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14年の試行錯誤から生まれた「Shamma Sandals(シャマ サンダル)」走れるサンダルを支える独自構造とは?
カリフォルニア州サンタクルーズで生まれたミニマル・アウトドアサンダルブランド「Shamma Sandals(シャマ サンダル)」。
創業者のJosh Stiles氏は、スポーツに親しむなかで走ることに目覚め、14年にわたる試行錯誤を重ねながら理想のサンダルを追求してきた。
今回は、Hatchet Outdoor Supply Japan代表の小松 洋平氏に、ブランド誕生の背景と、Shamma Sandalsのものづくりについて話を聞いた。
5本指シューズとの出会いから始まったサンダル開発
Shamma Sandalsの創業者Josh Stiles氏は生粋のスポーツ好きだ。しかし、彼が愛したのはサッカーや野球といった球技であり、純粋に長距離を走るランニングには縁がなかった。友人からは、「ボールがないと走らない男」と茶化されるほどだったという。そんな彼に大きな転機が訪れたのは2010年のこと。スローピッチソフトボールの試合で、Vibramの5本指シューズを履いた選手が驚くべきパフォーマンスを発揮しているのを目の当たりにする。これをきっかけにJosh氏は従来のフットウエアの常識を疑い、スポーツにおける足の本来の機能やケアの重要性を強く意識し始めた。
Hatchet Outdoor Supply Japan代表の小松 洋平氏はそれについてこう語る。
「この出来事をきっかけに、従来のフットウエアに抱いていたものとは違う考え方や、スポーツにおける足のケアの重要性を意識するようになったとJosh氏は語っています。そこから、ミニマリスト用のフットウエアを自分でもつくってみたいと考えるようになったのが、Shamma Sandalsの誕生につながる契機になったといえるでしょう」
同時期に、自身の体型の変化をきっかけに週30マイル以上走ることを習慣にしたJosh氏。走るという行為が初めて自分事になったことで、「自分が快適に走れるサンダルをつくりたい」という思いは、具体的な行動へと変わっていった。

ゴムシートとパラコードで始まったガレージでの試作
Josh氏のサンダル開発は、父親と車を整備していたガレージで始まった。もともと手先が器用だった彼は、水道局で働く義父が調達してくれた補修用のゴムシートと、YouTubeで見つけたガイドを参考に、最初のプロトタイプを組み上げた。ストラップにはアウトドアなどで幅広く使われるパラコードを使った、まさに手づくりのサンダルだったが、その性能は惨憺たるものだったという。
「どうすれば本当に走れるサンダルになるのか」。この問いが、ここから始まる長い試行錯誤の出発点となった。機能的なランニングサンダルへの道は、決して平坦ではなかったのだ。
14マイルの走行で確信した「走れるサンダル」の可能性
手探りの開発が続くある日、Josh氏は他社製のランニングサンダルと出会う。伸縮性のあるストラップとレザーのフットベッドを持つそのサンダルを履き、彼はカリフォルニアのレイク タホへと走りに出た。結果、14マイル(約22.5km)もの距離を何の問題もなく走破。この体験は、Josh氏に「サンダルでもこれだけ走れる」という大きな可能性を感じさせた。同時に、そのサンダルにも耐久性や性能面でまだ改良の余地があることを感じていた。
この成功体験は、彼が理想とするサンダルの開発に本格的にのめり込むための決定的な起爆剤となり、成功への可能性の光が見えた瞬間となった。

14年の試行錯誤が生んだ「ELITE Lacing System」
現在のShamma Sandalsの形にたどり着くまでに、実に14年もの歳月が費やされている。初期モデルでは30マイルほど走ると鼻緒の結び目が外れることもあった。そのたびにJosh氏は縫製を見直し、より良い素材を探し、ついにはバックルをDURAFLEX(デュラフレックス)社と共同開発するに至った。「Shamma Sandalsの特徴的なストラップやバックルは、単にデザインとして生まれたものではありません。Josh氏自身が実際に走り、問題が起きるたびに改良していった結果として現在の形があります」
小松氏が語るように、製品のあらゆるディテールが、実地でのテストと改良の積み重ねから生まれている。その集大成が、ブランドの心臓部ともいえる「ELITE Lacing System」だ。
このシステムは、DURAFLEX社と共同開発したオリジナルバックルが肝となる。
インソールポストにかかるテンションに応じてストラップ位置を微調整でき、足の甲への圧迫を軽減する。さらに、ストラップにはカメラグリップから着想を得た滑りにくいウェビング生地を、肌に触れる部分には東レのウルトラスエードを採用。左右、前後、そしてバックルとポストの間という3Dでの調整を可能にし、あらゆる足の形にフィットする構造を、長年の探求の末に完成させたのだ。




