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2021.07.19

衣服に様々な機能を付与する挑戦「COVEROSS®」

現代では化学繊維やスマートテキスタイルによって、衣服の機能性がますます拡張してきている。ただ、それらはどうしても新たな素材を使用せざるを得ないため、制限も大きかった。
このような問題に対して画期的な提案を行っているのが、素材テクノロジー「COVEROSS®」だ。COVEROSS®は、様々な素材や衣服に対して様々な機能を後から付与することができるのだという。
どのようなテクノロジーによって、機能の付与が行われているのだろうか?機能が付与されることによって、ファッション業界全体にどのような変化が期待できるだろうか?hap株式会社CEOの鈴木素さんに、COVEROSS®の機能とその発展可能性に関して話を伺った。

衣服に10以上の機能性を付与

COVEROSS®は1枚の生地、製品に複数の機能性を付与することができる。COVEROSS®には「WIZZARD」「JYAMIEL」など様々な種類があり、抗菌や健康促進など様々な付加価値を提供している。
鈴木さんによれば、COVEROSS®の加工は複数の技術を駆使し、プリントによって加工を加えるものもあれば、コーティング、イオン結合や水素結合、分子結合など、求めている目的に応じて技術をカスタマイズして作っているのだという。
たとえばコットンとポリエステルだと素材がそもそも異なるため、どのような素材にも、同じ行程で加工できるわけではない。Tシャツにもデニムにもアウターにも同じ機能を付与したいとなると異なる方法が必要であり、顧客が求めていることに応じてカスタマイズするために、工夫を重ねるとのことだ。
なかでも、化合繊維は加工が難しいのだという。なぜなら一般的に化合繊維は疎水性という水を弾く性質があり、本来は機能を後付けしにくい。そこに対して、後からでも機能を付与するというのが現在の技術的な課題でもあるそうだ。

デニム加工の経験がノウハウに

鈴木さんは大学卒業後、繊維商社に7年間勤め、hap株式会社を創業して15年になる。繊維商社ではジーンズカジュアル部門で、デニムを中心に扱っていた。当時のジーンズはどんどん加工して、ブリーチやダメージを施したものを新品として売っていくため、薬品も大量に使用していた。産地で子供が危険な薬剤に触れていたり、劣悪な空気を吸いながら働いているような環境に良くない状況を見ていて、これではよくないと思ったのが開発のきっかけになったと鈴木さんは語ってくれた。
デニムは生地を開発したり、加工して機能を付与することが多いアイテムであったためため、当時の経験がCOVEROSS®のノウハウの一部にあるという。2013年からCOVEROSS®の開発に着手し、知識やノウハウのベースを周囲からも教わりながら開発を進めていったのだという。2017年には8個の機能を付与できるCOVEROSS®を発表、そこから毎年アップグレードし、現在では10数個の機能の付与に成功している。
開発を進めるなかで、1枚の生地に吸水性と撥水性など、表と裏で異なる機能性を付与する技術を見出したことが、大きなステップアップだったという。COVEROSS®では生地上にレイヤーのような層を作ることで、色々な機能性を付与することができるのだ。

更なるパーソナライズで幅広い課題解決へ

今後の展望としては、COVEROSS®によって、洋服自体が自分の体調に合わせて変化していくことを目指していると鈴木さんは語る。現在、サイズのパーソナライズ機能は多いものの、洋服の機能性そのものが変化していくことは少ないため、そのような市場も見越しているという。
鈴木さんによると、一般的なアパレル業界の常識だとJIS規格やISO規格が存在するが、これらは世界中で様々な基準や環境があるなかで大きな意味を持たず、アパレル業界を逆に縛り付けて進化を遅らせていることが課題となっているのだという。このような状況に対して鈴木さんは、機能性における「機能の“濃度”」が、個々人に合うものを作っていくようなカスタマイズがしたいと語ってくれた。
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#Smart Textile
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