

服と人
ブラックデニムから始まった、設楽統の古着
人気ヴィンテージショップ『ベルベルジン』ディレクター・藤原裕さんをホストに迎え、藤原さんとゆかりのあるゲストとともに、“服と人”との関わりを深く掘り下げていく対談連載。今回のゲストは設楽 統さん。
PROFILE
設楽 統(したら おさむ)
お笑い芸人
1993年、相方の日村勇紀とともに「バナナマン」結成。翌年デビュー。独特の間とセンスでコント・トークともに高い評価を得る一方、数多くの情報番組やバラエティ番組でMCとしても活躍。ほか、俳優業やナレーションなど、幅広い分野で存在感を発揮している。
PROFILE
藤原 裕(ふじはら ゆたか)
ベルベルジン・ディレクター
原宿のヴィンテージショップ『ベルベルジン』店長。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。

人生初のデニムは、2人ともブラック
藤原設楽さんには、衣装を提供させていただく関係を含めたら20年近くお世話になっていますが、ファッションのことは深く話していないので、今日は「服と人」ということでいろいろ伺いたいと思っています。
設楽「ヴィンテージ」とか「デニム」とか、テーマが決まった中での対談はありますが、たしかに“人生を振り返る系”はないですよね。
藤原そう、意外とないんですよ(笑)。早速ですが、設楽さんがファッションに目覚めたのはいつ頃ですか?
設楽最初に意識して服を買ったのは中学1年生ぐらいです。裕さんの友達の中にも、センスのいいやつがいたんじゃないかと思うんですけど。
藤原いましたね。僕の場合は先輩でしたけど。
設楽あ、やっぱり。はじめはそういう友達に影響されました。シバサキくんっていうんですけど、とにかくオシャレで洋楽も聴いていたり、あとバンドとかもいち早く始めたりして。彼の存在が大きかったですね。当時彼がリーバイスのブラックデニムをはいていたこともあって、周囲の友達も含めてみんなで買いました。
たしか、裕さんもデビューはブラックデニムでしたよね? 以前出された本(『教養としてのデニム』)を読んだときに、「そういえば俺も、中学のときに初めて買ったのはブラックデニムだったな」って思った記憶があります。
藤原同じですね(笑)。
設楽街に唯一あるようなデパートみたいなところで買いました。もちろん新品です。古着は、高校生になって地元の秩父市にあった古着屋さんで、501のインディゴデニムを5,000〜6,000円くらいで買ったのが最初です。
そこから古着はずっと好きですね。本格的にヴィンテージを買うようになったのは、それこそ『ベルベルジン』に衣装提供してもらったり、裕さんと実際にお会いしたりするようになってからです。レアものに興味を持ち始めたのはここ10年以内という感じですね。

藤原若い頃、流行りの情報はどうやって入手していたんですか?
設楽当時は雑誌全盛期で、『ブーン』や『スマート』『ホットドッグプレス』『ポパイ』など満遍なく読んでいました。秩父市は田舎で情報もそこまで入ってこなかったけど、レッドウイングは見ればわかったし、値段的にも頑張れば買える! と思いました。
でも、ゴローズとかは別でした。雑誌を読んでいるから流行っていることをふわっとは知っていても、本物なんか見たこともないっていう。僕らのときは工務店の鎖みたいなのを付けていましたから。

設楽ベルベルジンへはいつも目的もなくフラッと行かせてもらうんですけど、裕さんに「何かありますか?」って聞くと、スッと出てくるシリーズがあるんですよ。
これ(この日着用していたパーカ)を買ったときも、僕はチャンピオンの後付けパーカが欲しいとは言ってないんですけど、「いいのありますよ」ってスッと出てきて。
チャンピオンの後付けはヴィンテージの中では簡単に手に入るものではないことは知っていたので、買わせていただきました。
藤原絶対にないですよ。しかもこのサイズとコンディションですから。
設楽だからこれはスッと出てくるシリーズの最新版ですね。あとベルベルジンのいいところは、どの店舗もみなさんフレンドリーなところ。古着屋さん=怖いとか、喋りづらいっていうイメージがあったけど、話してみるとすごく優しく教えてくれて。そうなるとどんどん古着が好きという気持ちが加速していくんです。
ヴィンテージの中でもスヌーピーシリーズは特にお気に入り
藤原 今日はデニムから軍物、ビーントート、スプルースみたいな可愛いもの、Tシャツ山盛りっていう、圧巻ですね(笑)。


設楽軍ものもビーントートもいいんですが、昔からチャーリー・ブラウンが好きなんです。古着にハマって、スウェットシリーズの中にもチャーリー・ブラウンものがあることも知りましたが、危険を感じたのでまず沼を遠くから眺めることにしたんです。
でも実物を見たらやっぱり可愛いし、さらにその中には入手困難なものもあるっていうじゃないですか。気づいたときにはもう沼に浸かっていました(笑)。

藤原この2着は60年代のスヌーピーシリーズの中でも本当に出ないです。あとこのコンディションもヤバイです。
設楽“アストロ”と呼ばれる宇宙服を着たスヌーピーは、昨年の「インスピレーション」で、ベルベルジンさんから買わせてもらったものです。
藤原もちろん覚えています。やっぱりいいですね。色もきれいで生地もまだふかふかですから。あとピッグペンもすごいですね。30年近く古着に携わっていますが、実物を見たのはこれで4枚目です。
設楽あとそうそう、このデニムパンツがベルベルジンで初めて買ったアイテムだと思います。おそらく20年くらい前に。これリペアを7回ぐらいしてるんですよ。
藤原だいぶ味がありますね。

