世界中の人々に愛され続けるポロシャツの中のポロシャツ。誕生から現在まで、その栄光の軌跡を辿ろう。
今をさかのぼること1928年、プロテニスプレイヤーのルネ・ラコステ氏がフランス国際大会(現在の全仏オープン)の決勝戦に姿を現した。その姿を目にした観衆は、びっくり仰天したという。
フランスが誇る世界チャンピオンが着ていたのは、ニット素材でできた半袖のシャツ。それはルネ氏がポロ競技[1]の選手たちが着ていた半袖シャツをヒントにして開発した衿付きのシャツだった。
ルネ・ラコステ氏の当時の写真 (c) Archives Lacoste. Fonds Jacques Brugnon 1920年代のテニス界は服装に関して保守的で、細かいルールが定められていた。そのため、選手たちはコットンの布帛(ふはく)でできたダブダブの長袖のシャツを着てプレーしていたという。
周囲の戸惑いをよそに、ルネ氏はその試合で最高のパフォーマンスを見せつけた。躍動する肉体にフィットしたシャツに、他のプレイヤーたちの視線も釘付けになった。批判の声も上がったものの、構うことなく着続けた。