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2024.01.11

「DIOR」が世界中の女性に捧げる、女性としての誇りと美:女性アーティストの作品にフォーカスした新たな展覧会を巡る

2022年春に、2年以上の改装工事を経てリニューアルオープンを果たした「DIOR(ディオール)」のブティック“30 モンテーニュ(30 Montaigne)”。パリ8区のモンテーニュ・アベニュー30番地に位置する同店は、ムッシュ ディオールが1946年に自身のメゾンを立ち上げ、店を開いた創業の地として知られている。
世界最大級のブティックやムッシュ ディオールが好んだレシピを再現するレストランとカフェ、一部顧客のためのクチュールサロンを構えるなか、注目は資料を揃えた展示スペース“ラ ディオール ギャラリー(La Galerie Dior)”である。
“30 モンテーニュ”がリニューアルオープンして以来、“ラ ディオール ギャラリー”では、ムッシュ ディオールの生い立ちから、わずか数ヶ月前に発表されたコレクションに至るまで、アーカイブ作品、アート作品、オブジェ、書物を交差させて没入感を味わえる魅力的な展覧会を開催している。
2023年11月24日から2024年5月13日まで一般公開されている今回の展覧会では、「DIOR」と女性アーティストとの作品に焦点を当てて、メゾンの歴史を読み解く詩的な旅を展開している。今回は、この新たな展覧会の様子をレポートしたい。

新たな“ラ ディオール ギャラリー”を巡る

現クリエイティブ ディレクター、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が世界中の女性アーティストと紡いだ芸術的な対話を洋服で表現した作品の数々が多く展示されている。
13に分けられたスペースの最初は、「DIOR」の歴史の中でもっとも象徴的とされる“ニュールック”で始まる。細くシェイプされたウエスト、なだらかなショルダー、ふわりと広がるフレアスカート。
輝かしく、自信に満ちた佇まいは、戦後の復興期に世の女性たちをエンパワーしたシンボル的存在であり、モード界の革新的なルックとして、現在もなお多くのデザイナーに影響を与え、魅了してやまない。
“ニュールック”が生まれた背景には、ムッシュ ディオールの「女性をより美しくするだけでなく、より幸せに」したいという願望が込められおり、その他の数多くの作品も女性らしい曲線を際立たせ、動きのある身体を強調するようデザインされている。
「私は自分の作品を、女性の身体の美しさに捧げる、儚い建築物だと考えています」という彼の言葉にも、デザイン哲学の真髄が表れている。ファッションだけでなく芸術や建築にも造詣が深かったムッシュ ディオールは、パリで文化的な活動に没頭し、当時のアーティストたちと友好を深めた。
イラストレーターとして活躍した後にギャラリーのオーナーとなり、1946年に3つのアトリエと85人のスタッフを擁するクチュールメゾン「DIOR」を、モンテーニュ通り30番地に開業した。そのわずか数ヶ月後の1947年2月に、この場所で発表したファーストコレクションで“ニュールック”の旋風が巻き起こったのだ。
続くスペースでは、パリ装飾芸術美術館での成功に続き、ロンドン、ニューヨーク、東京と世界を巡回した「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ」展のために、日本人写真家、高木由利子が撮り下ろした写真とともにアーカイブ作品を展示する。
ドレスをまとうバレエダンサーをモデルに、2Dという平面の写真の中で“静と動”、“光と影”、そしてその間にある一瞬を捉えた高木氏の写真作品。
ブーケを愛でる西洋とは対照的な、日本独自の“一輪挿し”の美学を表現するために、1体のドレスと1輪の花が写真に収められている。
躍動する洋服というムッシュ ディオールのドレスの特徴と、彼が愛した花が、写真とドレスのうえで優美に咲き誇る。そのデザインから放たれる圧倒的なエレガンスと、動きの間に浮遊する刹那的な美が表現された写真作品には、静謐な中の弛まぬ強さという「DIOR」が描く女性らしさが感じられた。
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