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汗冷えを防ぐ鍵は「着替える」ことだった! アシックスのウエア「ACTIADAPT」が追求した運動後の快適性

2026.08.15

アシックスのウエア「ACTIADAPT」が追求した運動後の快適性

アシックスが、「運動後」の快適性を追求する新アパレルカテゴリー「PERFORMANCE LIFE(パフォーマンス ライフ)」を本格始動させた。その中核を担うのが、独自開発の高機能テクノロジー「ACTIADAPT(アクティアダプト)」だ。アスリートのパフォーマンス向上で世界をリードしてきた同社は、なぜ「運動後」という新たな領域に踏み出したのか。
今回、開発を主導したマリ・ティベッツさんと脇田佑一郎さんに、その開発プロセスとモノづくりの軌跡を伺った。

PROFILE

Mari Tibbets(マリ・ティベッツ)

アシックス

ニューヨークで生まれ、日本の名古屋で育ちました。幼少期から競技テニスに打ち込み、高校進学を機に再びアメリカへ渡り、アスリートとしてのキャリアを追求し、最終的にはNCAAレベルで競技を行いました。
その後、ファッションデザインの修士号を取得し、The North Face、Alo, Fableticsなど数多くのアメリカブランドで経験を積んだ後、2015年にASICSに入社。現在は、高機能かつテクノロジーを活用したアパレルの開発に注力し、人の身体をサポートするための思慮深い商品と意義あるイノベーションの創出に取り組んでいます。

PROFILE

脇田 佑一郎(わきた ゆういちろう)

アシックス

鹿児島県出身。服飾専門学校デザイン学科卒業後、スポーツアパレルOEM企業で開発・生産業務を経験し、生地メーカーでは生地開発および製品開発に携わる。2017年にアシックスへ入社し、アパレル・アクセサリー開発を担当。2022年からは素材開発を担当し、アスリートとお客様の視点を大切にしながら、機能性と快適性を追求した素材開発に取り組んでいる。

「汗冷え」を世界共通の課題に

快適性を追求するなかで着目したのが「汗冷え」だ。運動でかいた汗が冷え、体温を奪う現象は、その後のコンディションを左右する。しかし、この課題を世界共通のコンセプトとして共有することは容易ではなかった。
「『汗冷え』は日本ではよく聞かれるものですが、ヨーロッパやアメリカにはそういった言葉もなく、感覚がまったく違います」とティベッツさん。海外のメンバーに「運動後は着替えますよね?」と尋ねると、「着替えないよ」という想定外の答えが返ってきた。
そこで開発チームが提案したのが、運動後に着替えることで快適性を高めようという発想だった。
「着替えるか着替えないかで、汗冷えするかどうかは大きく変わる。だからこの商品で、着替えるという習慣をつけてほしいと思ったのです」とティベッツさんは熱く語る。
体温調整のアプローチは国や文化によってさまざまだが、アシックスは「着替える」という明確なソリューションで、文化の壁を越えようと考えた。
運動後に「着替える」ことで汗冷えを防ぐ。「ACTIADAPTパッカブルシャツ」 9, 570円(税込)

科学が導き出した最適解の毛足

汗冷えを防ぎ、運動後の快適性を高める鍵が、「ACTIADAPT」の重要な要素の1つとなる肌表面の毛足の長さだ。長いものから短いものまでいくつものパターンを試し、度重なる試行錯誤の末にたどり着いた最適解だった。
「春夏でも秋冬でも売りたい。パッと見て暑そうとは思わせたくなく、ふわふわした雲のような感触はマスト。それをキープできる最適の長さを見つけました」と脇田さんは語る。
毛足が短すぎれば汗を処理しきれず、長すぎれば暑苦しい。この絶妙な立毛構造が汗を素早く吸収・拡散し、肌と生地の間に適度な空気層を保つ。
パッキングするとよくわかる肌面に配された立毛構造。汗を素早く吸収・拡散し、快適さを保つ
この選択を裏付けたのが、アシックススポーツ工学研究所(ISS)での検証だ。いくつもの毛足のサンプルを作製し、風合いや外観、生地物性や機能性から比較評価を行なった。その結果を踏まえて、現在の毛足を採用した生地の検証を実施し、納得のいく効果が確証された。
さらに、素材には「異形断面の中空糸」を採用した。中空構造が空気を含んで温度を調整し、異形断面が水分を素早く拡散させる。感覚的な「気持ちよさ」を、サイエンスをもって徹底的に裏付けた。

「Tシャツにしたい」──機能素材を日常着へ変えた“無茶ぶり”

「ACTIADAPT」の生地は、その特殊な構造から本来はジャケットの裏地などに使われる素材だ。しかし、その常識を覆したのが、「この生地でTシャツを作りたい」というティベッツさんの一言だった。
「Tシャツにするならハリやコシも必要だし、1枚で様になることも譲れませんでした」と脇田さんは振り返る。
この“無茶ぶり”が、機能素材を日常着として成立するプロダクトへと進化させた。試作段階では、サンプルを毎日着続けるメンバーが現れるほど着心地への評価は高かった。
一方で、その着心地は試着しなければ伝わりにくいという課題もあった。だからこそチームは、スポーツウエア特有の“ガチガチ感”を排し、誰もが日常で着たくなるシンプルなデザインを追求した。
機能素材を日常でも着られるプロダクトへと進化

他社なら3倍超。常識を覆す価格の背景にある地道な努力

高機能素材を採用した「ACTIADAPT」は、ブルゾン19,800円、Tシャツ9,570円(26年秋冬モデル)という価格を実現した。
「この生地に似たものを使った商品は他ブランドにもあるのですが、値段は3倍以上です。素晴らしい生地でも高すぎるため、多くの人が体験できていません」とティベッツさん。
「すべての人に適切なコンディショニングを広めたい」。その切実な思いから、チームはデザインを見直して生産効率を高め、サプライヤーとの交渉を重ねた。
不要な機能を省き、サプライヤーとの交渉を重ねて手に取りやすい価格を実現。「ACTIADAPTパッカブルジャケット」19,800円(税込)
「チリも積もれば、ではないですが」と脇田さん。何度も工場へ足を運び、「もう少しこのようにできないか」と交渉を続けたという。
こうした積み重ねが、高機能素材を手に取りやすい価格で届けることにつながった。

スポーツ後だけではない! 「ACTIADAPT」が支える日常の快適性

チームの思いが詰まった「ACTIADAPT」は、スポーツ後だけでなく日常にも広がるウエアに仕上がった。脇田さん自身も日常的に着用しており、夏の通勤で暑い屋外から冷房の効いた電車に乗った際、汗による背中の冷えが「だいぶマシになった」と話す。
運動後だけでなく、通勤や就寝時といった幅広いシーンで活用されている。スポーツウエアらしさを抑えたミニマルなデザインを採用し、日常でも着用しやすい一着に仕上げた結果だ。
脇田さんは、この着心地をアシックスを代表するシューズ「GEL-NIMBUS」に例える。
「フットウエアでいうNIMBUSのように、不快だったところをコンフォートゾーンに持っていけるんです」
「ACTIADAPT」シリーズは、運動後の汗冷えという課題に向き合い、素材設計と検証を重ねて生まれた一着だ。その機能は、スポーツ後に限ることなく日常でも快適性を支えている。

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