い代が肌に当たらないため、はき心地のよさにもつながります。
ピエール流のクラシックを体現する股上深めのスリムストレート
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シルエットの特徴を教えてください。
全体的には股上が深めにとられたスリムストレート。太すぎず、かといって細すぎない、武骨さとエレガントさの絶妙なバランスを実現しています。デニム生地はオリジナルですか?
はい。このモデル用に開発した16オンスの生地を使用しています。左綾にこだわったのは、昔のジーンズへのオマージュです。

また、ステッチに使用する糸は、真ん中がポリエステルで、その周囲をコットンでコーティングしたもの。
綿糸ならではの雰囲気のよさとポリエステル糸ならではの強度を兼ねそなえた特別な糸です。

ディテールにもこだわりを感じます。
ブランドの頭文字がデザインされたレザーパッチも縦と横の比率が黄金比になっています。レザーだと洗濯や乾燥で縮みや変色が起こりますが、このモデルのパッチはあらかじめ洗いをかけることで、できるだけ縮みや色の変化が出ないように工夫しています。
バックポケットに施されているのは、1930年~1960年代のヴィンテージジーンズに見られる隠しリベットです。

ミシンのカン止めでポケットを固定できなかった当時は、バックポケットをリベットで固定していました。
当時馬に乗る際に、リベットで馬の鞍を傷つけないよう丁寧に覆い隠したことでこう呼ばれます。はき続けるにつれ、だんだんリベットのアタリが出てきます。
目につきにくいですが、バックポケットの内側にはユニオンチケットと呼ばれるタグが縫い付けられています。これは当時、労働組合などに加盟していることを証明するためのチケットを再現したものです。
「オールデンに一番似合うジーンズ」と呼ばれて
合わせるスタイリングは?
Tシャツやスウェットでラフに着こなすのもいいですが、ジャケットやブレザーといったきれいめのスタイリングとも相性がいいですね。合わせるシューズは、革靴がおすすめです。
特にピエールさんがパリのお店でオールデンのモディファイドラストを別注していた経緯もあり、発売当初から、ファッション雑誌で「オールデンに一番似合うジーンズ」として紹介されてきました。
武骨さと上品さが同居したジーンズは、たしかにトラッドなシューズと相性がいいと思います。
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アナトミカにとって、このジーンズはどんな存在ですか?
シルエットから生地、ディテールに至るまで、ピエールさんと寺本の美意識が凝縮されたアナトミカの最高傑作のひとつだと思います。アナトミカとサーティーファイブサマーズはこのジーンズをきっかけにパートナーシップを結び、さまざまなヒット作を生み出してきました。そういった意味でも、このジーンズは記念碑的なアイテムです。
余談ですが、ピエールさんも寺本もウエストサイズが33なんです。なので、このモデルを開発するときも、日本で作ったサンプルを寺本がはいてチェックし、またそれをパリでピエールさんがはいて修正していました(笑)。2人の絆が感じられるエピソードですよね。
発売から18年が経っても、まったく古さを感じさせないことが、このモデルの完成度の高さを物語る。黄金比を持つアナトミカの618オリジナルは、時代やトレンドを超越するのだ。
Text by Ryota Osujo








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