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雨の日も蒸れにくく、革靴のように履ける!高機能ニットシューズ「ACTHREAD(アクスレッド)」の実力
近年、ビジネスウエアのカジュアル化が進み、スーツやセットアップにスニーカーを合わせるスタイルも定着しつつある。だが、職場や商談の場によっては「スニーカーではカジュアルすぎる」と感じる人も少なくない。とはいえ革靴には蒸れや重さ、硬さ、雨天時の扱いにくさといった課題がある。こうした相反するニーズに応えたのが、高機能ニットシューズ「ACTHREAD(アクスレッド)」だ。
開発に携わったZ&Kトレーディング株式会社 マーチャンダイザーの山口 智さんに、撥水性と通気性を両立するニットの仕組みや、シューズとして成立させるための設計、新作「RIPPLE(リップル)」と「SYMBOL(シンボル)」について話を聞いた。
革靴の課題を、ニット素材で解決する
多くのビジネスパーソンが日常的に抱える革靴への不満を「素材の力で解決する」。その着想から生まれたのが、撥水ニットをアッパーに用いた「ACTHREAD(アクスレッド)」だ。「『ビジネスシーンを足元から変えていく』をコンセプトに、ACTHREADはスタートしました。ビジネスシーンで履かれる革靴には蒸れる、重い、硬い、雨の日に気を使うといったストレスがあります。そうした課題を素材の力で解決しようと考えたのが始まりです」
目指したのは、革靴のフォーマルさとスニーカーの快適さを併せ持つ一足。革靴に近い外観を目指すのであれば、合成皮革などを用いる方法もある。しかしACTHREADが選んだのは、柔らかさと軽さを備え、通気性にも優れたニットだった。

一般的にニットは空隙があるため空気を通しやすく、その柔らかさから足の動きにも追従しやすい。その反面、水が入り込みやすく、形状を保ちにくい。また、編み地ならではの柔らかな表情は、つくりによってはカジュアルに見えすぎてしまう。
ニットの利点を残したまま、雨天時にも使える撥水性と、ビジネススタイルに対応できる端正なシルエットをどう実現するか。開発は、糸と編み組織の設計から始まった。
水を弾きながら、空気は通す。相反する機能を生む「糸」と「編み」
「たとえば、生地を厚くすれば撥水性は高くなりますが、通気性は悪くなってしまう。梅雨時期にも履ける撥水性を担保しながら、夏場も蒸れずに快適に履ける靴を目指しました」
そのために採用したのが、糸の状態で撥水加工を行い、その糸を編み上げる方法だ。表面に防水剤を塗布する後加工とは異なり、糸そのものが水や汚れを弾き、水滴は表面張力によって編み地の表面にとどまる。同時に糸と糸の間には空気の通り道を残せる。
ただし、撥水加工をした糸を使えば、それだけで性能が成立するわけではない。
「編み目が粗ければ水が入り込み、反対に詰めすぎると通気性が損なわれて生地も硬くなります。ニットらしい表情を生かせる糸の番手(太さ)や編み地を検討し、最適なバランスを出すのには苦労しました」
そうして完成したニット素材は、水深4cmの水に4時間浸しても内部への浸水を抑える性能を確認した。さらに、第三者機関によるJIS L 1092のスプレー試験では、5段階評価で上から2番目となる撥水性「4級」を取得している。洗濯後も同等の撥水性を維持したほか、寸法変化率も縦・横ともに0%だった。
一枚のニットで硬さと伸縮性をつくり分ける
ニットを靴に用いる際には、水への対策だけでなく、形状をいかに安定させるかも課題になる。足当たりの柔らかさや伸縮性はニットの長所だが、アッパー全体が伸縮するようでは、歩行時に足が靴の中で動きやすくなり、シルエットも崩れやすい。「そこでアッパーには、熱を加えることで融着し、編み地にハリを与える『ホットメルト糸』を編み込みました。足入れの際に伸びてほしい履き口には伸縮性を持たせつつ、甲の部分は伸びを抑える。糸の種類と編み方を部位ごとに切り替えることで、一枚のニットアッパーの中で異なる硬さと伸縮性をつくり分けています」

アッパー以外のパーツとの接合にも、撥水素材ならではの難しさがあった。つま先など擦れやすい部分には、耐久性を補うTPU(熱可塑性ポリウレタン)パーツが必要になる。しかし、水や汚れを弾く素材は、接着剤もなじみにくい。
「擦れやすいつま先部分は別素材で保護する必要がありますが、撥水処理をしたニットは接着がしにくいのです。さまざまな接着剤や接着方法を試し、ようやく納得できる状態にたどり着きました」
インソールには、人間工学に基づいて設計された独自の「レジリセルインソール」を採用した。ウレタンフォームが着地時の衝撃を吸収し、足裏のアーチを支える。

その下の中底には中反発素材を組み合わせ、沈み込みすぎないように調整した。柔らかな足当たりと、歩行時に足を支える反発性を合わせることで、長時間歩いても安定感のある快適な構造を目指している。
「RIPPLE」と「SYMBOL」に見る新たな設計
ACTHREADは当初、革靴の端正さとスニーカーの快適さの中間に位置するビジネスシューズを中心に展開してきた。とりわけ夏場は、革靴の蒸れに悩むユーザーからの反響が大きく、複数足を買い足すリピーターも少なくなかったという。そうした支持の広がりを受けて開発されたのが、RIPPLEとSYMBOLである。「ブランド創設当初は、革靴とスニーカーの中間に位置するようなアイテムをイメージしていましたが、スニーカーが欲しいというお声もあったため、今回の2モデルの発売に至りました。とはいえ、やはりビジネスシーンでも履いていただけるよう、カジュアルになりすぎないデザインを心がけています」
RIPPLEは、水面に広がる波紋のモチーフを甲の部分にあしらったスリッポンモデルだ。シューレースを省いた構造に加え、甲部分にのみ伸縮性の高いニットを配置した。足を包み込むフィット感と、スムーズな着脱を両立させている。

一方のSYMBOLは、ACTHREADのロゴマークをデザインの核に据えたシグネチャーモデルだ。ミリタリー由来の機能美を現代的なスニーカーへ落とし込み、シューレースにはクイックレースシステムを採用した。コードを引くだけで締め具合を細かく調整でき、足全体を均一にフィットさせやすい。
さらにタウンユースに加え、ゴルフでの使用も想定したノンスパイクソールを採用している。

カジュアルになりすぎない印象をつくるうえで、重要になったのがTPUパーツの質感だった。TPUは補強や形状保持のための機能部品だが、表面が均質で光沢が強すぎると、ニットアッパーからは浮いて見えてしまう。
「パーツが安っぽく見えないよう、革の毛穴を模した細かなシボ柄である『ケシボ』を施しています。艶の有無やパーツの厚みなど、わずかな違いでも見え方が変わるため、サンプルを何度も作りながら調整しました」
素材の違いを消すのではなく、質感の粒度をそろえて一足の中で自然になじませることで、機能性シューズ特有の無骨さを抑え、オン・オフの双方で履ける佇まいが実現した。
糸の段階で撥水加工を施し、編み組織を調整することで、水を弾きながら空気を通す。さらに、ホットメルト糸やTPUパーツを組み合わせることで、ニットの柔らかさを生かしながらシューズに必要な形状保持や耐久性も補っている。「ACTHREAD」は、ニットならではの通気性や軽さと、雨天時にも使いやすい撥水性、ビジネスシーンにもなじむ外観を一足に落とし込んだシューズなのだ。
PROFILE
山口 智(やまぐち さとし)
Z&Kトレーディング株式会社
マーチャンダイザー















