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【日本未上陸】レバノン発「Andrea Wazen(アンドレア・ワゼン)」、現代フェミニニティを体現するシューズの魅力
レースの繊細さと建築的なライン。ロマンティックなムードと芯のある強さ。「Andrea Wazen(アンドレア・ワゼン)」が手がけるシューズには、相反する美しさが違和感なく共存している。
ベイルートで育まれた感性を礎に、パリで学び、ロンドンで経験を積み、イタリアの職人技によって完成する一足。そのクリエイションは、現代を生きる女性たちに足元から自信をもたらす存在だ。設立者兼デザイナーのアンドレアに、その美学とものづくりの哲学、そしてブランドが描く未来について話を聞いた。
PROFILE

Andrea Wazen(アンドレア・ワゼン)
ブランド設立者兼デザイナー
儚さのなかに宿る、確かな強さ
パリで学び、ロンドンで経験を積み、イタリアで形にする。そしてその原点には、レバノン・ベイルートの光と影がある。「Andrea Wazen」が生み出すシューズには、複数の都市と感性が幾重にも折り重なっている。
彼女のシューズを初めて目にしたとき、多くの人はまずその繊細さに惹かれるだろう。レースやチュール、透け感のある素材。花弁のようにカットされたアッパーや、足を包み込む華奢なストラップ。ときに足元に浮かぶようなヌードトーンのサンダルや、繊細なメッシュで構成されたパンプスは、まるで素肌の延長であるかのような軽やかさを持つ。

しかしその印象はすぐに更新される。そこには優美な甘さだけでなく、明確な構造と意志が存在しているからだ。鋭くカットされたトゥ、緻密に計算されたヒールの高さ、安定感を支えるストラップ配置。儚さのなかに強さが宿るこの二面性こそが、「Andrea Wazen」の世界観の核である。
「私にとってフェミニニティは、決して脆いものではありません。むしろ、力強いものです」
その言葉の通り、彼女のデザインは柔らかさと強さを同時に成立させる。ロマンティックでありながらエッジィ。ソフトでありながらストロング。その緊張関係にこそ、彼女は魅了され続けてきた。
ベイルートで育んだ、美しさのコントラスト
「Andrea Wazen」の美意識を語るうえで、ベイルートの存在は欠かせない。彼女はその土地を、「荒々しさと美しさ、混沌と優雅さが共存する場所」と表現する。地中海の光に照らされた街並みと、歴史の傷跡を抱えながらも装うことをやめない人々。そこには、単なるラグジュアリーとは異なる、切実で力強い美意識がある。
「コントラストに富んだ環境のなかで、感情と結びついた生きた美しさを感じるようになりました。レースや柔らかな質感、フローラルな要素への関心は、今のデザインにもつながっています」

ただし、それは単なる再現ではない。彼女の手にかかると、繊細な要素は現代的な構造と結びつき、新たな意味を持つ。装飾としてではなく、今を生きる女性のための表現という役割が与えられるのだ。
「レバノンの美しさは大胆でフェミニン、そして表現力に富んでいます。官能性と強さ、どちらも失わない。その姿勢が、私のデザインにも反映されています」

クチュールの感性を足元へ
幼い頃から、ファッションは自然な自己表現の手段だったというアンドレア。なかでもシューズに惹かれたのは、それが構築性と繊細さを同時に宿す存在だったからだ。チュールやレースといった儚い素材を、身体とともに動く立体へと昇華できる点に、シューズならではの魅力を見出した。パリのIstituto Marangoni(イスティトゥート・マランゴーニ)で学び、その後ロンドンへ。Christian Louboutin(クリスチャン ルブタン)などのメゾンで経験を重ねるなかで、彼女は造形美だけでなく、職人技や精密さ、そしてシューズの持つ“履くことで感情を変えられる力”を学んだ。

その経験に基づいて立ち上げたブランドでは、シューズは単なるアクセサリーという位置づけではない。「クチュールピースと同等の、感情価値を持つもの」として捉えられている。
実際、彼女のシューズにはその思想が色濃く表れている。たとえば、足首を細く見せる繊細なストラップサンダルや、ポインテッドトゥのシャープなパンプスは、履いた瞬間に姿勢や所作を変える力を持つ。視線が上がり、背筋が伸びる。そうした微細な変化をもたらすものこそが、彼女の考えるラグジュアリーだ。

「女性が自然体のまま少し高揚し、自信を持てるような靴をつくりたい。シューズは感情やアイデンティティを表現するものだから」
現在その思想は、彼女が“エモーショナル・ラグジュアリー”と呼ぶ概念へと進化している。
品質面においても妥協はない。生産はイタリアで行われ、熟練の職人たちと密に連携しながら、繊細なビジョンが形になる。レースの強度をどう確保するか。チュールの軽やかさをどう構造化するか。華奢なストラップでいかに安定性を担保するか。こうした課題に対し、彼女は一つひとつ丁寧に答えを出してきた。

エレガンスと快適さは対立するものではない。むしろ快適であるからこそ、美しさは成立する。彼女はそう考えている。
その思想は、現代のラグジュアリー観とも響き合う。誇示するためではなく、内側から満たされるための美しさ。長く愛される完成度。その価値が、支持を広げている理由だ。
シューズの先にある世界
欧米を中心に認知を広げる「Andrea Wazen」。その未来について、アンドレアは「現代的フェミニニティの総合的な表現」へと広がっていくと語る。アクセサリーや新カテゴリーへの展開も視野に入れつつ、ブランドの核は変わらない。
「感情に満ち、洗練され、タイムレスであること。そしてクラフツマンシップに忠実であること。フェミニニティは、ロマンティックでありながらエッジィで、柔らかくありながら強いものです」

不確かな時代において、矛盾を抱えたまま美しく在ること。それは一つの知性でもある。
「Andrea Wazen」のシューズは、その知性を足元から支えてくれる。華奢なヒールの先にあるのは単なる装飾ではない。そこには、現代を生きる女性の歩みを軽やかにし、彼女たちにしなやかな自信を与える力が宿っている。
Text by ELIE INOUE











