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2022.10.25

【老化抑制効果で注目】帝人グループ会社NOMONが仕掛ける、不老長寿への第一歩

中国の初代皇帝・始皇帝は「不老不死」の仙薬を探し求めていたという。これは紀元前3世紀の『史記』に記されたエピソードであるが、そんなはるか昔からの人類の夢が現実になるかもしれない。
ここ数年、海外の富裕層の間で「老化を抑制する」といわれるNMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)を含有するサプリが注目を集めている。
一般的な価格はなんと30粒で数万円前後。しかしながら日本でもエグゼクティブを中心に愛用者が増えているという。NMNとはどんなものか。日本でいち早く2019年よりNMNサプリ、ナダルタス®(NADaltus®)を展開する帝人グループ、NOMON株式会社・代表取締役CEOであり、開発者でもある山名 慶氏に話を伺った。

マウスの老化、高齢者の歩行速度や握力などにおける様々な好データも

 まずは「NMN」とはどんな物質なのか。率直に聞いてみた。
「極端に言うとNMNは生きるための『エネルギー生産』と『老化抑制』に働く物質です。NMNは細胞内に取り込まれるとNADという物質に変換します。このNADは人間の約37兆個の細胞すべてが生きるために必要なものであり、すでに老化を抑制するとわかっている『サーチェイン遺伝子』を働かせるためにも必ず必要な物質です」
しかし、このNADは誰しもが生まれながらに持っている物質でありながらも、残念なことに年齢とともに減少してしまうのだという。
「下の図の横軸は年齢、縦軸はNADの量を表していますが、現在51歳の僕は20歳のころと比べてエネルギーを作る量が約半分しかないんです。そこでNADの前駆体であるNMNを補充していきましょうというのがNMNサプリの基本的な考え方です」
横軸は年齢、縦軸は血中のNADの量を表す。NADは20歳をこえたころから急激に減少していく
横軸は年齢、縦軸は血中のNADの量を表す。NADは20歳をこえたころから急激に減少していく
それではNMNを補充すると、具体的にはどういったことが期待できるのか。
寿命が2年ほどのマウスの寿命後半1年にNMNを補充したところ、老化現象が抑制されたという実験結果が。きちんとエネルギーを作り出し、きちんと代謝しているため肥満にもならないし、糖尿病にもならなかったのだという。また、骨も丈夫で老眼にもならない。いわゆる健康寿命が伸びたということだ。
「ここまでは2016年のワシントン大学の研究結果でもわかっていたこと。人間においては、糖尿病が改善するというデータが去年『サイエンス』に掲載されました。また我々が大阪大学と組んで行った実験では、半年間NMNを飲んだ高齢者の歩行速度や握力が上がったという結果も出ています」
NMNは、人類が生まれてはじめて口にする母乳に含まれているほか、ブロッコリーやアボカド、牛乳にも含まれているとのことだ。
「しかしそれらの含有量はごく僅か。ナダルタス®一粒で摂れるNMNをブロッコリーで摂ろうとすると、2000房ほど食べなきゃいけないという計算になります」
つまり、NMNはサプリで摂るのが一番効率が良さそうだ。

人生100年時代に事業化できそうなテーマが「老化の制御」だった

 ではいち早くNMNサプリに焦点を当てNOMON株式会社を設立したきっかけ、そして自社サプリ「ナダルタス®」と他社との差別化はなにか。それらを深堀りするにあたっては、山名氏の経歴もそのヒントになる。
山名氏は1997年に帝人株式会社に入社。20年以上にわたり医薬品の研究に携わり、2年間ほど在籍したハーバード大学ではゲノム編集や遺伝子組み換え、細胞治療、老化全般の制御をするような研究を行ってきた。
2013年からは帝人グループの研究主幹を務める。その先も研究を続けるつもりでいたが、2017年にヘルスケア事業統轄補佐に選任された。そして当時の社長からある命題を託される。
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