設楽過去にジーパンを手放したことはありましたが、これだけは残しています。最近はいていたら、どんどん薄くなってきたのでまたリペアする予定です。当時は今よりも少し太っていたのでサイズは大きめです。おそらく当時は今と比べればそこまで高くもなくて、でも当時なりにいいお値段でした。
遊歩道店に通うようになってから、Tシャツ欲が爆発!
藤原今回お持ちいただいた中で、もっとも量が多いのがTシャツですね。
設楽そこまで積極的に集めていたわけではないんですが、ベルベルジンの遊歩道店がオープンしてからハマってしまいました。遊歩道店ってバンドや映画など、カルチャー系のTシャツに強い店舗としてオープンされたと聞いていたので……。お店の方とも親しくなり、いわゆる80〜90年代のメジャーな映画Tシャツからどんどんハマっていきました。

藤原『スター・ウォーズ』『E.T.』『トレインスポッティング』、どれも名作ですね。しかも珍しいものばかりです。
設楽好きな作品を見つけると、とりあえず買っちゃいますね。このTシャツの中にはオフィシャルグッズや販促もの、お土産っぽいものまでいろいろあります。
藤原あと『ファイト・クラブ』が気になるんですけど、これはかなり珍しいですよね。どれもかなりレアですが、特に背中にルールが書かれたデザインは見つからないんです。

設楽そうなんです。映画はもちろん、ブラッド・ピットも好きなんです。ブラッド・ピットが『ファイト・クラブ』の中で着ているものや、映画『セブン』で着ているアンダーウエアも買いました。遊歩道店で説明を受けていたら欲しくなってしまいました(笑)。
もともと映画が好きでTシャツを買っていたんですが、最近は逆のパターンもあるんです。いわゆる“ジャケ買い”的な感じで、プリントのグラフィックがかっこいいからTシャツを先に買って、そのあとに映画を観る、という現象も生まれてきています。
特に遊歩道店のスタッフさんは詳しい方がたくさんいて説明してくれるから、それを聞くとすごい興味が湧くんです。最近は古着も映画も、楽しみ方が広がっています。


藤原この人体のプリントは、カート・コバーンが着用していたことで有名なものですよね。古いものだと80年代からありますが、これもあまり出回っていないのに、これだけ大量に集めるのもすごいです(笑)。
設楽アナトミカルシリーズっていう、要は人体シリーズなんですけど。なぜかあると買っちゃうんです。アメリカ製とヨーロッパ製でボディが微妙に違ったり、フォントのデザインが変わっていたり……。コンプリートしたかなと思ってもまだまだ出てくるんです。
まだ誰も注目していなかった頃のダービージャケット
藤原このダービージャケットは遊歩道店ですね?
設楽そうです。自分の中では、遊歩道店で最初に買ったのは僕だという自負があるんですよ。ダービーをまだ打ち出す前にお店にディスプレイされていて、「かっこいいですね」って康介くん(=蒔田康介「ベルベルジン遊歩道」ディレクター)に言ったら、ダービー愛を熱く語ってくれて。
そしたら欲しくなって買っちゃいました。全部で10着ぐらい持っています。というのも、当時はそこまで注目をされていなかったので、カラーやサイズは選び放題だったんです。もちろん、これも普通に着ています。

藤原この年代のブラックはまず見ないですし、しかもビッグサイズは本当に出てこないですね。
今後も“古着のある暮らし”が楽しみで仕方ない

藤原そして、設楽さんといえば大戦モデルのTバックですね。
設楽3、4年前に、これもベルベルジンにフラッと遊びに行ったときに買わせていただきました。これも出会いだと思うんですけど、入店した瞬間に「ありますよ」って。なんなら入荷直後くらいのタイミングだったみたいで「すげえ運がいいっすね」ってなりましたよね。

藤原じつは入荷した瞬間、僕が本気で買おうと思っていたんです。大戦モデルのTバックでこのコンディションは、絶対に出ないですから。ちなみに、今まで僕が販売した大戦のTバックは全部で7枚です。
設楽ドラゴンボールじゃないですか(笑)。これは本当に買ってよかったです。今ではかなり高価なものになってしまいましたが、かっこいいので定期的に着ています。
藤原今日お話を伺っていて、本当に古着が好きなんだなって改めて感じました。
設楽昔は、自分は欲しくないけど、友達が欲しがっていたアイテムを見つけたりすると、そいつに教えてあげたりしていたんです。それは今も同じで、自分は買わなくても「ベルベルジンに今売ってるよ」って教え合う友達が何人かいるんです。
そういう感覚は若いときと変わっていません。僕にとって「服と人」は、そういう感じなんです。これからも友達と一緒になって服を買い続けるんだと思います。
藤原今後はどんなヴィンテージ活動をしていきたいですか?
設楽50歳を越えて、60、70歳と、もっとおじさんになったらどんな格好しようかなって考えるんです。レアな映画TシャツやGジャンをさらっと着たり、はたまたスプルースをカラバリで集め出したりしているのかなとか。
それがすごい楽しみで仕方ないですね。というのも古着が、日常に新たな彩りを加えてくれているように感じて……。そのために今後も、裕さんや古着に精通している方々にいろいろとレクチャーしてもらいつつ、新たな楽しみも見つけたいです。
藤原任せてください! よろしくお願いします!
──設楽さんの古着との向き合い方は、希少性や価値だけを見るのではなく、そこに関わる人とのつながりや記憶とともにある。約20年という時間の中で育まれた藤原さんという“人”との信頼関係と、自分なりの楽しみ方。その積み重ねこそが、彼のスタイルを形作っている。
Photo by Hiroyuki“Lily”Suzuki(StudioLog)
Text by Kei Osawa











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