ECとフィッティングに関するサービスは、多数登場しファッションテックの1カテゴリーになりつつある。その中でVirtusizeは欧米からアジアまでさまざまな人々のサイズ問題を解決してきた企業だ。 Virtusizeはスウェーデンで設立された、サイズに関するソリューションを提供するファッションテック企業である。オンラインで服を選ぶときに最大の課題となる「自分に合うサイズを見つける」ことを解決するために世界のパターンメーカーやECサイトと連携しながら開発を進め、2018年に東京に拠点を移しアジア需要を拡大している。今回は、Virtusizeでカントリーマネージャー・プロダクトオーナーを務める谷中成子氏に豊富なデータからサイズを導く仕組みと今後の展望を伺った。
データの蓄積による体系に合ったレコメンド
Virtusizeは、月間200万人のアクティブユーザーを保有するオンライン試着ソリューションだ。ユーザーはまず、マイページから自分の身長・体重・年齢・性別を入力する。任意で気になる部位の登録やブラサイズの入力も可能だ。これらの情報を元に、VirtusizeのAIによる体の詳細なサイズが導き出され、自身の体型にあったサイズを確認することができる。このAIは数千のモデルサンプルを学習し、その体系に合ったサイズ感の商品をレコメンドするよう開発された。モデルサンプルはそれぞれアジアまたはヨーロッパ、男性または女性で学習した結果となっているため、アジア人女性向けのレコメンド、欧米人男性向けのレコメンドがそれぞれ可能である。また、過去にVirtusizeのパートナーサイトで購入経験のあるユーザーは、過去の商品と今見ている商品とを視覚的に比較することができる。ユーザーは正しいサイズを提供することで、返品率の削減、購入率・ユーザーのライフタイムバリューの向上につなげている。現在は、ユナイテッドアローズ、オンワード、マッシュホールディングスなど、ファッションリーディングブランドを筆頭に多数のクライアントが150を超えるサイトで導入しており、高い評価を受けている。 Virtusizeではオンライン試着とは別に、Virtusizeで作成された身体プロフィールを使って「FittingRoom」というレコメンドエンジンも提供している。FittingRoomはユーザーの好み、過去の購入履歴を活用し、登録された身体プロフィールにマッチするパーソナライズされた商品を提供している。 サイトのクローリングによって企業側は情報提供が容易
もともと、Virtusizeは 創業者が190cm以上の高身長によってパンツを見つけることが難しかった経験から創業された。2013年から日本でのビジネスを開始し、ヨーロッパよりも日本のブランドがデータリッチである点、日本の商習慣がサービスとマッチしていたため日本の売上が本社よりも大きくなり、日本のクライアントにフィットするサービス開発を行う目的で開発拠点および本社を移した。Virtusizeはサービスを提供するうえで商品データが必須になる。もともとはクライアントからCSVなどでデータを取得していた。しかし、日本はあらゆるデータ(細かな寸法・画像)がサイト上に掲載されているため、独自のクローラーを開発しクライアントサイトからデータを自動取得することで、Virtusizeでのクライアント側へのサービス提供のハードルを下げることができた。
現在のVirtusizeでは商品のマスタ情報(主に商品名、サイズ、価格、画像)をサイトのクローリングによって取得するため、企業側は商品詳細ページのタグ入れのみで導入がスムーズに完了する。購入情報についても購入完了ページにタグを入れるだけでよい。クローリングにて、商品詳細ページから商品名、画像、サイズ展開、それぞれの寸法、素材等を取得し、購入完了ページから購入商品のサイズ、購入日、カラー、価格、ブランド名などを取得している。
10年に及ぶデータがもたらすマーケティングプラットフォーム
Virtusizeはオンライ ン試着のソリューションを日本で10年提供してきており、Virtusizeで取得できるデータを使ってマーケティングを行いたいという要望を多く受けているという。このような要望に応えて近年リリースされたマーケティングプラットフォーム「Analytics」は、データプラットフォームとの連携や、レコメンドサービスのFittingRoomと連携したレコメンドのターゲティング配信など、データの活用と商品購入体験のループを完成させEC全体に行き渡る機能を提供できるようなシステムの構築を目指している。最後に、データから需要動向の予測を分析することがより重要になることを背景に、「パートナー企業の更なる発展に貢献し、ユーザー・企業双方にとって満足度の高いサービスになるよう進めていきたい」と谷中さんからコメントをいただいた。今後もVirtusizeは成長を続けていく要注目の企業だ。