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2020.08.05

小ロット多品種化と生産効率化を目指す「デジタルコンシェルジュ」の製造工場管理システム

多様なニーズに応えるよう進化してきたファッション業界。D2Cやサステナビリティへの関心が高まる現在、小ロット多品種生産への需要はさらに高まっていきそうだ。ただ、デザイン性と重視しつつ、小ロット多品種で生産できる工場とブランドとのマッチングは難しい。
そこで、この問題に取り組むべく、国内縫製工場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進して小規模ブランドを支援する「デジタルコンシェルジュ」サービスが開始された。デジタルコンシェルジュは、どのようにして縫製工場にDXを取り入れているのか、そしてその可能性とはいかなるものなのか?サービスの詳細や展望について、運営するデザインラボ株式会社代表の深沢光さんにお話を伺った。

より総合的なブランドマーケティングを目指して

デザインラボ株式会社はファッションブランドやファッション製品に対して、デザイン制作やマーケティング支援、サプライチェーン開発まで行うデザイン会社だ。
代表の深沢光さんは、アパレルメーカーや専門商社、リテールのブランド企画、生産業務に10年以上携わり、会社設立後は百貨店やGMS小売業に向けたマーケティングやアパレルメーカーでのブランディングを行い、総合的なブランド支援を行っている。「デジタルコンシェルジュ」事業においては、デジタル面に強い外部パートナーとスクラムを組み、アパレルの企画生産業務に専門性の高い社内スタッフでチームを編成し、業務を行っている。
もともと同社では「アパレルコンシェルジュ」事業として、ファッション製品の生産のワンストップオンラインサポートを行っており、アパレルメーカー在籍中から繋がりがある国内工場から最近提携を始めた工場まで50社前後のパートナーシップを結び、ブランドとマッチングを行っていた。
深沢さんはファッション業界の現状について、「特に2000年代ファストファッション企業の日本進出や、国内アパレルメーカーの海外生産へのシフトによって、中価格帯ブランドを支えていた消費者層が崩壊し、高価格帯と低価格帯の二極化の傾向が進む中、中価格帯市場に新たな小規模ブランドが台頭している」と分析している。その上で、小規模ブランドがコロナ禍でも安定した生産に対応できるように、リモート体制や情報のデジタル化、オープン化により生産効率を高めていくことが急務であると考え、今年の7月よりモデルとなる中小規模の縫製工場を対象に「デジタルコンシェルジュ」サービスを開始することとなったという。

アパレル製造工場のオープン化とリモート化

「デジタルコンシェルジュ」のサービスの特徴は、縫製工場のオープン化とリモート化の2つに大きく分けられる。縫製工場のオープン化では、複数の工場ラインの稼働率を把握することで効率のよいマッチングを行う。アパレル製品の縫製工場では閑散期や繁忙期があり、これを平準化することが課題であったが、この時期が工場によって少しずつ異なっていることがある。
深沢さんによるとデジタルコンシェルジュでは、各工場にクラウドから稼働状況を一定の基準に基づいて情報を収集し、複数の工場ラインの稼働率を把握することによって納期や価格における受注の最適化が可能になる。
つづいて縫製工場のリモート化とは、オンラインコミュニケーションと情報資料のアクセシビリティーによって行われる。縫製工場がこのオンラインコミュニケーションを行うことで、複雑なデザイン表現を高い精度で実現し、生産進捗管理、製品検品を遠隔でありながらオンタイムで実現することができる。デザインや素材、パターン、仕様書、加工などの情報のアクセシビリティーを行い、管理することで高い生産性、再現性を目指すことができる。
このように、デジタルコンシェルジュは国内縫製工場の協力によって行われるサービスと言えるだろう。パートナーシップを結んでいる中小規模の縫製工場は、経験の豊富な技術者によって支えられてる。アイテムは多品種から専業まで様々だが、新たなシステム導入のイニシャルコストが少ないようオープンリソースをベースに活用している。
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#FactoryTech
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