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2024.01.10

時代とともに常識も移り変わる、AIデザインを味方につけて進化を遂げる「コリーナ・ストラーダ」

時代とともに常識も移り変わる、AIデザインを味方につけて進化を遂げる「コリーナ・ストラーダ(Collina Strada)」。
AI(人工知能)の台頭が進み、どんな業界でも“AIとの共存”や“AIとうまく付き合う方法”が課題となっている。AIが日常生活に浸透してくることでさまざまな利点はあるが、AIによって職を失う恐れのある人々がいたり、教育の面でもAIの浸透に懸念を示す人々がいるなど、さまざまな意見がある。
今後、前向きにAIを取り入れ、共存していくことが、どの業界においても進化を遂げる一手となりそうだ。ヒラリー・テイモワが手がける「コリーナ・ストラーダ」は2024年春夏のニューヨーク・ファッション・ウィークにおいて、AIによるファッションデザインをポジティブに取り入れたコレクションを発表した。
「コリーナ・ストラーダ」は生成AIを使ってランウェイショーを発表したブランドとしては先駆け的な存在となったため、アメリカのメディアでも話題となった。AIによるデザインをコレクションに取り入れることにした過程や、AIとファッション業界の未来の関係などについて、クリエイティブ・ディレクターのヒラリー・テイモワ自身に伺った。
PROFILE|プロフィール
ヒラリー・テイモワ(Hillary Taymour)
ヒラリー・テイモワ(Hillary Taymour)

クリエイティブ・ディレクター
デザイナー

AIはイマジネーションを膨らませる子どものよう

「コリーナ・ストラーダ」は気候変動や社会への問題提起、自己表現をコレクションを通しているブランドだが、2024年春夏コレクションでも話題をさらった。
本コレクションにAIを用いたことについて聞いてみた。
「私はいつも楽しむためにAIを使っていますが、AIはインスピレーションを刺激し、既成概念にとらわれないようにするための素晴らしいツールだと思います。AIは固定観念の出来上がっていない5歳児のようなもの。想像力をもっと使ってユニークな発想を提示できるものだと思うんです。今回のコレクションではそんな風にAIのイマジネーションを取り入れました」
普段、コレクションの出発点はベストセラーをベースに新たなインスピレーションを得て新しいコレクションを練り上げていく。ミッドジャーニーを使用したコレクションデザインの過程は想像以上にチャレンジングだったという。
生成AIソフトに情報を入れるとデザインが1分ほどで仕上がるようなイメージがあるが、実際には調整を加えていくことで3週間ほどかかったという。生成AIソフトを使ってプリントを作るにも、リピートしたプリントはAIには作れない。
そこでプリントデザイナーの手に託すなど、AIが作ったものを人間が調整していく流れになる。AI任せではなく、最終調整は人間が行っていく。
「デザイン過程で困難なこともありましたが、仕上がった商品を見て想像以上の出来のものもあれば、ユニークなものやそうでないものもありました。プログラムの枠に捉われずに考えれば考えるほど、いいものができたように感じます」
お気に入りのルックは42番。白と黒のコントラストが効いたドレスだ。
「このルックが一番イメージに近いもので上がってきました」

使い古されたファッション業界のカンフル剤となるのか?

「コリーナ・ストラーダ」が2024年春夏コレクションを発表すると、著名なアメリカのメディアは面白がってAIを取り入れたデザイナーを報道した。
「全体的に皆にショーを楽しんでもらい、ジャーナリストも驚かせられたと思う」
AIを導入したことでのネガティブな反応は意外と少なかったという。「将来的に自分の仕事がAIに取って代わられるかもしれないとか、AIに対してさまざまな否定的な意見を持っている人もいると思います。でも、あなたがテクノロジーを好まないとしても、テクノロジーの進化を受け入れなくてはいけない時代に来ていると思うんです」
AIの導入は陳腐になり始めているファッション業界のカンフル剤になるかもしれない。
ヒラリー・テイモワは今後のコレクションにも生成AIを導入していくという。
「今回のコレクションでは新しいアイディアを生み出すための80%ぐらいのストレスを軽減してくれたと思うし、新たな考え方もできるようになった」
AIを取り入れたことで新しい視点でコレクションに向き合えたのだろう。
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