JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

なぜ今「オールドユニクロ」は熱いのか? コレクターが語る、大量生産の裏に眠る価値

2025.09.01
今、オールドユニクロが静かに熱い。
80年代末期から2000年代初頭にリリースされた、ごく普通のフリースやダウン、カーゴパンツ。量販ブランドの“何気ない日常着”が、今改めてファッションシーンで光を帯びている。高級でも尖ってもいない。しかし、そこにしかない空気と質感、時代性があるのだ。
そんなユニクロのヴィンテージにいち早く注目し、独自の審美眼で集め続けてきたのがコレクターのミフラさんである。大量生産の象徴と語られてきたユニクロに、なぜ彼は価値を見出したのか。そしてなぜ今、オールドユニクロがカルチャーとして再評価されているのか。その理由を掘り下げる。

PROFILE

ミフラ

1998年生まれ、山梨県出身

普段はシューズデザイナーとして働く。

ひょんなことからオールドユニクロにハマり収集と研究を始める。

Instagram

古着をきっかけにハマったオールドユニクロの世界

昨今のヴィンテージブームと呼応するように広がりを見せる「オールドユニクロ」。現在27歳のミフラさんは、いつ頃からその魅力に気づいたのだろうか。
「小さい頃、ユニクロは“親に連れていかれる服屋”というイメージで、特に思い入れがあったわけではありませんでした。意識し始めたのは大人になってからで、5年ほど前にリサイクルショップで現行とは違うタグのアイテムを見つけたんです。
『あ、このタグ、親が部屋着にしていたやつだ』とふと思い出したのがきっかけで、そこから少しずつ掘り下げるようになりました」
ミフラさんが最初に出会ったのは、紺色のベースに太めのゴシック体で「UNIQLO」と記されたタグのついた、2000年初頭のものと推測される一着だった。
2000年に発売されたデニムジャケット
「まだ市場においても『オールドユニクロ』の定義は曖昧ですが、個人的にはユニクロがオリジナル商品の開発を始めた1987年から、ロゴが大きく変わる前の2009年頃までをそう呼んでいいのではないかと考えています」
最初期といわれる1987〜89年頃(推定)のタグ
もともと古着好きだったこともあり、タグや書籍、服の仕様を手がかりに探求を進めるうち、ミフラさんのコレクター魂に火がついた。
そのなかで彼が気づいたのは、一見“普遍的”に見えるユニクロにも、時代ごとのデザインや素材、シルエットの明確な変遷が存在するという事実だった。

コレクターも唸る、ユニクロの隠れた名品

現在も続く『UT』が初めて登場したのは2007年。当時はタイトシルエット全盛期で、UTをはじめ多くのアイテムが細身のデザインで展開されていた。
漫画家の荒木飛呂彦氏がデザインした、2006年発売のUT。アーティストやデザイナーがデザインを手がける現在のUTの先駆けとも言える、「ユニクロ・クリエイティブ・アワード2006」から生まれた一枚。
「今のY2Kトレンドの流れの中で、ユニクロが2000年代当時に出していたアイテムが現代のムードに驚くほどフィットするんです。当時は時代を少し先取りしていたのかもしれませんが、今見ると、『これ、めちゃくちゃ今っぽい』と感じるものが結構あります。
そういうアイテムを発見するたびに、『昔はこんな挑戦的なものを作っていたんだ』と驚かされ、改めてその魅力に気づかされますね」
ミフラさん曰く、今のユニクロは洗練され、バランスの取れた完成度の高い製品が並ぶ。それに対し、当時のユニクロはトレンドを必死に追いかけ、「なんとかこの流行に乗ろう」と試行錯誤していた熱量が感じられるという。
その熱量を象徴するのがミフラさんのコレクションの一つ、80年代末期に発売されたと推測されるデニムジャケットだ。ウォッシュのかかったデニム、旧ロゴが刻印されたボタン、そして裏タグの雰囲気。そのすべてが、今のイメージとは異なる“ユニクロらしからぬ”魅力的な風合いを放っている。
80年代末期に発売されたと推測されるデニムジャケット
旧ロゴが刻印されたボタン
裏タグ
「ジャンルで言えば、まさにアメカジのど真ん中。とても男っぽい雰囲気です。実際、90年代半ば頃まではレディースのラインが明確には存在していなかったほどですから。そもそもユニクロがオリジナル開発を始めた背景には、『おしゃれな服は高い、安い服は野暮ったい』という当時の常識を覆したい、という想いがあったのだと思います」
ロゴの変遷をたどるのも、オールドユニクロの醍醐味だとミフラさんは語る。
現在おなじみの佐藤可士和氏によるロゴ以前にも、歴史の節目ごとにデザインは変わってきた。創業当初(1984〜93年頃)は、手をつなぐ人のイラストと「UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE」を記したロゴ。その後、『UNI-QLO』表記を経て『UNIQLO』となり、2000年代前半は紺色のボックスロゴも存在した。
1988〜91年頃(推定)のタグ
1988〜91年頃(推定)のタグ
1989〜91年頃(推定)のタグ
1992〜93年頃(推定)のタグ
「デニムブランドに比べれば歴史は浅いですが、ユニクロもまた時代ごとに大きな変化を遂げてきました。その変遷はタグやデザインに凝縮されており、ブランドがいかに挑戦し、進化してきたかを読み解くことができる。それがとても興味深いのです」