家族とのアウトドアから生まれた「ELITE IBEX」
Shamma Sandalsのプロダクトには、創業者Josh氏のライフスタイルが色濃く反映されている。妻と4人の娘、愛犬とともに、ハイキングやキャンプ、バックパッキングを楽しむ日々を送っている。ブランドが生まれたカリフォルニア州サンタクルーズは、山と海に囲まれた自然豊かな土地だ。Josh氏がこの穏やかな環境と家族との時間を大切にしていることは、現地を訪れた小松氏も強く感じたという。
「Shamma Sandalsには、単に走るためだけではなく、自然の中で自由に身体を動かし、日常そのものを楽しむというJosh氏のライフスタイルが反映されていると思います」
その哲学を象徴するのが、ラグ付きソールを採用した「ELITE IBEX」モデルだ。このモデルは、Josh氏一家が家の裏にあるクリーク(小川)を探索するなかで、ぬれた岩場でも滑らずに安心して歩けるサンダルが欲しい、という切実なニーズから生まれた。
タフな環境下でのグリップ力と、足の自然な動きを妨げない柔軟性。この二律背反する要素を両立させたIBEXは、Shamma Sandalsの思想をより過酷なフィールドへと拡張したモデルといえる。




ランニングから日常まで、用途を限定しないサンダル
ランニングやトレイルでの高い性能を誇る一方で、Shamma Sandalsは特定の用途にユーザーを縛り付けない。「一つのスタイルに固執しないこと」こそが、ブランドの哲学なのだ。その哲学は、多様なコミュニティに受け入れられている現状にも表れている。ランナーやハイカーはもちろん、育児に励む親、あるいはトレーニング後に普段履きとして履き替えるウェイトリフティングの愛好家まで、その裾野は広がり続けている。
トレイルで信頼できる性能を持ちながら、街の景色にも溶け込む洗練されたデザイン。専門的なアウトドアギア特有の「構え」を必要とさせない親しみやすさが、Shamma Sandalsを唯一無二の存在にしている。ユーザーはブランドから使い方を規定されるのではなく、自らのライフスタイルに合わせて自由にその価値を発見していくのだ。
Shamma Sandalsは、トレイルでの性能だけが魅力のブランドではない。アウトドアでのアクティビティと日常生活をシームレスにつなぎ、履く人のスタイルに寄り添う懐の深さを持つ。
「ぜひ実際に足を通して、Shamma Sandalsならではの履き心地を体験してみてください」と小松氏は語る。
さらに今年から自社オリジナルソールの開発や、USハンドメイドのシンボルとして、正規品にはアメリカ国旗のタグを付けるなど本格的にリブランディングの取り組みを開始したという
そのシンプルな構造の中には、創業者Josh氏の約14年にわたる試行錯誤と、自然や家族を愛する彼のライフスタイルそのものが詰め込まれている。ブランドの真髄は、足を通してこそ感じられるのかもしれない。
PROFILE

小松 洋平(こまつ ようへい)
Hatchet Outdoor Supply Japan 代表
かつて繊維商社で働いた際にアメリカ駐在を経験し、いくつものフィッシング、アウトドア関連の日本ブランドのアメリカ立ち上げに従事。トレイルやキャンプサイトが身近にあるアメリカのアウトドアカルチャーを目の当たりにして自然と遊ぶ楽しさに目覚め、日常使いができるアウトドア用品を個人的に集めるようになる。帰国後、いくつかの商社での勤務を経てアメリカ時代に顧客であったHatchet Outdoor Supplyとパートナーシップを締結。日本ブランドのアメリカ向け輸出サポートやネットワークを生かし、アメリカのオーセンティックなブランドの輸入、販売を手掛けている。














