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30周年を迎えたカシオ「PRO TREK(プロトレック)」の歴史と魅力を紐解く
今年30周年を迎えた本製品がどのように誕生し、どんな進化を遂げてきたか、そして最新作はどんな機能が盛り込まれているのかを、ブランド創成期からプロダクトデザインを担当しているカシオ計算機株式会社時計事業部の商品企画部第一企画室、チーフプランナーである小島一泰さんに伺ってみた。
「G-SHOCK」に続く新たなブランドを確立するプロジェクトに参画
アウトドアフィールドでの使用を想定し、センサーを内蔵した新たな時計ブランドを確立するという使命のもと、1995年に産声を上げた「プロトレック」。「G-SHOCK(Gショック)」に続く、新しいブランド立ち上げための「NEXT ONE(ネクストワン)」プロジェクトから参画した小島さん。当時の状況をこう語る。「それまでは温度が測れる時計、ゲームができる時計というように、各製品は機能を限定して作られていましたが、『G-SHOCK』のようにブランドとして長く愛される時計を作るという考え方から『ネクストワン』プロジェクトが立ち上がりました。
当時私は、入社して間もない新米プロダクトデザイナーでしたが、後に『プロトレック』となるブランド立ち上げのブレストミーティングに参加させてもらい、皆さんの熱い想いを聞きながら、ブランドのロゴやプロダクトデザインを描いていきました。そうして生まれたのが『プロトレック』だったのです」


「プロトレック」誕生当初、デジタル時計で方位を測れるコンパス機能が革新的で、他社のデジタル時計にはそういった機能を持つものはなかったので、センセーショナルなデビューとなった。
ただ、それが完成形ではなく、進化への苦労も絶えなかったという。小島さんはこう続ける。
「当時は磁気センサーをどう搭載するかが大きな課題となっていました。時計はボタン電池が電力供給元となりますが、磁気センサーはボタン電池からの影響をかなり受けてしまうのです。磁気センサーとボタン電池の位置が近いと正確な計測ができなくなります。だからこそ初号機(DPX-500)はベアリングセンサーを9時位置側にレイアウトするという個性的なデザインでデビューしました」
画期的な機能を搭載した「プロトレック」だったが、プロダクトデザインとしては大きな課題を残すこととなった。
「プロトレック」の歩みは「トリプルセンサー」の進化の歴史
「プロトレック」の代名詞として真っ先に挙げられるのが「トリプルセンサー」だろう。小島さんはそれについてこう説明してくれた。「初号機(DPX-500)から搭載されるのが『トリプルセンサー』です。これはメイン機能である“高度、方位、気圧”が計測できるところからこう呼ばれています。現在は『トリプルセンサーVer.3』が最新版となっていますが、その進化の過程には大きな技術革新がありました」


それはカシオ計算機の時計事業における技術開発とも密接につながっている。小島さんはこう続ける。
「先ほど説明したように『トリプルセンサーVer.1』は説明したようにボタン電池で駆動していたのですが、かなり消費電力が大きく、ソーラー駆動することはできませんでした。そこで『トリプルセンサーVer.2』では『カシオ』独自のソーラー充電システムであるタフソーラーの搭載により、ソーラー駆動によるセンサー計測を実現したのです。これによりより日光下で使うアウトドアに適した時計に進化しました。
また最新の『トリプルセンサーVer.3』では95%のダウンサイジング化を実現した、新開発の小型磁気センサーと計測精度を高めた圧力センサーを搭載しています。この新型センサーと処理能力を向上させた『カシオ』独自のLSI技術を組み合わせることで『トリプルセンサー』の機能を飛躍的に高めたのです。『Ver.1』と『Ver.2』では高度が5m単位の計測でしたが、『Ver.3』では1m単位を1秒間隔で計測できるようになりました」

もちろん「トリプルセンサーVer.3」の恩恵はセンシング機能の向上にとどまらず、ボディの薄型化や軽量化、デザイン性の向上、多機能化など広範囲にわたっている。
この進化は「カシオ」だけで実現したのではない。プロの登山家たちのフィードバックがあったからこそと小島さんは語る。
「プロの登山家である竹内洋岳さんや花谷泰広さんには、厳しいながらも貴重なフィードバックをいただきました。やはり過酷なフィールドでは、機能が使えなければそれが命取りになってしまいます。そういった率直なフィードバックのおかげで、『プロトレック』はここまで進化してこられたのだと思います」
自然を愛するために未来を見据える
「自然を感じ、自然を楽しみ、自然を愛する」というコンセプトで、ここまで歩んできた「プロトレック」。近年では、自然を愛するために次なる取り組みにも着手している。それがバイオマスプラスチック樹脂を採用したプロダクトだ。小島さんはそのことに関してもこう続ける。「ブランドスタート時に、羽村技術センターの近くの公民館で開発者からデザイナーまで、『プロトレック』に携わるメンバーが一堂に会するブレストミーティングがありました。そこで出たアイディアや言葉が30年以上たった今、実現されようとしています。それが“地球にやさしく、環境に配慮する”ことです。
2015年あたりぐらいから、時計業界でも環境意識が変わってきました。石油由来のプラスチックに依存する意識は変えていかなければならないという機運が生まれていったのです。我々もそういった動きを取ろうとはしていましたが、国内の1企業の1ブランドのみでは、バイオマス素材を開発するのはなかなか難しい現実がありました。
しかし業界全体の環境に対する意識が高まったこともあり、素材メーカーさんにお声がけいただき、バイオマスプラスチックの開発が進みました。最新モデルでもケースやバンドに植物由来のバイオマスプラスチック樹脂素材を採用し、軽量化を図りつつ地球にも優しいモデルを展開しています」
もちろん、それまで使用していたパーツの金型にバイオマスプラスチック樹脂を入れれば出来上がるような簡単な話ではない。開発の際は金型の設計自体を変えなければならなかったが、そこは「プロトレック」ブランドを環境対応のプロダクトへ舵を切る決断をすることで対応することとなった。
最後に今後の展開を聞いてみると小島さんはこう答えてくれた。
「もちろん新たな技術開発は進めていきたいと考えています。その時流の技術を取り入れたプロダクトが生まれる可能性が大いにあると思います。ただ、環境に負荷をかけないというコンセプトも新たに加わったので、バイオマスプラスチック樹脂を採用したモデルとの2軸で新しいことができれば、面白いですよね」
ブランド創成期から携わっているからこそ、小島さんは「プロトレック」の過去をたどりながら、現在を見つめ、未来に想いを馳せる。その探求心により「プロトレック」が今後さらなる進化を遂げて、我々に新たな境地を見せてくれることに期待したい。
PROFILE

小島一泰(こじま かずやす)
カシオ計算機株式会社
時計事業部 商品企画部 第一企画室
チーフプランナー
1992年入社。プロトレック初号機のカラーデザイン始め、長年プロダクトデザイナーとして数多くの時計製品を担当。商品企画にも参画し、現在は開発責任者としてプロトレックに携わる。
Text by Yasuyuki Ushijima(NO-TECH)










