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投資か? それとも文化継承か? ロレックス専門店 クォークと探る ヴィンテージロレックスの現在地
ヴィンテージロレックスの人気は、一向に衰える気配を見せない。むしろ近年は、本当に価値のあるモデルを見極めようとする視線が、これまで以上にシビアになっている。
なぜ、約半世紀前に生産された古いロレックスが価値を保ち続け、人々を惹きつけるのか? その問いを明らかにするべく、国内トップクラスの在庫数を誇る「ロレックス専門店 クォーク」を訪ねた。同社の取締役副社長を務める佐藤 顕さんの談話から、ヴィンテージロレックスの現在地を読み解く。
PROFILE

佐藤 顕(さとう あきら)
株式会社クォーク 取締役副社長
1998年、株式会社クォーク入社。同社のアンティーク事業部総責任者を経て、現職。ヴィンテージロレックスに関する高い鑑定眼と審美眼を駆使して、海外での仕入れも行う。

1990年代に芽吹き、世界的なブームに
ヴィンテージロレックスのブームの起点は1990年代にさかのぼる。当時、イタリアを中心としたヨーロッパの愛好家が、ポール・ニューマンをはじめとする初期スポーツモデルの価値に注目し始めた。2000年代に入ると、専門誌やオークションハウスを通じて情報が共有され、マーケットの輪郭が明確になっていく。そして2010年代にはオークションでの高額落札が相次ぎ、一気に世界的なブームへと拡大した。
「2020年代に入ると、コロナ禍を契機に『時計=資産』という視点が強まりました。ただ現在は投機的な熱狂も落ち着き、ヴィンテージの持つ美的な価値を見極めようとする方が増えつつあります」

主な購入層は、40~50代の団塊ジュニア世代
では現在、どのような層がヴィンテージロレックスを購入しているのだろうか。「富裕層だけでなく、40〜50代の団塊ジュニア世代のお客様が増えています。若い頃にロレックスへ憧れを抱いていたものの、当時は手が届かなかった世代が、仕事や家庭が一段落し、自分のための時計を選べるタイミングを迎えているようです」
彼らにとってヴィンテージロレックスはファッションアイテムであり、同時に実用品でもある。
「ジーンズやクルマ、バイクと同じように、古いものを大切にメンテナンスしながら使い続けたい、という嗜好を持つ方が多いと感じます。
ロレックスであれば、60〜70年代に生産された個体でも、気兼ねなく使うことができますから。これほど道具としての本質的なクオリティが高いブランドは他にそう多くありません」
そもそも、他の高級時計ブランドと比べてロレックスは「数が多い」と言われる。にもかかわらず、なぜ価値が落ちにくいのか。
「理由は生産規模と思想の違いにあります。50〜70年代のロレックスは、すでに工業製品としての大量生産体制を確立しており、なおかつ高い耐久性を備えた実用品として設計されていました」
そのため、日常の中で道具として使われ、修理されながら受け継がれてきた。結果として、同時代の他ブランドの多くが市場から姿を消したのに対し、ロレックスは現在も一定数が流通し、世界的なマーケットが成立している。
「ただ、当時のままのパーツが残っている個体は意外と少なく、そこに価格差が生まれます。実用性を優先してパーツを新しく交換するのがロレックスのポリシーです。メーカーとしては正しい姿勢ですが、ヴィンテージとしての価値は変わってしまうんです」
つまり、パーツまで含めてオリジナル性の高いモデルほど希少性が高く、価値も落ちにくいというわけだ。

ヴィンテージロレックスブームを牽引する3大モデル
今、特に人気を集めているモデルは一体どれなのか……。「市場全体では、相変わらずサブマリーナー、GMT、デイトナの3型が中心です。海外と国内で大きな違いはありませんが、日本ではエクスプローラーの人気が高いのが特徴です」

なかでも、もっとも入手が困難な幻のモデルが50年代の個体だという。
「この年代のロレックスは、より実用重視で作られており、ダイヤルのクオリティなどの影響から、色の変化や針の黒ずみといったエイジングが出やすい傾向にあります。きれいな個体を探し続けてきたコレクターが、さらに深みに入り、よりヴィンテージらしい趣を持つ個体へ惹かれていっているように感じます」
加えて、60〜70年代と比べ、50年代の個体は絶対数が極端に少ない。その希少性が価格の高騰にも直結している。
「皮肉な話ですが、きちんとメンテナンスをして大事に使われてきたロレックスほど、パーツが更新され、『当時のまま』が残りにくい。一方で、無頓着にしまい込まれていたもののほうが、結果的に価値が高くなるケースもあります」

日常使いしやすいヴィンテージロレックスは?
現在のデイトナは多くの人にとって現実的な価格帯とは言い難い。手の届きやすいモデルについても聞いてみた。
「オイスター・パーペチュアル、デイト、デイトジャスト、エアキングなどのヴィンテージは、まだ比較的手に入れやすい価格帯です。数が多く、スポーツモデルほど人気が集中していないことが理由ですが、クオリティの面でも十分に満足できるものが多いと感じます。
また、年代でいえば70年代のものには状態がいいものが多い印象です。ただ、プラスチック風防は経年で歪みが生じ、防水性が落ちることがあるので、この点はチェックが必要です」

長く使い続けるためには、オーバーホールも重要になる。ヴィンテージロレックスの多くは、振動数の少ないロービートと呼ばれるムーブメントが採用されている。このムーブメントはテンプがゆっくりと振動するため、部品同士の摩耗が起こりにくく、かつ潤滑油の劣化による影響も出にくいのが特徴だ。
「そのため、ヴィンテージロレックスは油切れの影響が出にくく、10年、20年と動き続けることも珍しくありません。むしろ90年代以降のもののほうが、油切れで止まりやすい傾向にあります。ただ、長く使いたければオーバーホールは定期的に行うべきです」

ロレックス専門店クォークは自社修理事業部にて、時計一本一本を丁寧に、その魅力や価値を損なう事のない分解洗浄・調整・防水検査などのメンテナンスを行う。特に希少性の高いヴィンテージモデルは、内装パーツや外装パーツ交換の判断から磨き具合の調整まで、ヴィンテージの価値を最大限維持するメンテナンスを徹底している。資産的価値についても、気になるところだ。
「5〜10年使っても価格が下がりにくい、買値より高く売れる、といったケースはあります。ただ現在は、相当な鑑定眼がないかぎり、短期的な転売で利益を出すのは難しいでしょう。
多くの場合、5〜10年単位で上下の波を描きながら、じわじわと価値が形成されていきます。資産というよりも、アートやカルチャーとして捉えたほうが、ロレックスの世界をより楽しめると思います」
若い世代が見出し始めたロレックスの継承価値
近年、20〜30代の若い世代のロレックスファンが徐々に増えていることについて、佐藤さんはこう続ける。「スマートウォッチと違い、機械式時計はメンテナンスや修理を重ねれば、一生使い続けることができます。資源を無駄にすることなく、時計文化の継承にもつながります。その点に価値を感じてくれる若い世代が増えているのは、うれしいかぎりです」
単なる投資対象ではなく、「ひとつのものを大切に使い続ける」というサステナブルな価値観を体現するヴィンテージロレックス。そのブームの先にあるのは、消費ではなく、文化の継承なのである。
※掲載モデルは販売済み個体を含む。価格は過去の取引実績を基にした参考値。
Text by Ryota Osujo













