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2,999円でここまでやる! TIGORAのスポーツグラスが 追求した「ズレにくさ」

2026.06.12
デザインやレンズ性能、フィット感など、サングラスに求められる要素は多い。そのなかでも、スポーツ用サングラスに不可欠な性能といえば「ズレにくさ」だろう。
アルペンのプライベートブランド、TIGORA(ティゴラ)の「スポーツグラス」は、その基本性能を見直し、磨き上げたスポーツグラスだ。ランニングを起点に設計を再構築したモデルは、日本人の顔立ちに合わせたアジアンフィット仕様に加え、軽量フレームやシリコーン製ノーズパッドなどによって、運動中でも安定した掛け心地を実現する。
それでいて価格は2,999円というから驚きだ。なぜここまでのフィット感と実用性を低価格で両立できたのか。株式会社アルペン宮澤賢治さんへの取材をもとに、その理由を明らかにしよう。

PROFILE

宮澤 賢治(みやざわ けんじ)

株式会社アルペン
バッグ・アクセサリー事業部 企画・デザイン グループ チーフ
1998年入社。店舗勤務を経て、2006年より17年にわたりバッグなどの生産管理に従事。2023年からは企画職としてサングラスや盛夏商品、フィットネス用品などのエキップメント企画開発を担当する。長年のギア系生産管理で培った知見を生かし、自ら手を動かしながら仕様を詰めていく開発スタイルを持つ。

レンズカラーは写真のブラックのほか、ブルー、イエローの3種類。「スポーツグラス(スポーツ)<一眼タイプ>」2,999円(税込)

アルペンが築いてきたスポーツ用グラスの系譜

TIGORA(ティゴラ)は、アルペンが展開するプライベートブランドである。
「スポーツをもっと身近に、というコンセプトのもと、ゴルフやスキーなどで培った知見を背景に、機能性とデザイン性、そして手に取りやすい価格を備えた製品を展開しています」
競技用のウエアやシューズなど幅広いアイテムを揃える同ブランドにおいて、サングラスは重要カテゴリーのひとつだ。
「猛暑と強い日差しが当たり前になった環境変化によって、近年は目を保護する必要性が高まり、スポーツ用サングラスの需要が高まっています」
アルペンはもともと、長きにわたってこのカテゴリーに取り組んできた実績がある。
「スポーツ用サングラスは30年以上前から展開してきました。ティゴラとしては2020年頃から本格展開し、2025年には自社開発のスポーツ用グラスとして全面リニューアルを行いました」

日本人の顔に合わせて追求したズレにくさ

今回の開発でもっとも重視したのは、ランニングでもその真価を発揮する「ズレにくさ」だ。
「そもそも従来のサングラスの多くは欧米向けフレームをベースにしていたため、日本人の顔立ちには鼻の高さや顔幅などの面で必ずしも合うものではありませんでした。そこで今回は、アジア人の骨格に合わせた設計へと見直しました」
まず着手したのが、ノーズまわりの設計である。頬への干渉やまつ毛の接触を避けるため、ノーズパッドの台座を高く設計してレンズと顔の距離を確保した。さらに日本人の鼻筋に合わせて幅広のラウンド形状を採用し、柔らかなシリコーンパッドの“面”で支えることで荷重を分散させた。汗をかいても滑りにくいよう、表面にも細かな調整を施している。
高級スポーツ用サングラスに使用されるシリコーン製ノーズパッドを採用
「想定したのは、ランニングのような上下動の大きい動作時でもズレにくいグラスです。また上下に限らず横方向の動きにも耐えられる構造とすることで、ウインタースポーツを含む幅広いアクティビティに対応できるようにしました」
こうした安定性をさらに高めるために、テンプルの設計も見直した。
「こめかみ部分のテンプルは薄く設計し、耳の付け根から後頭部へ向かうテンプルエンドには緩やかなカーブを持たせました。後頭部まで包み込むように支える構造によって、激しい動きでも浮き上がりにくくなっています」
さらにテンプルエンドの内側にはTPEラバーを配し、グリップ力も高めている。
フレームにはTR90という樹脂素材を採用した。
「TR90はしなやかに広がり、一定の力で戻ろうとする特性を持つため、顔幅に応じて柔軟にしなりながら、過度に締め付けず頭部にフィットしやすい素材です。軽量で劣化しにくく、それでいて丈夫な点もスポーツ向きです」
フレームの素材は軽量でしなやかなTR90。カーブしたテンプルエンドと相まって、快適な掛け心地を生み出す
こうした設計を形にするために、完成までには試作と検証が繰り返された。
「テンプルの厚みやしなり方、頭部を支える位置を確かめるために10回を超えるモックサンプルを作成しました。ノーズパッドも10回近くサンプルを製作し、日本人の顔に合う高さと角度に調整しています。フィールドでもランニングを中心にテストを行い、実使用における仕上がりを確認しています」
フィット構造だけでなく、視界の質を高めるために偏光レンズを採用した。
「路面や芝、水面、雪面などからの乱反射を抑え、視界のノイズを減らすことで、ランニング時には路面の凹凸やぬれた箇所を把握しやすくなります。球技ではボールや周囲の動きも捉えやすくなります」
軽量偏光レンズが乱反射を抑え、クリアな視界を確保する
ラインナップは用途別に整理されている。メインであるスポーツ用の「スポーツグラス(スポーツ)」には、一眼タイプと二眼タイプを用意している。左右一体レンズの一眼タイプは、防風性と遮光性の高さが特徴で、ランニングや自転車などスピード域のある競技に向く。
一方、左右のレンズが独立した二眼タイプは、軽量で自然な掛け心地が持ち味で、ゴルフやウォーキングといった長時間使用に向いている。
レンズカラーは写真のブラックのほか、ブルー、ブラウンの3種類。「スポーツグラス(スポーツ)<二眼タイプ>」2,999円(税込)

2,999円で本格仕様を実現したティゴラの戦略

マーケットでの立ち位置も明確だ。現在のスポーツサングラス市場は、低価格品と有名ブランドの高価格品に二極化しているという。低価格帯では、フィット感を含めて満足度の高い商品が少なく、結果として本気で使いたい人は高価格帯へ流れやすい。
「そこでティゴラでは、1万円超の有名ブランド品と、2,000円以下の格安品の間にある“空白地帯”を狙い、2,999円に設定しました」
この驚くべき価格を実現できた理由は3つある。
「第1に、企画、開発、製造、物流、販売までを自社で一括管理し、商社や代理店を介さないことで中間コストを省いています。
第2に、全国約400店舗を持つアルペングループの販売力を背景に、一括仕入れによる大量生産を行い、フレームやレンズなどの部材コストを抑えました。
そして第3に、プライベートブランドであるため、自社店頭やECで直接集客でき、広告宣伝費をかけずに済んでいます」
ティゴラが考える“高コスパ”の概念は、単に低価格であることではない。
「目指したのは、TR90フレームやシリコーンパッド、軽量偏光レンズ、アジアンフィット設計といった、本来はもっと高価格帯で採用される仕様を、“きちんと使える形”で2,999円に落とし込むことでした」
低価格帯においても“使える性能”を実現する。そのアプローチは、スポーツサングラスの価値基準そのものを引き上げる試みといえる。

Text by Ryota Osujo

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