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なぜここまで柔らかいのか! ノータス「yama 1 」が示す新世代トレイルシューズ
トレイルシューズといえば、硬くて厚みのあるソールを備えたものをイメージする人も多いだろう。そんな常識を覆すのが、Notace(ノータス)の「yama 1 」(ヤマ ワン)だ。
過去に類を見ないほど軽く、柔らかいこのシューズは、どのような背景から生まれ、どう設計されたのか。ノータスを取り扱う株式会社ストライドの仲谷清志さんに、その開発の背景と設計思想を聞いた。
PROFILE
仲谷 清志(なかたに きよし)
株式会社ストライド
取締役副社長
ブランド「Notace」の責任者。トレイルランニング、スキー、登山といったアウトドアアクティビティに親しむ傍ら、体力づくりと健康管理の一環として日々のランニングを実践しています。

薄すぎるか、厚すぎるか。その二極化の間から生まれたノータス
数あるトレイルシューズの中でも、ノータスのyama 1は異質な存在だ。片足215gと軽く、曲げるとつま先とかかとがつくほど柔らかい。足入れ直後は少し不安を覚えるが、実際に履いて歩き、走ってみると印象はすぐに変わる。地面の状態はちゃんと足裏に伝わるにもかかわらず、衝撃は強すぎない。“ちょうどいい感覚”があるのだ。

この独特な履き心地は、どのような思想から生まれたのだろうか。まずはブランドの成り立ちから見ていこう。
ノータスは2025年に誕生した米国発のフットウエアブランドだ。創設者のセドリック・スコット氏は大学院でバイオメカニクスを学んだ後、ALTRA(アルトラ)やXERO SHOES(ゼロシューズ)、VIVOBAREFOOT(ビボベアフット)などで経験を積み、足の健康を考えたシューズづくりを追求してきた。

「ブランドが掲げるのは、ベアフットでも、従来の厚底シューズでもない、自然な足の動作を実現する一足です」
その出発点にあったのは現代のシューズ市場への違和感だった。
「市場は大きく、極端に薄いベアフット系と、厚いミッドソールでクッション性や推進力を打ち出した厚底系に分かれています。前者は地面の感覚を得やすい一方で、人によっては衝撃が強すぎることがある。後者は快適さや保護性に優れる反面、足本来の動きや感覚を靴の機能が肩代わりしすぎる側面もあります」
薄すぎるか、厚すぎるか。その二極化の間にある選択肢として生まれたのがノータスであり、その思想を形にしたファーストモデルがyama 1なのだ。
足の感覚を犠牲にしない厚さ15.5mmのソール
「地面を感じるけれど、衝撃は強すぎない」。その絶妙なバランスを支えているのが、15.5mmというスタックハイト(ソールの厚み)だ。
「地面からの情報をきちんと受け取れる感覚を残しながら、小石や突き上げのような強い刺激は抑える。その両立を探った結果が15.5mmでした。薄すぎれば、足裏への刺激が強すぎて、不自然な動きを招くこともある。逆に厚すぎれば、地面の感覚が遠のいて、足本来の働きも引き出しにくくなります」
つまりこの15.5mmは、地面の感覚のキャッチとプロテクション、その両方を成立させるスイートスポットとして導かれた厚みということだ。
そしてこの絶妙な厚みのソールとそこに加えた特別な仕掛けは柔軟性にもつながっている。実際、yama 1はトレイルモデルとは思えないほどしなやかに曲がる。必要なクッション性を持ちながら、ここまで足の動きに追従する柔らかさを成立させている点こそ、このモデルの大きな個性だ。
「ただし、柔らかくした目的はコンフォート性ではありません。あくまで足を動かしやすくし、足本来の機能をきちんと使えるようにするためです。足の動きは前後だけでなく、左右へのブレやねじれも含めて極めて複雑です。
ソールが硬すぎると、そうした細かな動きに靴が追従できず、足指やアーチに備わる本来の衝撃吸収や反発の働きも生かしにくくなります。だからこそこのモデルは、足の動きを妨げない柔軟性を重視しているんです」

ゼロドロップ構造、フットシェイプ、3mmラグが叶える自然な足の動き
足本来の機能を引き出すうえで、柔軟性と並ぶ重要な要素がゼロドロップ構造である。「これはつま先とかかとの高低差をなくした設計のことです。こうすることで足裏全体で地面に立てるようになるため、自然な姿勢を保つことができ、足の機能を引き出しやすくなります。また、ケガの予防にもつながります」

足指を広げやすい設計もポイントだ。足先を細く絞った一般的なシューズでは、指が縮こまりやすく、足裏や足指を十分に使いにくい。そこで5本の指が自然に広がるフットシェイプ設計を採ることで、地面を捉える感覚を高めている。

さらに微細な気泡構造を持つ次世代eTPU(イーティーピーユー)のミッドソールが反発性と衝撃吸収性、軽さ、耐久性を実現する。さらにアウトソールに刻まれた3mmラグにも意味がある。
「深すぎず、かといって浅すぎないラグは、登り・平坦・下りのすべてでバランスよく機能し、トレイルだけでなく、都市でのランニングやウォーキングにも対応できます」

柔らかさの先にあるのは「足を鈍らせない」という明確な思想
ユーザーの反応からも、この靴の特徴が見えてくる。「『地面を感じるのに、足が守られている安心感がある』『足指が広がる感覚が新鮮』という声をいただいています。足裏や足指を自然に使えている感覚が、そのまま心地よさにつながっているようです」
もっとも、厚底や傾斜の強いシューズに慣れている人ほど、最初は地面の近さに戸惑うかもしれない。履き始めは短いウォーキングから入って、身体の反応を確かめながら、徐々に距離を伸ばしていくのがいいだろう。

厚底でも、ベアフットでもない。yama 1は、その間にある新しい選択肢を形にした一足だ。足を守りながら、足を鈍らせない。その思想は、トレイルシューズの新たな基準になり得るものだ。
Text by Ryota Osujo


















