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日本人40万人の足型データから生まれたTENTIAL「リカバリーサンダル プロ」 歩きやすさを追求した新設計
リカバリーウエア『BAKUNE』で知られるTENTIALが、日本人40万人の足型データに基づき開発した『リカバリーサンダル プロ』を発売した。従来の“柔らかさ中心”の設計を見直し、「歩きやすさ」という新たな軸を打ち出した本商品の開発背景から、日本人の足の特徴、そしてリカバリーサンダルの現在地まで、株式会社TENTIAL・商品本部の守屋俊治さんとコンディショニング研究所R&D・エビデンスグループの八幡健太郎さんに話を聞いた。
PROFILE

守屋 俊治(もりや しゅんじ)
株式会社TENTIAL 商品本部 企画開発グループ
2022年TENTIAL入社。13年続けた公式テニスの経験から、日本人の足に合う高機能性リカバリーサンダルの企画開発に携わる。
PROFILE
八幡 健太郎(やはた けんたろう)
株式会社TENTIAL コンディショニング研究所R&D・エビデンスグループ北海道医学部保健学科卒業後、同大学院でリハビリテーション科学を修了。ミズノ株式会社などを経て、2025年TENTIAL入社。医療とシューズ開発で培った知識を生かし、高機能性リカバリーサンダルの研究開発に携わる。
近年、リカバリー市場は拡大を続けている。TENTIALが初めてリカバリーサンダルを発売したのは2021年夏頃のことだ。
「当時は単純に厚みがあって、柔らかければいいという考えが世間に浸透していました。もちろん弊社もしっかりと研究開発を重ねて商品を送り出しましたが、『本当に柔らかいだけでいいのか』という疑問がずっとあり、改めて設計を見直すことにしたのです」と守屋さんは語る。
人気のリカバリーサンダルの効果を考える
同社には主力商品であるリカバリーウエア『BAKUNE』がある。この商品の生地に鉱石を練り込むことで血行を促進し、疲労回復を促すというコンセプトを、サンダルにも応用できないかと考えた。「これが大失敗でした。サンダルに鉱石を練り込むことは難しかったので、磁石をソールに挟み込むことで、血行促進効果が得られるのではないかと考えたのですが、何度テストを繰り返しても、明確な優位差が出なかったんです。1年ほど改良とテストを繰り返したのですが、この方向性ではうまくいかないとリセットする判断をしました」(守屋さん)
「エビデンスのないものは世に出さない」という方針のもと、開発は大きく方向転換されることになった。
「血行促進という文脈を取り入れるのは難しいと判断したときに、改めて『体にとって良いサンダルとは何か』を考え直しました」
現在、市場には多くのリカバリーサンダルが存在するが、その定義は統一されていない。

「我々がたどり着いたのは、サンダルを履くだけで回復するというのは現実的ではないということです。そこで我々は長時間歩行時や運動後の疲労感を和らげることが、リカバリーサンダルの出発点ではないかと考えました」(八幡さん)
「先ほども触れたように、リカバリーサンダルの主流は着地時の衝撃を和らげる柔らかな履き心地です。ただ、柔らかいだけだと歩いているときにぐらつきやすく、余計な筋力を使ってしまいます。
また、サンダルを履いていてパカパカしたり、足の指にぎゅっと力を入れないと脱げそうになったりした経験はないでしょうか。こうなると筋肉に必要以上に力が入って疲れやすくなってしまいます。そこで『柔らかく』かつ『安定性があり』、歩行しやすい『フィット感』という3つの要素に行き着きました」(守屋さん)
40万人の足型からわかった日本人の足の特徴とは
そこで参考になったのが日本人40万人分の足型だった。開発チームは膨大なデータを分析し、6つの代表的な足型を割り出し、さらにそこから足幅や土踏まずの高さや踵の位置など、6つの計測項目から平均値に近い1型へと絞り込み、その形状をベースに設計を進めた。「我々は踵の位置を起点として設計しました。すると既存モデルよりも土踏まずのアーチが少し後方に位置することがわかりました。また一般的に日本人の足は幅広だと言われていて、3〜4Eのワイドタイプを履かれる方が多いのですが、結果として意外にも足幅は狭く、1〜2Eが平均的であることも判明しました。ただし、日本人の土踏まずは柔らかく、体重がかかると広がりやすい。その結果、指が靴に当たりやすく痛みが出るため、幅広だと感じるケースが多いということもわかりました」

