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セイコーダイバーズの最新進化形「マリンマスター 1968 ヘリテージ HBF001J」は 何を受け継ぎ、何を更新したのか?

2026.07.08
国産初のダイバーズウォッチとして誕生し、プロの道具としての信頼性と洗練されたデザイン性を磨き上げてきたのが、セイコーのダイバーズウォッチである。その歴史の中で、1968年に登場したモデルは、機能とデザインの両面で、ダイバーズウォッチ開発における大きな転換点となった。

この夏、「セイコー プロスペックス」からリリースされる「マリンマスター 1968 ヘリテージ HBF001J」は、その系譜を継ぐ本格ダイバーズウォッチだ。
1968年のダイバーズウォッチに着想を得た意匠を受け継ぎながら、現代の技術や設計思想を反映したモデルである。“1968 ヘリテージ”の名のもと、セイコーが培ってきた技術と思想を体現する一本といえる。およそ60年にわたる進化の系譜をひも解きながら、本作に宿る更新点を探ろう。
7月10日(金)に発売されるセイコー プロスペックスの「マリンマスター 1968 ヘリテージ HBF001J」 ケース径42.6mm ステンレススティールケース 自動巻き 506,000円(税込)

名作ダイバーの系譜を継ぐ現代のハイエンドダイバーズ

セイコーは数々の名作ダイバーズウォッチを輩出し、この分野の発展に足跡を残してきた。中でも特別な存在とされるのが、国産初の本格ダイバーズウォッチとして知られる1965年製のモデル、そして今回紹介する「マリンマスター 1968 ヘリテージ HBF001J」のルーツである、1968年製のモデルである。
日本初の本格潜水用腕時計として誕生した1965年製のモデル。自動巻きムーブメントを搭載し、150mの空気潜水用防水を実現した。参考商品 
1965年のわずか3年後に発表された1968年製のモデルは、300m空気潜水用防水を実現するためにワンピース構造のケースを採用し、当時としては世界最高水準の10振動ハイビートムーブメントを搭載していた。
さらにりゅうずは手首との干渉を抑える4時位置へと移され、ケースも機能美を感じさせる流麗なフォルムにまとめられた。
高い防水性、精度、装着性を追求したその姿は、ダイバーズウォッチを専門的な計器であると同時に、独自のデザインを備えたプロダクトへと押し上げた。後のセイコーダイバーズにも受け継がれていく、重要なデザインコードが誕生したのである。
裏蓋のない画期的なワンピース構造で300m防水を実現した1968年製のモデル。高精度のハイビート自動巻きムーブメントを搭載していた。参考商品
ただ、今回紹介する「HBF001J」は、「セイコー プロスペックス」の「マリンマスター」として登場した点に大きな意味があるのだ。
「セイコー プロスペックス」は、ダイビングやスポーツ競技、登山など、正確なタイムマネジメントを必要とするアクティビティのために、高い信頼性と機能を備えた総合スポーツウォッチブランドである。前述した1965年製のモデルもまた、同ブランドの原点のひとつとされる。
そして「マリンマスター」とは、セイコーがダイバーズウォッチの開発で培ってきた技術とノウハウを結集したフラッグシップシリーズである。優れた防水性能や精度だけではなく、洗練された外装デザイン、細部の精緻な仕上げといった要素を高い次元で成立させることがマリンマスターの条件とされている。
つまり「HBF001J」は、1968年製のモデルのデザインコードと設計思想を受け継ぎながら、本格スポーツウォッチブランドの上位シリーズに位置付けられる特別なタイムピースといえる。

外装からムーブメントまで、4つの進化

では、更新された点をチェックしよう。まずは時計の心臓部であるムーブメントから見ていこう。
「HBF001J」は、マリンマスターとして「キャリバー8L45」を搭載した初のレギュラーモデルとなる。「8L45」は、動力ぜんまいの形状や設計を改良し、厳密な精度調整を行うことで、日差+10秒〜−5秒、約72時間の持続時間を実現したメカニカルムーブメントだ。
動力ぜんまいには、セイコー独自の合金素材・スプロンを採用した。精度、持続時間、耐久性を高い次元で支えるこのムーブメントは、マリンマスターが求める“道具としての信頼性”を体現する中核といえる。
ダイバーズウォッチの生命線である高い視認性も実現している。ダイヤルには、梨地仕上げと、これまでよりも深いブラックの塗装が施されている。ダイバーズウォッチにとって、ブラックという色彩は光の反射を抑え、針やインデックスとのコントラストを高め、瞬時の読み取りやすさにつなげるための機能でもある。
さらに針、インデックス、ベゼルには高輝度ルミブライトを採用した。水中や暗所でも時刻を確実に読み取るための設計が、王道のブラックダイヤルに凝縮されている。
風防はデュアルカーブサファイアガラスで、内面無反射コーティングも備える
外装もまた、「マリンマスター」にふさわしい出来栄えとなっている。ケースはステンレススティール製で、表面には日常使いの擦り傷や小傷から美しい仕上げを守るダイヤシールドを施す。ベゼル表示板には、耐傷性に優れたセラミックス素材を採用する。
防水性能は300m空気潜水用防水。プロの道具としての堅牢性を確保しながら、外装の質感や輝きにも妥協しない点にマリンマスターらしさが表れている
そして、日常での使いやすさを高めているのが、簡単な操作でブレスレットのサイズを微調整できる新型のワンプッシュダイバーアジャスターだ。ウェットスーツの上から装着するための機能は、暑さや活動量による手首まわりのむくみなど、日常の中で生じるフィット感の変化にも対応できる。
新開発のワンプッシュダイバーアジャスター式の中留は、簡単な操作でブレスレットのサイズを微調整でき、最大約16mmの幅を約2mmずつ、8段階で調整できる

海の相棒から、日常の相棒へ。HBF001Jが示す価値

時計に詳しくない読者の中には、50万円を超える価格を高価に感じる人もいるだろう。だが、その価格には確固たる理由がある。
細部まで作り込まれた外装、高い精度と約72時間の持続時間を備えるキャリバー8L45、300m空気潜水用防水を支える堅牢なケース、セラミックスベゼル、新開発のアジャスターなどが要素として挙げられる。海という過酷な環境下で、ダイバーの生命を守るための機能と工夫が、この時計の中には積み上げられているのだ。
伝統あるセイコーダイバーズの思想を現代の技術と美意識で更新した本製品。海で培われた信頼性は機能美となり、日常へと持ち込まれる――。HBF001Jは、ダイバーズウォッチの価値を再定義する一本といえるだろう。

Text by Ryota Osujo

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