一着に宿る、忘れられた物語

200着を超えるミフラさんのコレクションの中でも、ひときわ思い入れの深い一着が、フリマアプリで手に入れたスウェットだ。
スウェットの表面には、手をつなぐ人物のイラストと、かつてのブランド名「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」のロゴがプリントされている。2024年の創業40周年記念でこのロゴの復刻Tシャツも発売されたが、ミフラさんがこのスウェットを初めて見たとき、すぐにはその年代を特定できなかったという。
「フリマアプリで古着を買うのは日常的なことですが、これはあまりにも古くて情報もありませんでした。そこで、ダメ元で『いつ、どこで手に入れたものですか?』と出品者にメッセージを送ってみたんです」
数日後、商品とともに一通の手紙が届いた。そこには「出品者の父です」と書かれており、スウェットの背景が丁寧に綴られていた。
「手紙によれば、このスウェットはユニクロが『ファーストリテイリング』になる前、前身の『小郡商事』だった時代のものでした。出品者のお父様は、愛知県のUNIQUE CLOTHING WAREHOUSE第1号店の建設に携わった方で、その店舗が完成し、スタッフとしてオープンイベントを手伝う際に贈られた一着だった――そんな背景が直筆で丁寧に綴られていました。
これまで数多くのオールドユニクロを集めてきましたが、ここまで深い物語を持つ一着は初めてで、本当に心に残っています」
心温まる物語を持つ一着がある一方で、コレクターとしての情熱を象徴する“最推し”アイテムも存在する。それが、幻の業態『ファミクロ』のスウェットだ。
1997年から1998年にかけて、ユニクロにはスポーツ系の「スポクロ」とファミリー向けの「ファミクロ」という2つの派生業態が存在したが、いずれもわずか1年ほどで撤退している。
「今見てもデザインは新鮮ですが、幻のブランドなので、なかなか市場には出てきません。これは大阪の古着屋『十四才』と岡山を拠点とする古着屋『cultureclub』が開催したオールドユニクロだけのポップアップで入手しました。僕は福岡在住ですが、このスウェットの存在を知った瞬間、『これはもう大阪に行くしかない』と、夜行バスに飛び乗って駆けつけました」

コレクターが見つめる、ユニクロの進化

掘り下げるほどに奥深さを増すオールドユニクロ。今後、かつてのアイテムはどのように評価されていくのだろうか。
「2000年代のユニクロは『オールド』と呼ぶには境目の時期。まだ“古い”というよりは、『あえて選ぶ』スタイルで楽しまれている印象ですね。
本格的に評価されていくのは、やはりアメリカンカジュアルの雰囲気が色濃い90年代以前のアイテムでしょう。プロダクトとしての完成度も高いですから。まず90年代が注目され、その後に2000年代へと関心が広がっていく流れだと思います。
とはいえ、ユニークな視点を持つ古着好きには2000年代のアイテムも魅力的に映るはずで、今後さらに評価が高まっていくと考えています」
左から:カーゴパンツ(97〜99年頃)、フリース(2000年)、ダウン(01〜02年頃)
ミフラさんの探究は、もはやオールドユニクロだけに留まらない。ユニクロというブランドそのものの進化に、今は大きな感動を覚えるという。
「日頃から調べすぎているせいか、店舗へ行くだけで『すごい企業になったな』と勝手に感動してしまうんです(笑)。
過去のデニムジャケットのような試行錯誤の積み重ねがあったからこそ、今のユニクロの進化がある。あの歴史がなければ、今の姿はなかったかもしれない。そう思うと、現在のユニクロも否定的どころかむしろ純粋なファンとして、『ユニクロU』や『ユニクロC』などを楽しんでいます」
最後に、彼にとってユニクロとはどのような存在なのだろうか。
「自分にとって非常に身近でありながら、まだまだ探究の余地がある、“太陽”のように大きくて奥深い存在です。理解したつもりでも、実は見えていなかった部分に気づかされることも多い。それだけ魅力が尽きないので、日々、恋人のようにユニクロのことを考え続けています(笑)」
ユニクロの過去をたどり、現在を見つめ、未来に思いを馳せる。ミフラさんのまなざしは、オールドユニクロという切り口から、いち企業の進化の物語を読み解こうとする、愛情に満ちた探究心そのものだ。
変化し続けるからこそ面白い——進化とともに、オールドユニクロという物語もまた、これからさらに深まっていくのだろう。

Text by Tajimax

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

Related Articles

Related Database