この日本人の足の特性に対応するため、アーチサポートを踵寄りに配置し、体重がかかっても広がらないよう高めに設計した。さらに踵を包み込む形状とすることでフィット性を高めた。
開発において難しかったのが、履いたときに体感できる「柔らかさ」だったという。
「履いたときに直感的に柔らかいと感じてもらうことは非常に重要だと思っています。ただ、柔らかくするといっても限界がありますし、品質担保の観点でも制約があります。そこで柔らかい素材と硬い素材の2層式を採用しました」(八幡さん)
2層式のソールと形状で柔らかさと安定性を両立
ソールは足に接する上層に柔らかい素材、下層に硬い素材を配置。さらにアウトソールをお椀型にし、柔らかい素材が中央部で厚くなる設計とした。「踏み込んだときに中央がしっかりと沈み込むことで、柔らかさを感じられるようになっています。一方で外周は硬い素材が支えるため、踵のぶれをしっかりと支えてくれるようになっています」(守屋さん)

また、つま先はわずかに上げ、踵はフラットに設計している。これによりつまずきを防ぎつつ、安定した接地を実現し、歩きやすさへとつなげている。
研究機関の動作解析でも、体への負担の少なさ、歩行時の足関節のぐらつき、着地後の負荷の大きさに優位性があることが確認された。



柔らかさだけを追求するのではなく、歩行時の安定性まで設計する。それがTENTIALが考えたリカバリーサンダルの新しい形だ。
「従来のリカバリーサンダルは、少し歩く程度の移動や室内で使うものというイメージが強かったと思います。しかし本商品は、1〜2kmを余裕を持って快適に歩行できます」(守屋さん)
一方で、課題も残っていると2人は口を揃える。
「踵を包み込み、アーチの立体形状を生かすためには、外周をしっかりと覆う必要がありました。そのため、少しフォルムが大きくなり、その分重さも出てしまいました。
履いているとそこまで感じるものではありませんが、今後はいかに軽くできるかにも取り組んでいきたいと考えています」と語る八幡さんに対して、守屋さんは「クッション性、安定性、フィット感に対しても、まだまだアップデートの余地はあると考えています。
現在の商品に満足することなく、新しい研究やアプローチを続けていきたい」と語る。
新たな機能を備えたリカバリーサンダルは、発売からわずか約1ヶ月で追加生産に入るほど売れ行きは好調で、TENTIAL社内でも異例の反響を生んでいるという。
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「弊社はECでの展開がメインですが、シューズの場合は実際に履いてみたいと店頭に足を運ばれる方も多く、店舗スタッフからも品薄の声が届いています。顧客ロイヤルティ指標のNPS(ネット・プロモーター・スコア)も弊社の平均値より高く推移していて、評価をいただけていると感じています」(守屋さん)
今後は秋冬向けのモデルやルームシューズ、素材のバリエーションなども検討しているという。サンダルという枠にとどまらず、家の中から外出先まで、足元のコンディショニングを支える選択肢はさらに広がっていきそうだ。
「間違いなくリカバリーサンダルの認知は広がっています。一方で体にとってどのように良いのか、どんな機能が備わっているのかをきちんと伝えていく必要性も感じています。
弊社としてはエビデンスを大切にしながら、市場の中で価値を示していきたい。日々休むことなく動き続けている方々が、弊社の商品を使うことで、少しでも回復の助けになればいいと考えています。そこはすべての製品に共通する考え方です」(八幡さん)
データに基づいた設計で、TENTIALはリカバリーサンダルに“歩きやすさ”という新たな基準を持ち込んだ。「日本人のコンディションを良くしたい」と語る彼らが、次にどのような足元の体験を生み出すのか。リカバリーサンダルの進化は、まだ始まったばかりである。
Text by Junko Hayashida











