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2022.10.13

AIとDXを組み合わせた「においのデジタル化」が可能にする新たなサービス:レボーン

昨今では自宅で仕事をする人も増え、気分転換にルームフレグランスやお香を使う人も増えてきた。だが、店員に「こういった香りが好きだ」と伝えようとしたとき、においの感じ方は人それぞれ異なるため、うまく伝えられないと感じた人も多いだろう。
そうした個人の感覚を客観的に判断するために、株式会社レボーンは新たなセンサを開発し、においを数値化することに成功した。AIやIoTと組み合わせた新たなサービスを展開する狙いは、どこにあるのだろうか。同社で商品開発部部長を務める永田富治さんにお話を伺った。

感覚をデータ化する

においのDXを進める同社は、「においセンサ・AIを用いた製品開発・品質管理のDX化」や「においの専門家によるコンサルティング」などのサービスを展開している。
だが、なぜ「におい」に注目したのだろうか。そこには「嗅覚」という人間ならではの課題があったようだ。たとえば、ある製品のにおいをチェックしたときに「〇〇のようなにおい」だと判断して伝えたとしても、皆が同じイメージを持つとは限らない。しかも、嗅覚の鋭さはその時々の体調にも影響を受けるため、観測ごとに異なる判断をする可能性もある。
そこで、「観測の前にセンサやAIに、においをスクリーニングさせることで、測定の補助になるだけでなく、においを観測するという行為そのものを代替させることが可能になる」と同社は考えた。
そこで開発されたのが「OBRE(オブレ)」と「iinioi® cloud(イイニオイクラウド)」だ。
これまでのセンサでは、アンモニアなどの特定の物質しか検出することができなかった。そこで、人間の嗅覚と同じように、におい全体を測定することができるセンサとして「OBRE」が開発された。
このセンサによって測定されたデータを管理するプラットフォームが「iinioi® cloud」であり、「データの可視化や解析を行うことができる」とのこと。ここでいうデータの可視化とは、センサデータの波形を確認したり、データの特徴を目視で捉えやすいように、2次元マップ上で確認したりする機能を指す。また、異なるにおいデータ同士の波形を2次元マッピングで比較でき、AIのモデルを作成する際の解析ツールとしても活用できるそうだ。

調香×AIの可能性

同社は、開発したセンサやAIを用いた新たな取り組みとして「調香サービス」をスタートした。これは調香師とAIがタッグを組むことで、顧客の求めるにおいを正確に調香することを目指すものだ。
作業は非常にシンプルで、顧客は112種類の香りをイメージするキーワードから好みの9ワードを選び、選定したワードそれぞれに対して、1から10(最大)までのスコアで重み付けをするだけとなっている。
あとは入力したワードと重み付けに応じて、AIが33種の精油から作られた天然香料のブレンドを計算してくれる。ここまでくれば、あとは調香師が実際に調香することで完成となる。
これまでは、調香師が顧客と長い時間を掛けてコミュニケーションを取り、求められているにおいを選定していた。そのうえ調香師は「Acrid」や「Camphor」といった専門的な表現によってにおいを評価するため、そうした言葉に馴染みのない顧客にとってはハードルが高かった。
だが、今回同社が開発したセンサやAIを用いれば、即時にイメージに合うレシピを出すことができる。「本当にAIが判断できるのか」という不安に対しては、同社が独自で収集したデータだけでなく、本サービスを契約している顧客が収集・解析したデータも合わさることで、より正確な判断を出せるとしている。これらのデータをもとに新たな開発も行われており、企業や消費者との連携も進められている。
本サービスは「におい」を対象にしているため、今回の調香以外にも応用が効く点に注目したい。現在、「香水以外にもコーヒーや紅茶といったブレンドによって香りを楽しむ製品へのサービスも展開していく予定がある」とのことだ。
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