コスチュームアーティストとして、長年にわたり数々の作品を生み出してきたひびのこづえさん。彼女は2018年に開催した、当時の自身の年齢をタイトルに冠した展覧会「60」で、「60代直前で、やりたいことを見つけた。それは人に本当の服を着せる事だった」と記している。
ひびのさんの考える「本当の服」とは何なのだろうか。今もなおコスチューム業界の第一線で活躍し続けているひびのさんのこれまでの道のりや、コスチュームに対する考え方からその答えを探った。
PROFILE|プロフィール
ひびの こづえ
静岡県生まれ 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
コスチューム・アーティストとして広告、演劇、ダンス、バレエ、映画、テレビなどその発表の場は、多岐にわたる。毎日ファッション大賞新人賞、資生堂奨励賞、紀伊國屋演劇賞個人賞受賞ほか展覧会多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のセット衣装を担当中。歌舞伎「野田版 研ぎ辰の討たれ」、「野田版 桜の森の満開の下」 現代劇の野田秀樹作・演出の「兎、波を走る」、「フェイクスピア」、「正三角関係」 森山開次ダンス「サーカス」新国立劇場、「不思議の国のアリス」、「星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙-」KAATなど衣装担当。ダンスパフォーマンス「WONDER WATER」、「FLY、FLY、FLY」、「Rinne」、「Piece to Peace」「MAMMOTH」、「RYU」、「ROOT:根」、「UP AND DOWN」「二人のアリス」「アリとキリギリスと」を企画展開中。2018年個展「60(rokujuu)」市原湖畔美術館、2019年個展「ダンス・ザ・イフク/太ンス宰府ク」太宰府天満宮文書館・九州国立博物館、2021年個展「森に棲む服」そごう美術館、2022年個展「不思議の森に棲む服 ひびのこづえ×熊本展 Wonder Forest Closet」熊本市現代美術館にて開催。
奥能登国際芸術祭、大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭に参加。
能登地震・珠洲応援ダンスプロジェクト発足活動中。
オフィシャルサイト
「大きな服」と「小さな服」
はじめに、ファッションに関わる仕事をしようと考えたきっかけを教えてください。
もともとは東京藝術大学のデザイン科出身だったこともあり、ファッション関連の仕事をしようとは考えていませんでした。でも大学を卒業して間もない頃に、展示作品としてシャツを作ってみたところ、友人たちがそれを着て撮影をしようとなって。自分の中からだけで作ったものには限界があると感じていたのですが、服は人が着ることでさらに発展するということに気づきました。そこからいろいろな人に声をかけていただき、服らしきものを作るようになっていきました。
ファッションの中でもコスチュームの仕事をされるようになったのには、何か理由があるのでしょうか?
コスチュームという道を選んだ、というよりは、私が作るものは最初からコスチュームだったという表現の方が正しいかもしれません。大学ではグラフィックデザインを学んでいたので、ファッションの勉強は一度もしたことがなく、パターンも自分で引けないし、服に対する理論も知りませんでした。