Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2024.04.23

スケーター向けに開発された「NIKE DUNK(ナイキ ダンク)」が人気 「NIKE SB(ナイキSB)」の魅力とは?

スニーカーの王者として君臨する「NIKE(ナイキ)」がスケーター向けに開発したスニーカーラインが「NIKE SKATEBOARDING(ナイキ スケートボーディング)」略して「ナイキSB」だ。定番モデルの「DUNK(ダンク)」なども、スケートボード用に機能が進化し、新たなファンを獲得している。そんな「ナイキSB」の歴史や機能の進化、そしてその魅力を「スニーカーショップSKIT」の代表である鎌本勝茂さんに伺った。

スケーターがワゴンセールから発掘した「ダンク」が始まり

1990年代から2000年代初頭にかけて起こった空前のスニーカーブーム。アメリカでもNBAに勝るとも劣らない人気を誇るNCAA(全米大学体育協会)に所属する強豪チームのカラーをまとった「NIKE DUNK」が人気を集めていた。
セールスもかなり好調だったようだが、流通量の多さゆえに最終的にはワゴンセールとして売り出されたシューズもあったそう。そんなシューズに目を付けたのがスケーターたちだった。鎌本さんは「ナイキSB」の成り立ちをこう語ってくれた。
アパレルブランド「STUSSY(ステューシー)」と「ナイキSB」の初コラボモデル。このデザインを手掛けたのはステューシーのブランドマネージャーであったロビー・ジェファーズ氏。彼の好物であったアイスの上に添えられるさくらんぼをシュータンに入れたことから、通称「チェリー ダンク」と呼ばれる
アパレルブランド「STUSSY(ステューシー)」と「ナイキSB」の初コラボモデル。このデザインを手掛けたのはステューシーのブランドマネージャーであったロビー・ジェファーズ氏。彼の好物であったアイスの上に添えられるさくらんぼをシュータンに入れたことから、通称「チェリー ダンク」と呼ばれる
「NCAAでの人気が落ち着いたところで、ワゴンセールになっていた『ナイキ ダンク』などのシューズに目を付けたのがスケーターでした。スケーターにとってスニーカーは消耗品。ダンクはアッパーに耐久性に優れるレザー素材を使用し、トリックなどでダメージを受けやすい部分やホールド性が求められる箇所に補強パーツを装着していました。
クッション性を高めるためにシュータンが通常のダンクと比べ、かなり分厚いのがわかる。機能性を高めるためのディテールだ
クッション性を高めるためにシュータンが通常のダンクと比べ、かなり分厚いのがわかる。機能性を高めるためのディテールだ
ワゴンセールでプライスも手頃になれば、スケーターがダンクを選ぶのは必然だったのでしょう。日本でも有名どころでいうと1980年代後半ぐらいには、藤原ヒロシさんがスケートをするときに履いていたと証言しています。それが日本での人気の起爆剤となったようです。
藤原ヒロシさんのお話はアメカジ、古着好きの方にかなり広く認知されましたが、実はリアルスケーターや自分達の世代ではダンク自体、スケートシューズとしての認知度は高くありませんでした。
ただ『ナイキSB』を立ち上げたサンディ・ボデッカーはダンクがスケーターに愛用されていた過去を知っていたので、2002年の『ナイキSB』の発足時のファーストモデルにダンクを持ってきたと思います」
「ナイキ SB」からリリースされた記念すべき1足目のモデルは「ナイキ SB ダンク ロー プロ」で、通称「ダンクSB」と呼ばれ、現在も非常に注目度の高いモデルが数多くリリースされている。鎌本さんはこう続ける。
2002年に発売され�た「ダンクSB」の“ダニー・スパ”モデル。当時はスケーターがカラー提案することで、さまざまな配色が生まれた
2002年に発売された「ダンクSB」の“ダニー・スパ”モデル。当時はスケーターがカラー提案することで、さまざまな配色が生まれた
「アメリカでは当時人気だったスケーターのリース・フォーブスやジーノ・イアヌッチ、ダニー・スパなどのシグネチャーカラーをまとった『ダンクSB』が発売され、日本では未発売だったことから、それらの『ダンク SB』は今でも希少価値が高いものとなっています」

履き心地に直結する機能性の高さも「ナイキSB」の人気の理由

日本では爆発的な人気を誇った「ナイキSB」であったが、実はアメリカではわざわざチームを立ち上げるなど、お金をかけたプロモーションに見合うほどのセールスではなかったそう。
「ダンクSB」ではさまざまなモデルが登場した。こちらはアッパー全体をヘンプ素材で構成した“RED HEMP”モデル
「ダンクSB」ではさまざまなモデルが登場した。こちらはアッパー全体をヘンプ素材で構成した“RED HEMP”モデル
だからこそ数を絞って販売を続けていたがそれが仇となり、需要に供給が追い付かず、図らずも人気のラインとなっていった。日本ではアメリカ本国でしか展開されていなかったので、その未発売モデルを手にするべく、自然と競争率は高まっていった。鎌本さんはこう続ける。
1911年に正式�に制定されたカリフォルニア州旗のカラーをそのまま落とし込んだ「ダンク SB “CALIFORNIA”」。サイドの茶色部分は、旗に描かれている現在は絶滅してしまった“カリフォルニア・グリズリー”が表現されている
1911年に正式に制定されたカリフォルニア州旗のカラーをそのまま落とし込んだ「ダンク SB “CALIFORNIA”」。サイドの茶色部分は、旗に描かれている現在は絶滅してしまった“カリフォルニア・グリズリー”が表現されている
「『ナイキSB』で展開されたモデルは『ダンクSB』だけではありません。他にも『ズームエア URL』や『ズームエア アンガス』といったスケート仕様のモデルが数多く生まれました。この『ナイキSB』で展開されたモデルがスケーターだけに人気だったかといえば、そうではありません。スケートボードをしない層のスニーカーフリークたちも、こぞってこれらのスニーカーを追い求めた結果、爆発的な人気になっていったのだと思います」
人気シリーズの「エアジョーダン」から登場した「ナイキSB」×「エアジョーダン4」“パイングリーン”。グリーンのアクセントが効いた逸品だ
人気シリーズの「エアジョーダン」から登場した「ナイキSB」×「エアジョーダン4」“パイングリーン”。グリーンのアクセントが効いた逸品だ
なぜ、スケーターじゃない人たちも履きたかったのか。それは単純に機能性の問題だろう。その機能性の違いを鎌本さんはこう語る。
「『ダンクSB』を例にとってみると、まずソールにズームエアが搭載されているので、クッション性は高いと思います。シュータンの厚さも同じことがいえると思いますが、その機能は履き心地に直結しますよね。
通常のダンクと比べ、やや横幅が広くなっている「ダンクSB」。ヒール部分に衝撃を吸収するズームエアを搭載したことで、履き心地もよくなった
通常のダンクと比べ、やや横幅が広くなっている「ダンクSB」。ヒール部分に衝撃を吸収するズームエアを搭載したことで、履き心地もよくなった
またフォルムも通常のダンクより少し横幅が広くなっていて、アッパーもスウェードやヌバックといった、摩擦に強い素材を用いていることで耐久性がアップしています。さらに、ほとんどのモデルはアウトソールが「平ら」に設計されています。平らにすることで地面との接地面積が増え、摩擦力が上がることで安定性が向上するのです」
こうした機能性の高さに裏打ちされた履き心地のよさも「ナイキSB」モデルの人気に繋がっていったのだろう。
1 / 2 ページ
この記事をシェアする